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ハイテンフレームって、どう?

2011-05-23 23:59:55 | フレーム調査
洗車をすると雨。セオリーなので、仕方ありません。電車で通勤。

電車の中ではヒマなので、今日はFITさんのブログネタから妄想を膨らましてみました。 長いので、ヒマな人だけ読んでくださいな。


<テーマ>機械設計者として考えた時、スチールフレームの材料として、本当にクロムモリブデン鋼が最適なのか?

インターネットでは、「クロモリ=クロームモリブデン鋼は、ねばりがあり、高い機械的郷強度を有し、溶接性もある為、自転車のフレームにとして最適な材料」とあります。
…本当に? 鉄は、今も進化を続ける材料の一つなのですよ。

クロームモリブデン鋼(以下、SCM材)は、我々自動車の部品でも、熱処理をすることで、高い引っ張り強度(1MPa級)と、耐摩耗性、耐衝撃性(ねばり)が得られるので、その特性が必要な場合のみ、部分的に使う材料です。
材料のコストは高めなので、必要なときにしか使いませんし、熱処理後の表面高度が高いので、耐摩耗性がある反面、機械加工も困難です。
SCM材は、含有炭素量にもよりますが、総じて、熱処理後の素材自体は、確かに優秀だと思います。


これに対抗する材料は、超高張力鋼板、いわゆるハイテンなんかどうでしょうか。
数年前から、ハイテンも1MPa級(1180MPa)のものが出てますし、なんと言っても、ハイテンはプレスができます。
つまり、ハイテンにハイドロフォーミングを行い、更にレーザー溶接で、例えば高炭素鋼のラグと組み合わせれば、理屈の上では、「更に職人の技に頼ることなく、カーボンバイクの形状性能を持ち、スチールの乗り味を付加したフレーム」が出来上がります。

このフレームのネックはなんでしょうか? やはり、開発する上での「型費」だと思います。(ハイドロフォーミング、レーザー溶接の設備費もか…)
今のフレーム開発が、テストライダーからのフィードバックに頼っている以上、トライ&エラーで開発を進めるしかありません。
カーボンの場合は、ある程度剛性バランスをいじれるので、きっと開発はやりやすいのでしょう(推定)。アルミフレームでは、逆に肉厚ぐらいしか、パラメータがないので、開き直れます。
しかし、ハイドロフォーミングなどのプレスでは、肉厚や形状、その材料(炭素量ですら)を変えるだけで、型の変更が生じる場合があります。
このフレームを月に5万本出荷するなら、この開発は行われるでしょうが、ロードバイクのフレームですから…。(月に100本レベル?)


つまり妄想の中で出した結論は、「多分、クロモリよりもスゴイ鉄フレームは作れる。だけど開発費をペイできないので、商売として成立しない」です。
エンジニアとしては、やってみたい開発ですが、商売人としては手をつけてはいけない分野なのでしょうね。


こんな事を考えながら、家に帰り、自転車カタログを眺めていると、「スカピン」のスチールフレーム(最新型。STYLEなんかいいですね)が欲しくなってきますね。

以上、今日は妄想の一日。


今日はここまで。

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10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (タイガー)
2011-05-24 06:39:52
いつも内容が高度で尊敬します。
私は自分の懐事情から、アルミ+カーボンバックというフレームを選択しましたが、将来的には色んなフレームのバイクに跨ってみたいですね~。
乗り味が全然違うんですよね??
今は何乗っても分からないと思いますけど(^_^;)
さすがです。 (Fit)
2011-05-24 09:43:00
さすが技術屋さんですね。
実はMBK取り扱いのサイクルラインズの社長さんとお話をしていてパイプの素材話になりまして、細かい事は割愛しますが、
自転車の鉄パイプは①溶接(ロウ付け)がポイントになってる
②バテットの方法で重量と強度が変わると言う事でした。

車体(ホーク除く)のパイプ8本は本来ならすべて同じではなく、硬くしたい所はA社の何がし、しなりを入れたいところはB社のなんちゃら、という感じで変えて組むのがベストだそうです。

