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【cinema】『ボーイソプラノ ただひとつの歌声』(舞台挨拶付試写会)

2015-08-30 01:39:01 | cinema

'15.08.04 『ボーイソプラノ ただひとつの歌声』(舞台挨拶付試写会)@アスミック・エース試写室

 

cocoで当選 いつもありがとうございます。これ知らずに行ったのだけど、フランソワ・ジラール監督 & 主演のギャレット・ウェアリングくん舞台挨拶付試写会だった! その時の様子はコチラを見ていただくとして、とっても楽しい試写会だった

 

  

ネタバレありです! 結末にも触れています!

 

 「アルコール依存症の母親と暮らす母子家庭のステットは、トラブルばかり起こす問題児。しかし、校長のミス・スティールは彼の美声を伸ばそうと、アメリカ一の少年合唱団である国立少年合唱団を招待、指揮者のカーヴェルにステットを紹介してくれる。しかし、ステットは歌うことを拒否して去ってしまう。そんな中、母親が交通事故で死亡。初めてあった実父は彼を持て余し、多額の寄付を申し出て合唱団の寄宿学校へ転入させてしまう・・・」という話。少年の成長物語であり、王道ストーリー。ちょっとキレイにまとめ過ぎた気もするけれど、王道ゆえに感動してしまう。

 

「ZED」の演出などで25回も来日経験のあるフランソワ・ジラール監督作品。脚本は『ミッション:8ミニッツ』(感想はコチラ)のベン・リプリー。トロント国際映画祭GALA部門で上映された。映画に登場する国立少年合唱団のモデルとなったのは、アメリカ少年合唱団(ABS:American Boychoir school)。ABSは70年以上の歴史を持つ全寮制の非営利団体。4年生~8年生が学業と合唱曲学んでいるそうで、今作にも生徒たちが出演している。ちなみに、エンディング・テーマは人気歌手ジョシュ・グローバン & アメリカ少年合唱団による「The Mystery of Your Gift」でこれも素晴らしかった。

 

未婚で自分を生み、今ではアルコール依存症となった母親と2人暮らしのステット(ギャレット・ウェアリング)は、学校でもそのことをからかわれるため、暴力を振るってしまったり、授業中に反抗的な態度を取ってしまったりとトラブルばかり起こしている問題児。厄介者扱いされてもおかしくない状況だけど、校長であるミス・スティール(デブラ・ウィンガー)は彼の才能を伸ばそうと、ステットのために国立少年合唱団を招き、実質合唱団の実権を握る指揮者のカーヴェル(ダスティン・ホフマン)に引き合わせようとする。しかし、ステットは怖気づいたのか逃げてしまう。まぁ、ステットの歌声が荒削りながら美しいことは提示されていたものの、この時点では特別彼が歌うことが好きだという描写もないので、本人としては単純にやりたくなかったのかも。まだ小学生だし・・・

 

仕事はあるようだけれど、昼間から酒浸りの母親は夕食の支度すらできない状態。この母親はこの後バスタブに浸かっているシーンの後、急に交通事故で遺体になってしまうので、女優さんが誰だったのかも不明。身寄りのないステットのために、ミス・スティールは父親(ジョシュ・ルーカス)を探してくれたようで、初めての対面となるけれど、この父親は明らかに困惑している。母親とは不倫関係だったようで、父親としては間違いなく火遊び。家族には内緒なようだけれど、一応養育費の支払いはしていたらしいので、まるきり悪い人物というわけでもないのでしょうが、いい人物とも言い切れない。ミス・スティールとしては父親の困惑も分かるので、国立少年合唱団の寄宿舎に入れてはどうか?と提案する。学校側の都合もあるでしょうし、そもそもステットは合唱が好きなのか?とも思うけど、彼が合唱を始めることは分かっているので、多少強引でもOK。

 

