カンポ・レァルのアセイツナ
アセイツナ(aceituna)とは日本でもバルのタパスでおなじみになったオリーブ(の実)です。我々の世代ではカクテルのマルガリータに添えてあったのが、初めてみたオリーブではないでしょうか・・・。スペインへ来るまでは、タパス・ランクとしてはかなり低い、とは知りませんでした。掃いて捨てるほどにあるのか、マドリードから南下するほどに頻繁に出ます。
地中海沿岸ならどこでもオリーブ畑はありますが、大産地はスペインの南、アンダルシア州のハエン県(Jaen)です。赤茶けた土地の地平線の向こうまで続くオリーブ畑のパノラマには日本人なら誰でも「すげぇ~」と思います。僕がそれまでに見た地平線まで広がる耕地は北海道でしたが、オリーブ畑には温かみがあります。遠くから見るオリーブの木には丸みがあるのです。子供が描くように〇を描いて下に棒をつければオリーブの木です。
オリーブの実は絞ってオリーブオイル、塩漬けにしてワインのつまみのオリーブになります。スペイン人も好きなのでしょう、庭にオリーブの木を植えている隣人は多いです。僕の庭にも一本ありますが、毎年4キロくらい採れます。冬にオリーブの塩漬けを作りますが、観賞用のオリーブの木なので、オリーブの実の種が大きくて果肉が貧しいのが欠点です。三つくらい齧って、ハエンのオリーブ一粒くらいの果肉量です。
庭のオリーブの木
塩漬けそのものは漬物程度の手間ですが、その前の処理、実を苛性ソーダに漬けての渋抜きが面倒です。漬ける時間が足りないと渋いし、漬けすぎるとオリーブの味が薄くなりしょっぱいだけになってしまいます。苛性ソーダはヤケドをするので、ゴム手袋をはめての作業も面倒です。たかが4キロにそんな手間暇かけるのが、歳とともに億劫になりました。
なので、マドリード産のオリーブを買ってしまいます。マドリード州の南東にカンポ・レァル(Campo Real)と言うオリーブの産地があり、そこの「浅漬け」を買います。「浅漬け」は「ハエン産」と比較して僕がそう評価するだけで、産地では普通のオリーブです。色がみずみずしいグリーンで、アンダルシアのオリーブ・グリーンやブラック・オリーブではありません。果肉が適当に歯ごたえがあり、厚いです。食事を作るときに僕は白ワインでボリボリと齧ります。
ハエン産のオリーブとカンポ・レァルのオリーブの違いは、果肉の歯ごたえです。カンポ・レァルのオリーブは口の中で果肉を種から歯で剥がしますが、ハエンのは噛むだけで「スポッ」と果肉だけが種から外れます。カンポ・レァルのオリーブはオリーブの味で、ハエンのはオリーブオイルの味です。塩味はカンポ・レァルのオリーブほうが強いです。そこが難点だったので、庭のオリーブで塩分カットのオリーブを自分で作っていたのです。でも、健康志向キャンペーンのお陰か、カンポ・レァルのオリーブも塩味が薄くなりました。
カンポ・レァル村と丘の上の聖母カスティージャ教会。その後ろに広がるオリーブ畑
そのオリーブの村・カンポ・レァルへぶらりと行ってきました。面白くない村でした。マドリード市内から車で40分くらいですが、平日のバルは閑散としていました。昼飯どきなのにマドリードの活気がないのは、仕事場―自宅が近いので帰って食べてるのでしょう、面白くもない。ブルーカラーは仕事の相棒とバルで定食(10ユーロ/1300円くらい)を食べながらひいきのサッカーチームの話に唾を飛ばすのが楽しみだったのが、ひと昔のスペインでした。
ホワイトカラーはレストランで同じことをしていました。食後のコーヒーを席を立ってバルのカウンターで飲むと、リキュール一杯をオヤジ(店主)がサービスしてくれました。空いたテーブルには次の客が座れるので、オヤジには良い客なのです。カウンターで一杯やってると政治談議が始まっていました。それも昔話となりました。何故って? まだ新内閣ができていないのです。
聖母カスティージャ教会
12月末の総選挙結果は国民党(右派)、社会労働者党(左派)、ポデモス党(極左派)、市民党(中道派)で議席を分け合いました。国民党のラホイ現首相は過半数の賛同を得るのは無理とみたので、首相選には出ませんでした。社会労働者党のサンチェス書記長が立候補しましたが、賛成は三分の一ちょっとでした。首相選は一回目は議席の過半数、2回目は賛成数が反対数を上回ることですが、2回とも反対されました。そこにたどりつくまでのひと月間のサンチェスの茶番劇は選挙宣伝をやってるようで、かなりの国民がうんざりしました。
初めから結果は分かり切っていたのに、何のためにひと月も無駄にしたのか?です。国民党と社会労働者党の連立内閣でやろうと呼び掛けているラホイにサンチェスは全く耳を貸しません。4月末までに組閣できないと6月末に再選挙です。再総選挙費用捻出に特別予算を組まないとスペインの台所には金の余裕はありません。それに再選挙結果が今回と同じにならないとは誰も保証できません。ラホイもサンチェスも首相の椅子は諦めて、後任に譲ったほうが賢明です。