'14.11.05 『ショート・ターム』(試写会)
Hollywood Newsで当選。いつもありがとうございます! 前評判がとっても高かくて、見たいと思っていたのでウレシイ! ってことで、張り切って行ってきたー
ネタバレありです! 結末にも触れています!
「10代の子供たちをケアする短期保護施設ショート・タームで働くグレイス。同僚のメイソンとは恋人で同棲中。日々、それなりに充実していた。メイソンとの間に子供ができ、彼は喜ぶけれど、グレイスにはメイソンにも話せない過去があった・・・」という感じの話。思っていたより感動。・゚・(ノД`)・゚・。とはならなかったけれど、なかなか良かった。問題を抱えている子供たちをケアする側も、問題を抱えているっていうのは、特別目新しいわけでもなく、ちょこちょこ粗さもあるけれど、短くスッキリまとめていたと思うし、重いテーマをポップに見せるのも好み。
2009年サンダンス国際映画祭、シアトル国際映画祭、アスペン国際映画祭、ボストン・インディペンデント映画祭など、50の映画祭にノミネート、30で受賞。2013年サウス・バイ・サウス・ウエスト映画祭でプレミア上映され、審査員特別賞を受賞。Rotten Tomatosで99%の満足度を得るなど、まさに鳴物入りでの日本公開という感じ。監督はデスティン・クレットン。マウイ島出身の日系人で、今作が長編2作目。今作が高評価されたため、次回作はジェニファー・ローレンス主演の『The Glass Castle/ガラスの城の子どもたち』が控えているそうで、まさに期待の若手監督という感じでしょうか? 舞台挨拶で(記事はコチラ)、監督ご自身が語っていたように、カリフォルニア州の保護施設で働いていた体験がヒントとなっているとのこと。
冒頭、4人の若い男女が中庭のようなところで会話をしている。家族と共に暮らせない子供たちを、一定期間預かり生活させる施設ショート・ターム。彼らはそこで働くスタッフで、ネイトという青年は今日が初日らしい。彼に施設のことを説明しつつ、先輩スタッフのメイソンが施設にいた子供とのエピソードを、おもしろおかしく語っている感じ。主人公のグレイスともう1人の女性スタッフは呆れ顔。そんな中、1人の少年が奇声を上げて飛び出してくる。慌てて追いかける4人。それが上に貼ったチラシ。このシーン、よく考えると大変なシーンなのかもしれないけれど、天気のいい芝生の庭で繰り広げられる逃亡劇は、どこかコミカルでちょっと楽しい。なるほど、こんな感じなのかと思ったりする。この始まりは好き! 同時に4人のキャラクターの説明にもなっている。メイソンはサービス精神があっていい人、大学に通いながらボランディアで来ているネイトは真面目。グレイスはしっかり者。この3人は主要キャラ。もう1人の女性は完全に脇役だったので割愛(笑)
施設での仕事は、子供たちの心のケアをするのではなく、あくまで生活をさせること。どうやら、18歳になると施設を出なければならないらしく、18歳になったマーカスは近々施設を出なければならない。母親に虐待されていたマーカスは、殻に閉じこもりがち。彼と年齢の近い少年ルイスとしょっちゅう諍いを起こしている。ルイスの方がちょっかいを出している感じだけれど、人を寄せ付けないマーカスの態度がそうさせている部分もあるのかも。2人がケンカをするたび、グレイスたちは割って入り、2人を落ち着かせ、食事をさせたりする。冒頭、裸で飛び出してきた少年サミーは、どうやら妹を亡くしたことで、心に深い傷を負ってしまったらしく、ぬいぐるみを手放さず、誰とも会話をしない。そもそも、自閉症の症状があるのか、心を閉ざしてしまったのかは不明。グレイスたちは、彼を寝かしつけたりする。そういうケア。いわゆる、日常生活をさせる。それがなかなか大変。グレイスはスタッフとして優秀らしく、常に中心になって働いている。
一方、グレイスは病院で診察を受けている。どうやら妊娠しているらしい。即、中絶の予約をする。他の選択肢はないのか?と尋ねる女医に対して、ないときっぱり答える。そして、以前にも妊娠したことは?の問いに、あると答える・・・ この時点では、グレイスの過去が荒れていたのか?とも思うのだけど、とにかく彼女にも何か過去に傷があることが分かる。グレイスのお腹の子の父親はメイソン。2人は同棲している。2人が何歳の設定なのか不明だけど、グレイスが20代前半でメイソンが20代後半って感じかな? メイソンはグレイスを愛していて、彼女を包み込むように愛を注いでくる。そして、彼女を求めてくる。でも、グレイスはそれに応えることに苦悩している様子・・・ メイソンの求めに応えられないことで、彼を傷つけてしまったため、2人の子どもが出来たことを打ち明ける。大喜びするメイソン。素敵なカップルだなと思っていたのだけど・・・
