'07.10.06 『ボルベール(帰郷)』@ギンレイホール
2本目。こっちの方が見たかった。ペネロペ・クルス主演、ペドロ・アルモドバル監督の映画。母子3代に渡る女性の因縁と絆の話。
「失業中の夫の代わりに家計を支えるライムンダ。彼女の留守中、娘のパウラが自分は実の父ではないと襲ってきた夫を殺してしまう。同じ頃、焼死した母が故郷の村に現れたとの噂が流れて…」という話。アルモドバル作品はいつもそうだけど、見ていて楽しい話ではない。見終わってもいい気分ではない。登場人物達は死もしくは性に関して秘密を持っている。被害者でもあり 加害者でもあったりして複雑。どの人物も辛い現実を生きている。でも、それがスペイン独特の原色の風景と、ラテンの曲の哀しくも力強い音色に乗って描かれると、妖しい強さを発して引き付けられてしまう。
前作『バッド・エデュケーション』とは逆に、今回は女性の話。女の哀しさ、そして強さを描く。2作は全くリンクしていないので、比べるのは変だけど、前作はほとんど女性が出てこない。今回は逆。もちろん出てはくるけど重要ではない。そして2作を見て思うことは「やっぱり女性は強い」ということ。
途中から想像はついてたけど、ライムンダの人生は重い。いつもおどおどしている姉はライムンダを気が強いと言うけど、強くもなるだろう。でなければ生きていられなかったはず。そして娘パウラの存在。彼女の存在がまた辛い。1番辛い運命なのはパウラかもしれない…。
ボルベールっていうのは映画の中でライムンダが歌う曲。実際ペネロペが歌っているのか不明だけど、このシーンはいい。ひょんなことから映画の撮影隊のために、友人が閉めたレストランを開くことになる。このエピソードもいい。ライムンダの肝っ玉ぶりが分かるし、なによりレストランをきりもりしている姿が生き生きしていていい。打上げパーティーの場でライムンダが子供の頃歌手を目指していた事が分かる。彼女の歌を聴いたことがないという娘のために久しぶりに歌うのが「ボルベール」 ラテンの曲は哀愁があり力強い。それがライムンダの人生に重なる。そして姉ソーレの車の中で息を潜めてその姿を見つめる母。彼女がこみ上げる涙を抑えきれない姿が素晴らしい。
ペネロペ・クルスが美しい! 前からキレイだとは思っていたけど、アクが強すぎると思っていた。でも、この映画ではその個性がピタリとはまった。ライムンダはその過去を知らなければ、ちょっとヒステリックな女と思う人もいるかもしれない。強さと危うさが同居しているとたまらない魅力になるけど、強さの方が前面に出ている。でも、それは自分と娘を守るため。その感じがペネロペの美しく強い、でも哀しい表情で演じられると痛々しい魅力となる。そしてペネロペの演技は素晴らしかったと思う。常に潤んだ瞳が全てを物語る。英語の映画に出ている時には強いスペイン訛が気になるけど、スペイン語の少し早口な言葉が彼女の強さを引き立てる。
母イレネ役のカルメン・マウラも素晴らしい。姉ソーレの所にいる時はコミカル(オナラエピソードや、ロシア人のフリとかおかしい(笑))で奔放な女性なのかと思わせたが、彼女の口からライムンダの過去が分かった瞬間にボルベール(帰郷)の真の意味が分かった。そして彼女がこれから生きていく道。そのつぐないの決心が素晴らしい。彼女の罪もまた哀しい。姉ソーレ、隣人アウグスティーナみな女性が哀しく、それぞれの逞しさ強さがあり素晴らしい。コピーに「女たち、流した血から、花咲かす」とあるけれど、まさにこの映画のイメージカラーの赤が血を思わせる。もちろん血を流してるのは女の方。いろんな意味で血を流す。そういう女の業を感じる。それがスゴイ。
アルモドバル作品はいつも映像が美しい。ライムンダが一時的にオーナーになるレストランも素敵だし、街並みもいい。夫のお墓となる湖も美しいし、なにより故郷の風景がいい。素敵だけどすべてどこか哀しげ。やっぱり上手いと思う。彼の作品はいつも主人公達の背負っているものが重くて、哀しくて、でも意外にずるかったりして・・・。とっても人間くさいけど押し付けがましくない。見終わっていい気持ちになるかというとそうではないし、どれも重いテーマでもズッシリ疲れてしまうわけでもない。人によって好き嫌いはあると思うけど、私はやっぱり好きなんだと思う。
アルモドバル作品の中では『オール・アバウト・マイ・マザー』(こちらもペネロペ出演作)の次に好き。とにかくペネロペ・クルスを見るだけでも見る価値あり。私はレズっ気は一切ありませんが、あのウルウルした瞳と、華奢な体に巨乳! 完全に男目線になってしまった(笑) ペネロペなくしてはありえない映画だと思う。こんなに作品と女優がリンクするのも珍しいかも!