父親の高級車で国立少年合唱団へ向かう。当然ながら入学の時期は過ぎており、特例は認められないと言われてしまう。そこをなんとかと小切手をちらつかせて入学させてしまう父親。ステットの住んでいた町から寄宿舎までは、かなりの移動距離だったようで、父親としても家族への言い訳が苦しいらしく、とにかく預かってもらわなくては困るという感じ。やっていることは酷いけど、そんなにイヤではないのは役者の演技によるものか? 結局、校長(キャシー・ベイツ)は結局これを受け入れる。学校も運営が厳しいようで(笑) 確かモデルとなっているアメリカ少年合唱団も寄付で運営されているんじゃなかったかな? 父親としては厄介払いできたし、学校も潤ったということでOKでしょうが、特例で入学してしまうとステットへの風当たりが強くなってしまうのでは?と心配してしまう。

 

案の定、同室のイヤミな少年はステットを見下しているし、合唱団のスターであるデヴォンも早速ステットに目を付けた様子。ステットは楽譜を読むこともできないし、そもそもが誰とも群れない問題児だったので、当初は孤立してしまうけれど、自販機をちょっといじって、お金を払わずお菓子を取り出したりしてそれなりに認められていく。まぁ、そんな認められっぷりもどうかと思うけれど(笑) 要するにイジメらしきものはあるけど、ステットは意に介さないし、必要とあれば向かっていくということ。必ず1人くらいは優しく接してくれる子がいるものだけど、その子に楽譜の読み方を習ったりしつつ、ステットなりに努力はしている。

 

ある日、講堂で1人ピアノを弾くカーヴェルを見かける。この時彼が弾いていたのがラフマニノフの「鐘」! バンクーバーオリンピックで浅田真央選手がFPに使用した曲! 指揮者として尊敬を集めているカーヴェルだけど、若いころはピアニストを目指していたらしい。教師から才能がないから辞めろと言われたそうで、そういう挫折を味わっている人物としては、何事にも真剣になれないステットが歯がゆくて仕方がないらしい。カーヴェルには(老人なので)もう時間がない的な発言をするステットに対し、ラフマニノフが「鐘」を作曲したのは20歳だった、あと何年で20歳になる?そう考えたら(ステットにも)時間はないはずだと言う。確かにそう。年を取るのはあっという間。気がつくと取り返しがつかない年齢になっている。でも、それが分かるのは過ぎてしまってからだったりするんだよね。この言葉に感銘を受けたのか、単純に反抗心からか、ステットの態度がこの時から変わる。ちなみに、ステットがカーヴェルに言った「じいさん、あんたの時間は残り少ないんだよ」というセリフは、監督とダスティン・ホフマンとの共同作業で生まれたセリフだそう。

 

合唱団では選抜でツアーメンバーが組まれる。入学したばかりの頃、日本ツアー向けに「ほたるこい」の練習をしてたりしたし。同室のイヤミ少年くんがメンバーに選ばれて、日本から帰って来て自慢してる描写あり。嫌がらせされたので、彼の荷物を窓から投げちゃったりとステットも負けてはいないけど(笑) 全米ツアーが決定し、ステットもメンバーを狙う。やる気が出て来た。デヴォンに肩入れしている気取り屋先生がヒントをくれて、冬休みも密かに寮に残って1人で練習する。自己流になってしまうのでは?とか、いくら短い期間とはいえ、少年が1人で寮で生活ってありえる?とかいうツッコミも浮かばないくらい、ステットが楽しそう。初めて打ち込めるものを見つけたキラキラ感。

 

1人練習の成果もあってツアーメンバーに選ばれるステット。ツアー中もメキメキ頭角を現し、どんどん重要パートを担うようになっていく。いつしか合唱団のスター デヴォンと肩を並べるまでに。この辺りはモンタージュ形式で見せていて楽しい。ステットとともにワクワクしてしまう。ある特別なコンサート。有名な大学のホールだったと思うんだけど、イェールだったっけ? ハーバードだったっけ? そのコンサートには出演する生徒たちの家族が招待されていた。なんとステットの父の家にも家族分の招待状が届いていた。ビックリする父。まぁそうだよね(笑) てっきりステットが送ったのかと思っていたのだけど、後にこれはカーヴェルのしたことだと分かる。そして、これがちょっとした騒動を起こすのだけど、それは後ほど。何も知らない家族に引っ張られて会場にやって来る父親。なんとこの日風邪で熱を出してしまったデヴォンの代わりに主役のソロを歌うことに。それを良く思わないデヴォンに楽譜を隠されてしまい大ピンチ(゜∀゜ ;) しかし、会場で見守る父やカーヴェルの祈りが通じたのか、ステットは歌いきる。まぁ、ありがちな展開ではあるけれど、舞台そでで勝ち誇ったようなデヴォンなど、コミカルに描かれているので、楽しい場面ではないのに笑ってしまう。このデヴォンのキャラはなかなか面白い(笑)

