ついに退院の目処が立ってきました。
ヒマ故にディープな内容になりがちな、このブログも、来週には「通常盤」に戻れそうです。
ベアリングネタ、ファイナルです。
次世代のロードバイク用ベアリングを考えてみました。このネタは、(また)素人の妄想です。
現在、高性能ベアリングとなっているのは、セラミックベアリングです。
理由は、皆様ご存知の通り、「硬くて(Hv2500)」「剛性が高い(縦弾性係数315GPa)」だからです。
じゃあ、更に高性能化するには、なにをしたらいいのか?
多分、セラミックボールに、「DLC(ダイヤモンドライクカーボン)表面処理」を追加して、表面硬度向上(Hv4500)させると思われます。
つまり、セラミックベアリングの進化型は、「DLCコーティングセラミックベアリング」になると、睨んでいます。
ここまでは、簡単なんですよね。
問題は、これが「ロードバイクに使える仕様かどうか?」を考えてみました。
まず、「表面硬度を上げると、摩擦係数が減る」と、ざっくりと過去に書きました。
これは、接触面でのミクロ的な変形が抑えられる、つまり、ミクロ的に球体の曲率半径を維持することができます。
具体的に解くと、ヘルツ応力式を使います。(接触面の応力算出)
最大接触圧力pmaxは、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/c6/fd49e2aa53cc723336ec0b21ebb56b70.jpg)
P:集中荷重 (N)
ν:ポアソン比
E:縦弾性係数 (MPa)
R:曲率半径 (mm)
球と平面の場合
R1=∞
球と凹球面の場合
R1=-R2
「セラミック=硬い=曲率半径大」「セラミック=高剛性=高縦弾性係数」ですので、最大接触圧力を上げます。
つまり、セラミックベアリングは接触面圧的に、厳しい環境にさらされます。
高い面圧下でも、ベアリングの玉とレースが摩擦係数が激増する固体接触とならないためには(ストライベック線図参照)、界面の潤滑膜の維持が不可欠です。
ここから先は、EHL境界潤滑の領域ですので、複数の議論が存在しますが、私なりの解釈をしていきます。
通常、潤滑膜を維持させる為には、潤滑剤の粘度を上げます。つまり、グリスです。
しかし、ロードバイク用の場合、問題が2つあります。
「グリス自体が抵抗となる」ことと「回転速度が遅い」ことです。
グリスの抵抗は意外とバカにできません。
ベアリング玉が回転する度に表面張力でくっ付いて接触面に帰ってくるので、余分な分を押し退けるのが、ライダーには抵抗に感じます。(敏感な人なら、多分)
回転速度は、ベアリングが入る所では、最大でも、BBで150rpm(ケイデンス)、車輪で500rpm程(60㎞/h)、リアディレイラーのプーリーも500rpm程(ボーネンがアウターで110rpm、60km/hでスプリントしてる時)ぐらいと、どれも遅く、しかも回転速度0もあります。
回転速度は潤滑膜厚さ算出におけるゾンマーフェルト数に大きく影響し、回転速度0では計算上、油膜形成不可能になります。つまり、ベアリングがミクロ的に壊れます。
このベアリング破損を防ぐにはどうすればいいか?
