何てつまらない監督だろう。いや、これは誤解がある。作品としては面白く、上手くまとまっているし、センスも悪くない。むしろ「メゾン・ド・ヒミコ」にしろ、今回の「ジョゼと虎と魚たち」にしろ秀作といっていい。が、何だろう、上手くまとまりすぎていて、観ている側の想像力が刺激されないのだ。多くの女性がほろりとしつつ、それ以上ではない秀作。
【ストーリー】
大学生の恒夫(妻夫木聡)は、ある日の明け方、坂 . . . 本文を読む
空前の韓流ブームや嫌韓本のベストセラー、拉致問題に靖国問題と相変わらず韓国・北朝鮮と日本を巡ってはいびつな関係が続いているけれど、この映画は成功を夢見て朝鮮から大阪へ渡ってきた伝説の男・金俊平の自伝的な物語であると共に、在日朝鮮人たちの歴史でもある。原作は梁石日、監督は崔洋一、脚本は鄭義信、「月はどっちに出ている」のメンバーが集結した佳作。
1923年。成功を夢見て祖国から大阪へ渡った少年・ . . . 本文を読む
オダギリジョーや柴咲コウが出ているとはいえ、決して派手ではないけれど、笑いあり、「孤独」や「死」や、しっとりと染み入る感動があり、お薦めの作品。まぁ、田舎の映画館で、既に9月から公開しているとはいえ、今日、観にいった時の客数は僕を入れて2人。昔、名画座で1人だったことがあるとはいえ、折角のいい映画なんだからもう少し観て欲しいものだ。
塗装会社の事務員として働く吉田沙織(柴咲コウ)は借金を抱え . . . 本文を読む
心を打つ音楽がきれいな心身から生み出されるとも思わないし、人格者であることが芸術の必要条件だとも思わない。むしろ周囲の人間と対立しながらでも、自らのエゴに忠実であることがいい音楽、人々の歓喜させる作品を生み出すために必要な場合も多いだろう。この作品を見れば、レイ・チャールズという人物がその偉大なる音楽的才能に対して、一個人としてみると「ろくでもない」人物の1人だということがわかる。もちろん黒人とい . . . 本文を読む
まぁ、何ともエンターティメントで遊び心いっぱいの映画なんだろう。多少の強引さはあるものの踊るシリーズの1つの到達点的な映画なのたろう。にしても、脚本家の君塚良一の趣味なのか、監督・本広克行の趣味なのか「パトレイバー」からインスパイアされたのは間違いがないし、オープニングのSATの訓練などは「遊びの時間は終わらない」を彷彿させる。しかも他局でやってた「砂の器」ネタまで思いっきり使って!遊び心満載のエ . . . 本文を読む
ようやく見終わった「24シーズンⅢ」だけれど、これまでのシーズンⅠ、シーズンⅡ以上に過激で、ある種の「いってしまった感」がある。例えば映画の場合、視聴者が事前に内容が過激であるなどの情報を得た上で、お金を払い見るわけだけど、「24」シリーズはTV番組だ。日本より暴力表現や性的表現に厳しいはずのアメリカでこれが放送されたこと自体ある種の驚きがある。
「24シーズンⅢ」の過激さ、それは単純にスト . . . 本文を読む
何も考えずに楽しめるヒット作!基本的にはストーリー重視の映画が好きだけれど、「遊びの時間は終らない」や「12人の優しい日本人」、「約三十の嘘」といったコメディも嫌いではない。特に「遊びの時間は終わらない」に見られるような、ありえねー系のでもちょっと捻りが効いたお馬鹿コメディは大好きだったりする。そういう意味じゃ、この茨城県下妻を舞台にした「下妻物語」は超ヒット!役者もいい味だしてるし、ここ最近では . . . 本文を読む
ネタ的には大林宣彦監督の「転校生」と同じく「体」の入れ替わりモノ。決して目新しい話ではないけれど、音楽がいいし、役者もノリノリ、お決まりの展開なんだけど、思わずほろっときてしまい、何となく「幸せ」になるって感じの映画。