 

ツアーを終えて学校に戻ると父親がスイスの学校に転校手続きを取ってしまう。カーヴェルが招待状を送ったことで、家族にステットの存在がバレてしまうことを恐れたから。無責任な父親だな。不倫しておいて相手が勝手に生んだっていう言い訳は通用しないよ(*`д´) まぁ、そこまでは言っていないし、この父親はとにかく小心者という印象。かなり裕福な暮らしをしているので、それなりの成功者だと思うし、愛する家族もいるので、それを壊したくないという気持ちも分からなくはない。同情はしませんが(笑) カーヴェルは積極的に説得するわけじゃないけれど、彼の言葉からステットが歌うことが好きで、続けたいと思ってることを知り、結局そのまま学校に残れることに同意する。まぁ、これも王道ではあるけど、この父親は一応ステットに仕送りする際、手紙を書こうか迷うシーンも入っていたし、悪い人というわけでもない。そしてステットを息子だと思っていることには間違いないのでしょう。3人の演技も良くて押しつけがましいシーンにはなっていない。

 

一方、主役の座を奪われることを恐れたデヴォンは、ステットのPCを勝手に見て、彼の母親が前科者であることを知り、逮捕された時の写真を大量プリントアウト。学校中に貼り出す。これ、ステットの母親が事故死していることは知っているのかな? 知ってたらしないよね? それでもやったのなら許せないけど(*`д´) 怒りを爆発させデヴォンを殴ってしまうステット。彼の処分は退学が妥当と主張するデヴォン派の気取り屋教師、個人情報をあんな形でばら撒いたデヴォンも同様の制裁を受けるべきと主張するステット派の教師。言い忘れていたけど、早くからステットの才能を認め、目を掛けてくれる若いメガネ教師がいる。結論はカーヴェルに委ねられることになる。カーヴェルとしては真剣さの感じられないステットを許すことは出来ない。ステットは学校に残りたいと訴える。 これ、結局残れることになるのだけど、どうして残れることになったんだっけ? 次々試練が降りかかるけど、その都度助けてくれる人がいたりして意外にご都合主義だったりするけど、それはそんなに気にならない。

 

さて、いよいよ佳境に! 1年で一番重要なコンサート。それはクリスマス・イヴに教会で行うコンサート。今年は特に力を入れており、ソロには高いレが要求される。ソロを歌うのはステットかデヴォンか? それぞれがそれぞれの方法で練習する姿もモンタージュ形式で見せる。外階段のようなところで初めて高いレが出せた時のステットの表情がいい。まぁ、結果は分かっているけど、やっぱりドキドキするし、何かに一生懸命になっている姿を見るのは気持ちがいい。授業の時だったかな? ボーイソプラノというのは、声変わりする前の一瞬の輝きだ的な話がある。音程が定まって美しい声が出るようになるには、ある程度大きくなっていないとダメだけど、変声期に入ってしまえば声は失われてしまう。そこからテノールやバリトンなどに転向して残る子もいるけれど、止めてしまう子もいるらしい。神様からの借り物というような言い方をしていたけれど、確かに女性のソプラノとはまた違った儚さのある美しさ。神聖な感じ。

 

いよいよクリスマスコンサート。どちらが選ばれたのかは明らかにされないまま歌う合唱団。美しいコーラス。父親がこっそり見に来ている。今度は自分の意志で。そしてソロ。1歩前に出て来るステット。やっぱり( ̄ー ̄)ニヤリ まぁ、それはそうでしょう(笑) そして高いレ。これハイCとか音楽用語的な感じで言えたらかっこいいんだけど、ハイCという言葉は知ってても、それがどの音なのか分からない(o´ェ`o)ゞ とにかく、このステットの高いレが出た瞬間は鳥肌立った 王道ゆえに感動

 