今度は化学の世界です。
ご存知の通り、オイル、グリスなどの潤滑剤は、「添加剤」を含んでいます。
添加剤は、その機能により幾つかに分類され(粘度向上剤、消泡剤、極圧剤、摩擦係数改善を目的としたものなど)、その中でもまた種類があります。
今回のセラミックベアリング用として使いたいのは、「極圧剤」と「圧力係数向上剤」です。
「粘度向上剤」は、先のデメリットとどうせ救えない領域があるので、使いません。これはカンパの思想と同じです。
「じゃあ、どんな極圧剤を使えばいいのか?」
核心ですが、「オイル分子レベルでの結合を維持する」との目的には辿り着きましたが、実はここから先が、小生には分かりません。
勉強不足もありますが、オイルメーカーのノウハウ領域なので、公開情報は限られ、古いものばかりです。
因みに、市場でよく流通している摩擦係数改善剤の「モリブデン」は役に立ちませんよ。(自己破壊膜を作れない)
「テフロンは?」と聞かれると、ベアリング破損対策にはならないけど、摩擦係数低減の効果は分かりません。
効かなければ只の「異物」を入れることになるので、やらない方がいいと、個人的には思ってます。
こうして、適切に機能する「極圧剤」「圧力係数向上剤」が入ったオイルを使って、やっとこの「DLCコーティングセラミックベアリング」は成立します。
但し、まだ問題が…。
まず、そのオイルの劣化が早い事は、容易に想像できます。
また、異物には、更に弱くなるでしょう。NTNによると、「0.1mmの異物が入るだけで、耐久性は1/5になる」とあります。
こうなると、シールのないセラミックベアリングなんて、一般公道での使用は、壊す為に使っているみたいなもんです。「走る度に徹底的に洗浄」がmustです。
まとめましょう。
「セラミックベアリングは、DLCコーティングにより、更に性能向上できる余地はある。但し、メンテナンス性、耐久性の面での課題があり、市場への投入には、市場の理解が必要と考える」
例えば、「ツールドフランスで、タイム差3秒で迎える最終日のTTマシン」であれば、間違いなく投入しますが、「明日から一週間、北海道ツーリング」には、使いませんね。
しかし、こんな厳しい世界に住んでいるベアリング屋さんは、本当に大変ですね。
こんなカルトなネタを読んで頂いた方も、大変だったと思います。
妄想の駄文に、お付き合い頂き、ありがとうございました。
今日はここまで
ヒマ故にディープな内容になりがちな、このブログも、来週には「通常盤」に戻れそうです。
ベアリングネタ、ファイナルです。
次世代のロードバイク用ベアリングを考えてみました。このネタは、(また)素人の妄想です。
現在、高性能ベアリングとなっているのは、セラミックベアリングです。
理由は、皆様ご存知の通り、「硬くて(Hv2500)」「剛性が高い(縦弾性係数315GPa)」だからです。
じゃあ、更に高性能化するには、なにをしたらいいのか?
多分、セラミックボールに、「DLC(ダイヤモンドライクカーボン)表面処理」を追加して、表面硬度向上(Hv4500)させると思われます。
つまり、セラミックベアリングの進化型は、「DLCコーティングセラミックベアリング」になると、睨んでいます。
ここまでは、簡単なんですよね。
問題は、これが「ロードバイクに使える仕様かどうか?」を考えてみました。
まず、「表面硬度を上げると、摩擦係数が減る」と、ざっくりと過去に書きました。
これは、接触面でのミクロ的な変形が抑えられる、つまり、ミクロ的に球体の曲率半径を維持することができます。
具体的に解くと、ヘルツ応力式を使います。(接触面の応力算出)
最大接触圧力pmaxは、
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/c6/fd49e2aa53cc723336ec0b21ebb56b70.jpg)
P:集中荷重 (N)
ν:ポアソン比
E:縦弾性係数 (MPa)
R:曲率半径 (mm)
球と平面の場合
R1=∞
球と凹球面の場合
R1=-R2
「セラミック=硬い=曲率半径大」「セラミック=高剛性=高縦弾性係数」ですので、最大接触圧力を上げます。
つまり、セラミックベアリングは接触面圧的に、厳しい環境にさらされます。
高い面圧下でも、ベアリングの玉とレースが摩擦係数が激増する固体接触とならないためには(ストライベック線図参照)、界面の潤滑膜の維持が不可欠です。
ここから先は、EHL境界潤滑の領域ですので、複数の議論が存在しますが、私なりの解釈をしていきます。
通常、潤滑膜を維持させる為には、潤滑剤の粘度を上げます。つまり、グリスです。
しかし、ロードバイク用の場合、問題が2つあります。
「グリス自体が抵抗となる」ことと「回転速度が遅い」ことです。
グリスの抵抗は意外とバカにできません。
ベアリング玉が回転する度に表面張力でくっ付いて接触面に帰ってくるので、余分な分を押し退けるのが、ライダーには抵抗に感じます。(敏感な人なら、多分)
回転速度は、ベアリングが入る所では、最大でも、BBで150rpm(ケイデンス)、車輪で500rpm程(60㎞/h)、リアディレイラーのプーリーも500rpm程(ボーネンがアウターで110rpm、60km/hでスプリントしてる時)ぐらいと、どれも遅く、しかも回転速度0もあります。
回転速度は潤滑膜厚さ算出におけるゾンマーフェルト数に大きく影響し、回転速度0では計算上、油膜形成不可能になります。つまり、ベアリングがミクロ的に壊れます。
このベアリング破損を防ぐにはどうすればいいか?