そんな時、施設に1人の少女が入居してくる。囲み目メイクで攻撃的なジェイデン。施設には10人くらいの子どもたちがいるようだけど、中心的に描かれるのはジェイデンと前述のマーカス。後は、マーカスとケンカしてばかりいるルイスと、飛び出し坊やサミー。でも、家庭の問題が見ている側にもハッキリ分かるように語られるのは、ジェイデンとマーカスのみ。母親が亡くなってから、ジェイデンにどう接していいか悩み、彼女を持て余しているという父親は、ショート・ターム代表の知人で、いわゆる紳士と呼ばれる人物。見ている側としては、この父親に問題があるのは察しがつく。ジェイデンはたびたび問題を起こす。それに対して姉のような態度で接するグレイス。次第にジェイデンは心を開く。
マーカスがケンカをして、メイソンがケアに向かう。マーカスが作った曲を聞きたいと言うと、自分を虐待していた母親への思いをラップに乗せて歌うシーン。ラップが大の苦手な自分としては、ちょっと辛かったのだけど、それでも彼の思いは伝わってきた。初めてラップで涙が出そうになったかも? ラップじゃなかったら確実に泣いてた。あくまで個人的な好みの問題です! ラップ好きの方ごめんなさい┏○ペコ
ショート・タームに来て以来、初めて自宅へ戻る日。父親の迎えを待つジェイデンは、次第に落ち着きをなくしていく。どうやら自傷行為もあるようで、爪で自分の手を傷つけていく。耐えきれなくなって席を立ってしまうジェイデン。部屋の扉は開けておく決まりになっているのに、扉を閉めてしまう。自室で自傷行為をしているのではないかと心配するグレイスたち。うーん。てっきり、ジェイデンは父親に迎えに来てもらいたいと思っていて、彼女は父親に捨てられたと考えているのだと思っていた。この感じだとそうとってしまうかも? あえてミスリードさせているわけでもないと思うのだけど、後からアレ?と思ったことは事実。ジェイデンとグレイスが部屋で話している間、マーカスが皆に声をかけて、メッセージカードを作る。作るところはあえて見せず、部屋に並んでる感じは好きだった。カラフルでかわいくて、ちょっと泣いてしまった
ジェイデンは施設を抜け出してしまう。後を追ったグレイスはジェイデンの自宅までついて行く。戻ってきたジェイデンはグレイスに自作のマンガを見せる。友達のいなかったタコが、サメと友達になりたくて、自分の体を与え続ける話。このマンガを見てグレイスはジェイデンが父親から虐待を受けていることを悟る。何故、このマンガで虐待の疑いを感じ取れたのか、心理学などの知識がない自分にとっては全く分からなかったのだけど・・・ そういう部分について、詳しい説明はない。
グレイスの妊娠を知ったメイソンは、彼女を養父母の結婚記念日パーティーに招待する。メイソンが両親を亡くしたのか、あるいは捨てられてしまったのか不明だけど、この養父母は素敵な人たちだったらしく、メイソンの他にも何人か養子を育てたらしい。このパーティーでメイソンはグレイスにプロポーズする。でも、彼女はそれに応えられない。一度は彼との結婚を夢見ていたグレイスだけど、父親が出所してくるという連絡を受けて動揺しているのだった。父親が刑務所にいることは事前に語られていたし、ジェイデンの問題に素早く気づいたことから判断すると、彼女が抱えている問題はなんとなく分かるのだけど、なかなか明らかにはしない。グレイスは子供も中絶するつもりだと告げる。理解できずに苦しむメイソンはキレてしまう。まぁ、そうだよね・・・
飼っていた金魚が死んでしまい、ルイスの仕業ではないかと疑ったマーカスが騒ぎを起こす。駆けつけたグレイスが発見したのは自殺未遂したマーカスの姿。病院へ付き添うメイソンとグレイス。重い空気が漂う。このエピソードが特別2人の仲を進展させたり、後退させたりすることもなかったので、必要だったのかは謎だけど、ジェイデンに思いやりを見せた、マーカスのこの行動で、彼らが不安定であるというのは伝わった。