感動の余韻の後、1人学校のホールで声を試すステット。上手く声が出ない様子。そこへデヴォンが現れ拍手。「おめでとう。声変わりだ」と気取って去って行く。いいわこのキャラ(笑) ステットはパートを変えて残りたいと言うけれど、結局合唱団を去ることになる。音楽学校へ進むようなことだった気がするけれど、ちょっと曖昧な記憶。そして、もう1つ。なんとステットに家族が出来る。ステットの姿に感動した父親が、家族にステットの存在を打ち明けたようで、彼を家族として迎えることになったらしい。ちょっと全てがキレイにまとまり過ぎな気もするけれど、少年が主人公の映画なのだからベタなくらいハッピーエンドでいいと思う。

 

キャストは良かった。父親のジョシュ・ルーカスは自己保身ばかり考えていたけれど、ステットに愛情を感じていく過程を自然に演じていたと思う。嫌な人物に見えなかったのはジョシュ・ルーカスのおかげ。校長のキャシー・ベイツも学校の運営のためには、きれいごとばかり言っていられないという役を、少しコミカルに演じていてさすがの演技。校長には校長なりの愛情があることも感じられた。ミス・スティール役でデボラ・ウィンガーが出ていることをエンドロールで知りビックリ!  『デボラ・ウィンガーを探して』という映画があるくらい、絶頂期で半ば引退のような形で一線から身を引いてしまった。また活動されているのでしょうかね? 自分が知らなかっただけ?

 

ダスティン・ホフマンはさすがの存在感。これ、ダスティン・ホフマンの自伝的映画と書かれている見出しを見かけたのだけど、内容は読んでいないのでどう自伝的なのかは不明。ボーイソプラノだったの? カーヴェルは挫折を味わっているだけに、真剣に取り組んでいない人物に対してとっても厳しい。厳しいけれど激昂するわけではない。鬼教師であることは確かだけど、独裁者なわけでもないし、スパルタ的な指導をするわけでもない。偏屈なわけではないけれど、難しい人物であることは間違いない。そういう人物を的確に演じていて見事 そして、ステットのギャレット・ウェアリングがイイ。最初はちょっと拙いかな?とも思ったけれど、見ているうちにどんどん上手くなって行く。思春期ちょっと手前の少年期の危うさも感じられて良かった。公式サイトや映画サイトを見ても、本人が歌っているとは明記されていないけれど、舞台挨拶で本人が「もう高いレは出ません」って言ってたから、本人が歌ったってことでいいのかな? 吹替えっぽい気がしなくもないけど、どうなのか? いずれにしても歌声は美しかった。高いレが出た時は鳥肌←大切なことなので2度目(笑)

 

オペラ演出もされるフランソワ・ジラール監督。オペラ演出時にはコーラスが出て来てハーモニーを奏で始めた時涙が出るほど感動するそうで、なるほどあのシーンはそういうことからあの演出なのね。12歳の子供を配役するのはいつも怖いそうだけれど、ギャレットくんはじめ子供たちも良かった  デヴォン役のジョー・ウェストもいいキャラだったし(笑) 原題は『BOYCHOIR』でこれは少年合唱団っていう意味なのかな? Boychoirで検索すると、American Boychoir Schoolのことが出てきちゃう。サブタイトルは余計な気もするけど『ボーイソプラノ』っていうのは、その一瞬のキラメキを考えるといい邦題かもしれない。そうそう、少年たちのイジメについても、カーヴェルが自分たちがライバル心を煽り過ぎたかもしれないとの発言があるなど、ちょっと考えられているのかなと思う。まぁ、そんな単純なことではないと思うけれど。良く考えると逮捕歴があって育児放棄気味の未婚の母とか、自己保身のために息子を厄介払いしようとする父親とか、重いテーマだったりする。若干ではあるけれどいじめも出て来る。でも、コミカルというわけではないけれど、軽いタッチで描いているので重くなり過ぎず見ることが出来る。

 

うーん。どういう方にオススメなのかな? 誰でも安心して見れる作品だと思う。大感動はないけど、大失敗もない安定感のある作品。ダスティン・ホフマン好きな方是非!

 

『ボーイソプラノ ただひとつの歌声』Official site 

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