今度は化学の世界です。
ご存知の通り、オイル、グリスなどの潤滑剤は、「添加剤」を含んでいます。
添加剤は、その機能により幾つかに分類され(粘度向上剤、消泡剤、極圧剤、摩擦係数改善を目的としたものなど)、その中でもまた種類があります。
今回のセラミックベアリング用として使いたいのは、「極圧剤」と「圧力係数向上剤」です。
「粘度向上剤」は、先のデメリットとどうせ救えない領域があるので、使いません。これはカンパの思想と同じです。
「じゃあ、どんな極圧剤を使えばいいのか?」
核心ですが、「オイル分子レベルでの結合を維持する」との目的には辿り着きましたが、実はここから先が、小生には分かりません。
勉強不足もありますが、オイルメーカーのノウハウ領域なので、公開情報は限られ、古いものばかりです。
因みに、市場でよく流通している摩擦係数改善剤の「モリブデン」は役に立ちませんよ。(自己破壊膜を作れない)
「テフロンは?」と聞かれると、ベアリング破損対策にはならないけど、摩擦係数低減の効果は分かりません。
効かなければ只の「異物」を入れることになるので、やらない方がいいと、個人的には思ってます。
こうして、適切に機能する「極圧剤」「圧力係数向上剤」が入ったオイルを使って、やっとこの「DLCコーティングセラミックベアリング」は成立します。
但し、まだ問題が…。
まず、そのオイルの劣化が早い事は、容易に想像できます。
また、異物には、更に弱くなるでしょう。NTNによると、「0.1mmの異物が入るだけで、耐久性は1/5になる」とあります。
こうなると、シールのないセラミックベアリングなんて、一般公道での使用は、壊す為に使っているみたいなもんです。「走る度に徹底的に洗浄」がmustです。
まとめましょう。
「セラミックベアリングは、DLCコーティングにより、更に性能向上できる余地はある。但し、メンテナンス性、耐久性の面での課題があり、市場への投入には、市場の理解が必要と考える」
例えば、「ツールドフランスで、タイム差3秒で迎える最終日のTTマシン」であれば、間違いなく投入しますが、「明日から一週間、北海道ツーリング」には、使いませんね。
しかし、こんな厳しい世界に住んでいるベアリング屋さんは、本当に大変ですね。
こんなカルトなネタを読んで頂いた方も、大変だったと思います。
妄想の駄文に、お付き合い頂き、ありがとうございました。
今日はここまで
シマノの低価格のも、しっかりアルマイトもしてるし、なんか過剰品質気味ですね。これなら極圧剤でイケるかもです!
BBもシマノなら玉がデカイので大丈夫なのかしら?(BB30はチョットコワイ?)
メンテも、好きな人には、逆に合ってるチューンなのかもU+2048
ケミカル屋さんの登場を待ちたいですが、
市場が小さいからか、効果が無いからなのか
あんまり聞きませんね。
昔の話ですが、出光でしたっけ?
日産・JATCOのトロイダルCVT用オイルを思い出したんですがどうなったんでしょう。
先日のお話ですが・・・
カーボン(FCRP)の展示会を一回りすると
添加剤屋さんが肝を握ってると思いました。
アーム部品は半硬化品をコンプレッション成形とかしたら面白いかなぁ、とか。
サイクルタイムが問題でしょうね。
ピボットレスとかにできたら面白いですね。
退院したらちゃんと計算したい所ですが、私の知見では回転数0では、油膜保持ができない計算になっちゃうので、仰る通り、議論は化学屋さんに任した方が、身のある解が得られるのでしょうね。
出光のオイルは?です。個人的には業界トップのニッセ○の開発力が好きですが、ガードも固くて…ね。
ブレーキの話は、痺れましたね。ピボットレスとは、なんて大胆な!
ブレーキの作動力とアーム剛性を分離して考える発想は、新たなブレーキ構造の原点ですね。(成否はともかく)カンパのデルタブレーキ並の発想の転換だと思います。
今「ブレーキはキャリパー化する」なんて妄想を膨らましてますが、新たなネタに大興奮です。
また、御意見を聞かせてください。楽しみにしています。では。
このトライボケミカル反応にもノーベル物理学賞で有名になったグラフェン構造になるようになる機構らしいが応用化の速度には目を見張るものがある。
はじめまして。
情報、ありがとうございます。
実はこの会社の方とはお付き合いがあり、この商品ではありませんが、有機と無機の結合のお話を伺ったところです。
日立金属も、有機&無機のグループ会社の再編を行ったばかりで、そのシナジー効果を出そうと必死ですね。
結局、見せられた商品は、「こんなん出来ました。何に使うか分からんけど…」てなトーンで、手探り感満載ですね。
これから、作る方も、使う方も、理解を深めていくので、商品化されるのは、まだだいぶん先でしょう。
この分野、私も今、勉強中です。
では