そんな中、父親が迎えに来たのでジェイデンに外出許可を出したと知らされる。虐待の疑いがあることを所長に伝えていたのに、何故父親のもとに帰すのだと食ってかかるグレイス。グレイスが疑っているだけで証拠はないし、彼女はセラピストでも精神科医でもない。なによりジェイデンが虐待を否定しているとあっては、家に帰すしかない。自分も辛いが全ての子どもたちを救うことは出来ないと言われてしまう。まぁ、そうなのでしょうけれど・・・ この辺りは監督の実体験でもあったりするのかな? ジェイデンが心配でガマンできなくなったグレイスは、ジェイデンの自宅へ向かう。彼女がそうしていたように、裏口のマットの下から合いカギを取り出して、家に入ってしまう。バットのようなものを掴んで、父親の寝室へ向かう。そこには行為後を思わせる姿で眠る父親の姿。そして、背後から「やり過ぎじゃない?」と声をかけるジェイデン。施設に戻ると言ったら殴られたと告白し、お腹のアザを見せる。
グレイスはジェイデンに自分が父親に性的虐待を受けていたこと、そして妊娠し中絶したことを打ち明ける。父親は彼女への虐待が原因で逮捕されたこと、裁判で彼女は父親の虐待を証言したことを打ち明ける。だから、ジェイデンも勇気を持って欲しいと言う。そして、2人はジェイデンの父親の車をボコボコにする! グレイスが自身の虐待をジェイデンに打ち明けたのってこのシーンだよね? もっと前だったっけ? ちょっと順番が分からなくなっちゃった(o´ェ`o)ゞ よく考えるとグレイスは家宅侵入だし、器物損壊だし、いろいろ問題はあるかと思うけれど、映画としてはスッキリして良かった!
冒頭と同じように施設の庭で、4人が出所した後のマーカスの話題をしているシーンに切り替わる。そして、サミーが飛び出してきて、4人で追いかけるシーンで終わる。良く考えると、根本的な問題は何も解決していないかもしれない。所長が言うように全ての子どもたちを救えるわけじゃない。でも、それぞれの人生は続く。結局、グレイスとメイソンの仲がどうなったのかも分からない。でも、ジェイデンに「いいお母さんになれるよ」と言われたグレイスなら、お腹の子どもを殺してしまう選択はしないのではないかな?と思った。
キャストは全然知らなかったこともあって、もう本当にこの施設にいる人たちなんじゃないかというくらい自然だった。どうやらグレイス役のブリー・ラーソンは、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット初監督作品『ドン・ジョン』(感想書いてない)で、妹役を演じてたらしい! 全然違っててビックリ! メイソン役のジョン・ギャラガー.Jrは「春のめざめ」でトニー賞取ったのね?! ちょっと頼りないところはあるけれど、愛情あふれるメイソンは好きだった! マーカス役キース・スタンフィールド、ジェイデン役ケイトリン・デヴァーも良かったと思う。
こういう施設があるのは知らなかった。親との関係で傷ついた10代の子どもたちにとって、親世代の職員ではなくて、比較的年の近い職員がいるというのは、友達みたいな感じでいいんじゃないかな? 程度の差こそあれグレイスもメイソンも家庭に恵まれないというのは、ストーリー上の設定だけだったのか、それともあえてそういう過去のある人物を採用しているのか謎。あえて言及がなかったので、ストーリー上の設定なのでしょう。映画などではありがちな題材ではあるとはいえ、現実でも一向に無くならない問題。それを、あえて重くし過ぎず、ポップな感じに見せたのは良かったと思う。やや強引だなと思う部分がなくはないけど、新人監督の長編2作目作品ということだし、良かったのではないかなと思う。
あまり広くはなさそうな施設も、閉塞感を感じさせないデザインで良かったと思うし、冒頭とラストでサミーが飛び出して来る庭の感じも良かった。何もないけど明るい庭。グレイスとメイソンの部屋もポップでかわいかった! そういうセンスは好きだった。
多くの賞を受賞していて前評判が高まりまくっているけど、あまり期待せずに見た方がじんわりくるんじゃないかと思う。
『ショート・ターム』Offocial site
Hollywood Newsで当選。いつもありがとうございます! 前評判がとっても高かくて、見たいと思っていたのでウレシイ! ってことで、張り切って行ってきたー
ネタバレありです! 結末にも触れています!
