僕らはみんな生きている♪

生きているから顔がある。花や葉っぱ、酒の肴と独り呑み、ぼっち飯料理、なんちゃって小説みたいなもの…

「パトスとエロス」⑭

2008年11月02日 | ケータイ小説「パトスと…」
長池は避けたが自分が避けてもあいつは辰雄に向かってくるだろう、そして何か良くないことを仕掛けてくるに違いない、それはそれで仕方ないとして、とにかく我慢すればよい、だが長池に何と言い訳するんだ、あいつは辰雄にとってどんな関係なのか不思議に思うだろう、今あいつの思うとおりの展開でいいのか。

辰雄が長池を見やった時長池も辰雄を見た。怪訝な表情が辰雄に投げかけられた。

下を向いていた辰雄が視線を上げるともうあいつは目前に迫り、歯茎から歯槽膿漏のような腐った臭いがするのではないかと感じるほどニヤついて首を突き出していた。

辰雄の脳裏に鈴木が浮かんだ。
それが消えないうちに神山が浮かんだ。
「辰雄もこんどこそやれよ」
と言っている気がした。


拳を握りしめると思い切り反動をつけて殴った。


パンチは全く無防備だったあいつのみぞおちあたりにくいこみ、拳には肉を殴った時の生温かい感じが残った。
堅かったのか柔らかかったのか分からないが、深々と充分に殴った感覚だけは妙にはっきりとしていた。

あいつは、うううっとうなりその場にうずくまった。
そのまま振り返りもせず歩き去る辰雄に長池が走り寄り
「どうしたの?何あいつ」
と心配顔で尋ねた。辰雄は
「うん」
とひとつうなずき、
「生意気なんだよ」
と返した。

長池は何度も振り返りあいつの様子をうかがっていたが昇降口に入る頃には忘れてしまったようだった。
辰雄は今やったことに充分興奮していたのだが長池には気づかれないように平然を装っていた。


それ以来あいつが辰雄の前に現れることはなかった。
コニーを連れて喜多院を走り回る時も秋田犬の姿はなかった。

















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