『ボルベール(帰郷)』Official site
2本目。こっちの方が見たかった。ペネロペ・クルス主演、ペドロ・アルモドバル監督の映画。母子3代に渡る女性の因縁と絆の話。
「失業中の夫の代わりに家計を支えるライムンダ。彼女の留守中、娘のパウラが自分は実の父ではないと襲ってきた夫を殺してしまう。同じ頃、焼死した母が故郷の村に現れたとの噂が流れて…」という話。アルモドバル作品はいつもそうだけど、見ていて楽しい話ではない。見終わってもいい気分ではない。登場人物達は死もしくは性に関して秘密を持っている。被害者でもあり 加害者でもあったりして複雑。どの人物も辛い現実を生きている。でも、それがスペイン独特の原色の風景と、ラテンの曲の哀しくも力強い音色に乗って描かれると、妖しい強さを発して引き付けられてしまう。
前作『バッド・エデュケーション』とは逆に、今回は女性の話。女の哀しさ、そして強さを描く。2作は全くリンクしていないので、比べるのは変だけど、前作はほとんど女性が出てこない。今回は逆。もちろん出てはくるけど重要ではない。そして2作を見て思うことは「やっぱり女性は強い」ということ。
途中から想像はついてたけど、ライムンダの人生は重い。いつもおどおどしている姉はライムンダを気が強いと言うけど、強くもなるだろう。でなければ生きていられなかったはず。そして娘パウラの存在。彼女の存在がまた辛い。1番辛い運命なのはパウラかもしれない…。
ボルベールっていうのは映画の中でライムンダが歌う曲。実際ペネロペが歌っているのか不明だけど、このシーンはいい。ひょんなことから映画の撮影隊のために、友人が閉めたレストランを開くことになる。このエピソードもいい。ライムンダの肝っ玉ぶりが分かるし、なによりレストランをきりもりしている姿が生き生きしていていい。打上げパーティーの場でライムンダが子供の頃歌手を目指していた事が分かる。彼女の歌を聴いたことがないという娘のために久しぶりに歌うのが「ボルベール」 ラテンの曲は哀愁があり力強い。それがライムンダの人生に重なる。そして姉ソーレの車の中で息を潜めてその姿を見つめる母。彼女がこみ上げる涙を抑えきれない姿が素晴らしい。
ペネロペ・クルスが美しい! 前からキレイだとは思っていたけど、アクが強すぎると思っていた。でも、この映画ではその個性がピタリとはまった。ライムンダはその過去を知らなければ、ちょっとヒステリックな女と思う人もいるかもしれない。強さと危うさが同居しているとたまらない魅力になるけど、強さの方が前面に出ている。でも、それは自分と娘を守るため。その感じがペネロペの美しく強い、でも哀しい表情で演じられると痛々しい魅力となる。そしてペネロペの演技は素晴らしかったと思う。常に潤んだ瞳が全てを物語る。英語の映画に出ている時には強いスペイン訛が気になるけど、スペイン語の少し早口な言葉が彼女の強さを引き立てる。
母イレネ役のカルメン・マウラも素晴らしい。姉ソーレの所にいる時はコミカル(オナラエピソードや、ロシア人のフリとかおかしい(笑))で奔放な女性なのかと思わせたが、彼女の口からライムンダの過去が分かった瞬間にボルベール(帰郷)の真の意味が分かった。そして彼女がこれから生きていく道。そのつぐないの決心が素晴らしい。彼女の罪もまた哀しい。姉ソーレ、隣人アウグスティーナみな女性が哀しく、それぞれの逞しさ強さがあり素晴らしい。コピーに「女たち、流した血から、花咲かす」とあるけれど、まさにこの映画のイメージカラーの赤が血を思わせる。もちろん血を流してるのは女の方。いろんな意味で血を流す。そういう女の業を感じる。それがスゴイ。
アルモドバル作品はいつも映像が美しい。ライムンダが一時的にオーナーになるレストランも素敵だし、街並みもいい。夫のお墓となる湖も美しいし、なにより故郷の風景がいい。素敵だけどすべてどこか哀しげ。やっぱり上手いと思う。彼の作品はいつも主人公達の背負っているものが重くて、哀しくて、でも意外にずるかったりして・・・。とっても人間くさいけど押し付けがましくない。見終わっていい気持ちになるかというとそうではないし、どれも重いテーマでもズッシリ疲れてしまうわけでもない。人によって好き嫌いはあると思うけど、私はやっぱり好きなんだと思う。
アルモドバル作品の中では『オール・アバウト・マイ・マザー』(こちらもペネロペ出演作)の次に好き。とにかくペネロペ・クルスを見るだけでも見る価値あり。私はレズっ気は一切ありませんが、あのウルウルした瞳と、華奢な体に巨乳! 完全に男目線になってしまった(笑) ペネロペなくしてはありえない映画だと思う。こんなに作品と女優がリンクするのも珍しいかも!
『ボルベール(帰郷)』Official site
コメントありがとうございます。
よく女優が汚れ役などをやった際に使う「体当たりの演技」って表現あまり好きじゃないのですが、このペネロペの演技はまさに体当たりだった気がします。
濃い化粧の下の本当の素顔を晒したみたいな・・・。
ホントにはまり役だったと思います。
アルモドバル監督は、女系家族に囲まれて少年時代を過ごし、そして、ゲイです。
この作品は、故郷の大地と、女性性というものの、彼なりのオマージュだと思いました。
こんばんわ♪
アルモドバル監督がゲイなのは、『バッド・エデュケーション』で知りました。
重くてスッキリしない映画ですが、なかなかおもしろかったです。
対してこの映画の女性たちの力強さがいいですね!
女系家族で育った彼には女性は逞しく映ったんですね(笑)