「10代の子供たちをケアする短期保護施設ショート・タームで働くグレイス。同僚のメイソンとは恋人で同棲中。日々、それなりに充実していた。メイソンとの間に子供ができ、彼は喜ぶけれど、グレイスにはメイソンにも話せない過去があった・・・」という感じの話。思っていたより感動。・゚・(ノД`)・゚・。とはならなかったけれど、なかなか良かった。問題を抱えている子供たちをケアする側も、問題を抱えているっていうのは、特別目新しいわけでもなく、ちょこちょこ粗さもあるけれど、短くスッキリまとめていたと思うし、重いテーマをポップに見せるのも好み。
2009年サンダンス国際映画祭、シアトル国際映画祭、アスペン国際映画祭、ボストン・インディペンデント映画祭など、50の映画祭にノミネート、30で受賞。2013年サウス・バイ・サウス・ウエスト映画祭でプレミア上映され、審査員特別賞を受賞。Rotten Tomatosで99%の満足度を得るなど、まさに鳴物入りでの日本公開という感じ。監督はデスティン・クレットン。マウイ島出身の日系人で、今作が長編2作目。今作が高評価されたため、次回作はジェニファー・ローレンス主演の『The Glass Castle/ガラスの城の子どもたち』が控えているそうで、まさに期待の若手監督という感じでしょうか? 舞台挨拶で(記事はコチラ)、監督ご自身が語っていたように、カリフォルニア州の保護施設で働いていた体験がヒントとなっているとのこと。
冒頭、4人の若い男女が中庭のようなところで会話をしている。家族と共に暮らせない子供たちを、一定期間預かり生活させる施設ショート・ターム。彼らはそこで働くスタッフで、ネイトという青年は今日が初日らしい。彼に施設のことを説明しつつ、先輩スタッフのメイソンが施設にいた子供とのエピソードを、おもしろおかしく語っている感じ。主人公のグレイスともう1人の女性スタッフは呆れ顔。そんな中、1人の少年が奇声を上げて飛び出してくる。慌てて追いかける4人。それが上に貼ったチラシ。このシーン、よく考えると大変なシーンなのかもしれないけれど、天気のいい芝生の庭で繰り広げられる逃亡劇は、どこかコミカルでちょっと楽しい。なるほど、こんな感じなのかと思ったりする。この始まりは好き! 同時に4人のキャラクターの説明にもなっている。メイソンはサービス精神があっていい人、大学に通いながらボランディアで来ているネイトは真面目。グレイスはしっかり者。この3人は主要キャラ。もう1人の女性は完全に脇役だったので割愛(笑)
施設での仕事は、子供たちの心のケアをするのではなく、あくまで生活をさせること。どうやら、18歳になると施設を出なければならないらしく、18歳になったマーカスは近々施設を出なければならない。母親に虐待されていたマーカスは、殻に閉じこもりがち。彼と年齢の近い少年ルイスとしょっちゅう諍いを起こしている。ルイスの方がちょっかいを出している感じだけれど、人を寄せ付けないマーカスの態度がそうさせている部分もあるのかも。2人がケンカをするたび、グレイスたちは割って入り、2人を落ち着かせ、食事をさせたりする。冒頭、裸で飛び出してきた少年サミーは、どうやら妹を亡くしたことで、心に深い傷を負ってしまったらしく、ぬいぐるみを手放さず、誰とも会話をしない。そもそも、自閉症の症状があるのか、心を閉ざしてしまったのかは不明。グレイスたちは、彼を寝かしつけたりする。そういうケア。いわゆる、日常生活をさせる。それがなかなか大変。グレイスはスタッフとして優秀らしく、常に中心になって働いている。
一方、グレイスは病院で診察を受けている。どうやら妊娠しているらしい。即、中絶の予約をする。他の選択肢はないのか?と尋ねる女医に対して、ないときっぱり答える。そして、以前にも妊娠したことは?の問いに、あると答える・・・ この時点では、グレイスの過去が荒れていたのか?とも思うのだけど、とにかく彼女にも何か過去に傷があることが分かる。グレイスのお腹の子の父親はメイソン。2人は同棲している。2人が何歳の設定なのか不明だけど、グレイスが20代前半でメイソンが20代後半って感じかな? メイソンはグレイスを愛していて、彼女を包み込むように愛を注いでくる。そして、彼女を求めてくる。でも、グレイスはそれに応えることに苦悩している様子・・・ メイソンの求めに応えられないことで、彼を傷つけてしまったため、2人の子どもが出来たことを打ち明ける。大喜びするメイソン。素敵なカップルだなと思っていたのだけど・・・