試乗会など機会があれば開催し、その時に幸壬(こうじん)社長と話をすると面白いですよ。
すいません、長くなりました。
Unknown (Mr.H)
2011-05-25 01:43:45
タイガーさんへ

私みたいな素人でも、意外と乗り味の違いって分かるものですよ。

昔、友人の鉄フレームを貸してもらった時は、「なんじゃこの進まないフレームは!」と思いましたが、今となっては、ペダリングが下手糞だけなだったのかも。

なので、いつか鉄フレームとは、じっくり付き合ってみたいと思っていますけどね。


Fitさんへ

「鉄フレーム=チューブを繋ぐ」との思想が、美しい鉄フレームを作り出す一方で、鉄の可能性を狭めているのかも。

バテットより攻められる「鉄モノコックフレーム(縦に割ったフレームを溶接接合する)」なんてあってもいいかと思うのですけどね。

UCIが最低重量(6.8kg)を変えない限りは、鉄でも6.8kgにできるのかも。

まぁ、重量だ、工法がだのじゃない所が、難しいのだとも思いますが…。
最強金属? (トライボロジープレス)
2012-10-29 11:43:02
 日立金属が開発した新型工具鋼 SLD-MAGIC(S-MAGIC)は微量な有機物の表面吸着により、金属では不可能といわれていた自己潤滑性能を実現した。この有機物の種類は広範囲で生物系から鉱物油に至る広い範囲で駆動するトライボケミカル反応であると。潤滑機械の設計思想を根本から変える革命というものもある。
 このトライボケミカル反応にもノーベル物理学賞で有名になったグラフェン構造になるようになる機構らしいが応用化の速度にはインパクトがある。
驚異のトライボ特性 (対温暖化技術ウォッチヤー)
2013-11-05 23:31:46
たしかに凄い。PV値が900MPa/minでこの摩擦係数だと画期的だ。
正しい記述を! (やん爺)
2017-10-10 11:53:36
・「高度」→「硬度」
・ハイテンが1MPa? G(ギガ)とM(メガ)取り違え?
ラマン分光が魅力的 (オイルダイヤモンド)
2019-09-20 02:25:24
そうはいてんがGPa級でも金型に作用する面圧は数十MPaでカジリが出る。しゅう動損傷に金型いえどもいかに弱いかを示している。しかしこの材料はその中でもより良い成果を示しているに過ぎない。
骨格部品 (鉄道電力)
2023-01-22 22:33:43
まあ極圧添加剤であれエキソエレクトロンであれ、科学技術的な意味でのCCSCモデルという名のお釈迦様の掌のおはなしですね。
グリーンリーダーシップ (中国上海松江安来)
2023-05-30 15:37:15
ゴエモンの斬鉄剣、またつまらぬものを切ってしまったって感じですかね。最近では実用性能では自動車の冷間のハイテン成形プレス技術でGPa越えが相次いで報告されていますね。翻って考えてみるとやはり、プロテリアル(旧日立金属)製のマルテンサイト鋼の頂点に君臨する高性能冷間ダイス鋼(特殊鋼)SLD-MAGICの登場がその突破口になった感じがしますね。今ではよく聞く人工知能技術(AI:ニューラルネットワーク)を使ったCAE合金設計を行い、熱力学的状態図解析によって自己潤滑性を付与したことが功を奏した話は業界で特に名古屋では有名ですからね。軸受、歯車、圧延ロール、減速機、摺動機械部品の基本的な摩擦係数にかかわるはなしがこうだからCAE技術もさらなる可能性に満ち溢れているということでしょうね。タコツボ組織化しがちなトライボロジー研究でボールオンディスクを横串力とするCCSCモデルという提案も素晴らしいものでした。
経営学のうわさ (サステナブル)
2023-12-15 01:26:17
最近、中部地区のビジネススクールでKPI競合モデルってのが流行ってるらしいけどなんか関係するのかな。

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