再婚を目前に控えた精神科医の母・テス(ジェイミー・リー・カーティス)は几帳面な性格。それに対してロックバンドにはまっている娘・アンナ(リンゼイ・ローハン)は今時の女の子。母親の彼 . . . 本文を読む
映画と演劇の大きな違いとして、演劇の場合、「舞台」という物理的な制約があることが挙げられる。映画の場合、スクリーンの向こう側にいろんな国のいろいろな場面がワンカットごとに切り替わろうがさして問題ではない。しかしこれが演劇となると「場面」転換というのは思ったようにはいかない。仮に大掛かりなセットで幾つものシーンを用意するということもあるが、それにしたって用意できるシーンには限界がある。まぁ、そんなこ . . . 本文を読む
以前から読みたいと思いつつ、文庫本になるのを待ってて読めずにいる小説の1つに高村薫の「レディ・ジョーカー」がある。平成12年2月13日に時効をむかえたとはいえ未だに何故の多い「グリコ・森永事件」をモチーフに高村流の社会的怨嗟を絡めながら描かれた1級のミステリー。900頁にも及び小説を、2時間に凝縮ということで、おそらく原作ではもっとそれぞれの想いを書き込まれてあるのだろう。しかし渡哲也、吉川晃司、 . . . 本文を読む
2004年はジャパニメーションにとって話題の多い年だった。押井守が「イノセンス」を、宮崎駿が「ハウルの動く城」を公開し、その一方で「APPLESEED」がこれまでの日本のアニメとは違うアプローチで評判を集めた。そしてこの作品。「AKIRA」でジャパニメーションの先陣を切り、「マトリックス」にも影響を与え、新作の公開を永く待たれていた大友克洋が制作期間9年、総制作費24億円をかけた、ようやく、本当に . . . 本文を読む
「シザーハンズ」や「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」、「マーズ・アタック!」の監督ということで、例え「PLANET OF THE APES/猿の惑星」のような作品があったとしてもそれはご愛嬌、ティム・バートンの作品は見ておかねばならないだろうということで、早速、「チャーリーとチョコレート工場」を見てくる。うん、ティム・バートンらしい一癖も二癖もあるエンターティメント。で肝心の中身はと言うと・・ . . . 本文を読む
日本ではすっかり「ジャーナリスト」という言葉と「正義」という言葉が結びつかなくなったけれど、こういうドラマを見ると、やはりジャーナリストというのは「正義」と不可分なのだなと思う。アイルランドの伝説の女性記者 ヴェロニカ・ゲリンの物語。
1994年、アイルランドの麻薬による犯罪発生率は史上最高に達し、1万5千人が麻薬を常用、14才の中毒者たちもいた。そんな中、ダブリンの低所得者住宅の一角で、サンデ . . . 本文を読む
誤解を恐れずに言えば、この作品がなければ「地下鉄サリン事件」は起こらなかったであろう。マスメディアなどはその影響力を過小評価しているが、既に日本のアニメやハリウッド映画の想像力は現実を先行している。9.11の方法論がハリウッド映画によってインスパイアされたように、1993年に発表された押井守のこの作品は予言に満ちた、否、現実の先を行った作品だったと言える。1992年PKO法案が制定され国内がイラク . . . 本文を読む
「欲望の翼」「ブエノスアイレス」といった路線のウォン・カーウァイ作品が好きな人間であればそれなりに満足できるのだろうが、「木村拓哉」というキーワードや映画のキャッチコピー「その不思議な未来(2046)では、ミステリートレインが動き出し、アンドロイドが恋に落ちる。」やSFっぽさに対する期待からこの映画を見た人はかなり失望したのではないだろうか。決して駄作ではない。ただ期待に対する結果と言う意味では、 . . . 本文を読む