そんな時、施設に1人の少女が入居してくる。囲み目メイクで攻撃的なジェイデン。施設には10人くらいの子どもたちがいるようだけど、中心的に描かれるのはジェイデンと前述のマーカス。後は、マーカスとケンカしてばかりいるルイスと、飛び出し坊やサミー。でも、家庭の問題が見ている側にもハッキリ分かるように語られるのは、ジェイデンとマーカスのみ。母親が亡くなってから、ジェイデンにどう接していいか悩み、彼女を持て余しているという父親は、ショート・ターム代表の知人で、いわゆる紳士と呼ばれる人物。見ている側としては、この父親に問題があるのは察しがつく。ジェイデンはたびたび問題を起こす。それに対して姉のような態度で接するグレイス。次第にジェイデンは心を開く。
マーカスがケンカをして、メイソンがケアに向かう。マーカスが作った曲を聞きたいと言うと、自分を虐待していた母親への思いをラップに乗せて歌うシーン。ラップが大の苦手な自分としては、ちょっと辛かったのだけど、それでも彼の思いは伝わってきた。初めてラップで涙が出そうになったかも? ラップじゃなかったら確実に泣いてた。あくまで個人的な好みの問題です! ラップ好きの方ごめんなさい┏○ペコ
ショート・タームに来て以来、初めて自宅へ戻る日。父親の迎えを待つジェイデンは、次第に落ち着きをなくしていく。どうやら自傷行為もあるようで、爪で自分の手を傷つけていく。耐えきれなくなって席を立ってしまうジェイデン。部屋の扉は開けておく決まりになっているのに、扉を閉めてしまう。自室で自傷行為をしているのではないかと心配するグレイスたち。うーん。てっきり、ジェイデンは父親に迎えに来てもらいたいと思っていて、彼女は父親に捨てられたと考えているのだと思っていた。この感じだとそうとってしまうかも? あえてミスリードさせているわけでもないと思うのだけど、後からアレ?と思ったことは事実。ジェイデンとグレイスが部屋で話している間、マーカスが皆に声をかけて、メッセージカードを作る。作るところはあえて見せず、部屋に並んでる感じは好きだった。カラフルでかわいくて、ちょっと泣いてしまった
ジェイデンは施設を抜け出してしまう。後を追ったグレイスはジェイデンの自宅までついて行く。戻ってきたジェイデンはグレイスに自作のマンガを見せる。友達のいなかったタコが、サメと友達になりたくて、自分の体を与え続ける話。このマンガを見てグレイスはジェイデンが父親から虐待を受けていることを悟る。何故、このマンガで虐待の疑いを感じ取れたのか、心理学などの知識がない自分にとっては全く分からなかったのだけど・・・ そういう部分について、詳しい説明はない。
グレイスの妊娠を知ったメイソンは、彼女を養父母の結婚記念日パーティーに招待する。メイソンが両親を亡くしたのか、あるいは捨てられてしまったのか不明だけど、この養父母は素敵な人たちだったらしく、メイソンの他にも何人か養子を育てたらしい。このパーティーでメイソンはグレイスにプロポーズする。でも、彼女はそれに応えられない。一度は彼との結婚を夢見ていたグレイスだけど、父親が出所してくるという連絡を受けて動揺しているのだった。父親が刑務所にいることは事前に語られていたし、ジェイデンの問題に素早く気づいたことから判断すると、彼女が抱えている問題はなんとなく分かるのだけど、なかなか明らかにはしない。グレイスは子供も中絶するつもりだと告げる。理解できずに苦しむメイソンはキレてしまう。まぁ、そうだよね・・・
飼っていた金魚が死んでしまい、ルイスの仕業ではないかと疑ったマーカスが騒ぎを起こす。駆けつけたグレイスが発見したのは自殺未遂したマーカスの姿。病院へ付き添うメイソンとグレイス。重い空気が漂う。このエピソードが特別2人の仲を進展させたり、後退させたりすることもなかったので、必要だったのかは謎だけど、ジェイデンに思いやりを見せた、マーカスのこの行動で、彼らが不安定であるというのは伝わった。
