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■製作年:1984年
■監督:パオロ&ヴィットリオ・タヴィアーニ
■出演:マルガリータ・ロサーノ、クラウディオ・ビガリ、マッシモ・ボネッティ、他
この映画のまず第一印象は圧倒的な荒涼とした自然の風景です。すごいところだなと。それは時に美しくも見え、厳しくも感じ、揺るぎない大地として眩暈をおこしそうな雄大さを持って存在しています。シチリアと言えば私などは直ぐに思い浮かべるのが映画「ゴッドファーザー」、マフィア発祥の地としてのイメージが強くあります。そのシチリアが、こんなに自然がすごい所だったんだと驚きました。
タヴィアーニ兄弟はそこに住む人々の物語を4つの話で描いておりますが、雄大な自然と相俟って物語は、神話的・民話的な趣を持っているかのように感じました。島民らは貧富の差が激しく生活するということが壮絶ですらあります。人が生きていくということの厳しさを叙情的な映像詩でもって、タイトルにもあるように混沌としたごった煮のまさしくカオスとして投げ出され提示させられたと思いました。
私は半年に一度位の割で思いついたように東京国立フィルムセンターの図書室に行ってキネマ旬報のバックナンバーを見たりするのですが、そこでこの「カオス・シチリア物語」の評論を見てみたのですが、言葉巧にまとめられ私と同じような感想を書いているものがありましたので、その一文を引用したいと思います。『シチリアの荒れた風景への憎悪と愛惜の念が人間たちの葛藤をまるごと呑みこみながら、荒々しく、しかも文字通りのカオスとして投げ出されているのだ。そこで演じられる悲劇は原作者ルイジ・ピランデッロの故郷の名“カオス”(原初の混沌)が、古代ギリシア人によって与えられたことからもわかるようにギリシア劇的である。』(高沢瑛一・キネマ旬報1985年No.922号より引用)
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