そんな中、父親が迎えに来たのでジェイデンに外出許可を出したと知らされる。虐待の疑いがあることを所長に伝えていたのに、何故父親のもとに帰すのだと食ってかかるグレイス。グレイスが疑っているだけで証拠はないし、彼女はセラピストでも精神科医でもない。なによりジェイデンが虐待を否定しているとあっては、家に帰すしかない。自分も辛いが全ての子どもたちを救うことは出来ないと言われてしまう。まぁ、そうなのでしょうけれど・・・ この辺りは監督の実体験でもあったりするのかな? ジェイデンが心配でガマンできなくなったグレイスは、ジェイデンの自宅へ向かう。彼女がそうしていたように、裏口のマットの下から合いカギを取り出して、家に入ってしまう。バットのようなものを掴んで、父親の寝室へ向かう。そこには行為後を思わせる姿で眠る父親の姿。そして、背後から「やり過ぎじゃない?」と声をかけるジェイデン。施設に戻ると言ったら殴られたと告白し、お腹のアザを見せる。
グレイスはジェイデンに自分が父親に性的虐待を受けていたこと、そして妊娠し中絶したことを打ち明ける。父親は彼女への虐待が原因で逮捕されたこと、裁判で彼女は父親の虐待を証言したことを打ち明ける。だから、ジェイデンも勇気を持って欲しいと言う。そして、2人はジェイデンの父親の車をボコボコにする! グレイスが自身の虐待をジェイデンに打ち明けたのってこのシーンだよね? もっと前だったっけ? ちょっと順番が分からなくなっちゃった(o´ェ`o)ゞ よく考えるとグレイスは家宅侵入だし、器物損壊だし、いろいろ問題はあるかと思うけれど、映画としてはスッキリして良かった!
冒頭と同じように施設の庭で、4人が出所した後のマーカスの話題をしているシーンに切り替わる。そして、サミーが飛び出してきて、4人で追いかけるシーンで終わる。良く考えると、根本的な問題は何も解決していないかもしれない。所長が言うように全ての子どもたちを救えるわけじゃない。でも、それぞれの人生は続く。結局、グレイスとメイソンの仲がどうなったのかも分からない。でも、ジェイデンに「いいお母さんになれるよ」と言われたグレイスなら、お腹の子どもを殺してしまう選択はしないのではないかな?と思った。
キャストは全然知らなかったこともあって、もう本当にこの施設にいる人たちなんじゃないかというくらい自然だった。どうやらグレイス役のブリー・ラーソンは、ジョゼフ・ゴードン=レヴィット初監督作品『ドン・ジョン』(感想書いてない)で、妹役を演じてたらしい! 全然違っててビックリ! メイソン役のジョン・ギャラガー.Jrは「春のめざめ」でトニー賞取ったのね?! ちょっと頼りないところはあるけれど、愛情あふれるメイソンは好きだった! マーカス役キース・スタンフィールド、ジェイデン役ケイトリン・デヴァーも良かったと思う。
こういう施設があるのは知らなかった。親との関係で傷ついた10代の子どもたちにとって、親世代の職員ではなくて、比較的年の近い職員がいるというのは、友達みたいな感じでいいんじゃないかな? 程度の差こそあれグレイスもメイソンも家庭に恵まれないというのは、ストーリー上の設定だけだったのか、それともあえてそういう過去のある人物を採用しているのか謎。あえて言及がなかったので、ストーリー上の設定なのでしょう。映画などではありがちな題材ではあるとはいえ、現実でも一向に無くならない問題。それを、あえて重くし過ぎず、ポップな感じに見せたのは良かったと思う。やや強引だなと思う部分がなくはないけど、新人監督の長編2作目作品ということだし、良かったのではないかなと思う。
あまり広くはなさそうな施設も、閉塞感を感じさせないデザインで良かったと思うし、冒頭とラストでサミーが飛び出して来る庭の感じも良かった。何もないけど明るい庭。グレイスとメイソンの部屋もポップでかわいかった! そういうセンスは好きだった。
多くの賞を受賞していて前評判が高まりまくっているけど、あまり期待せずに見た方がじんわりくるんじゃないかと思う。
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