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音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

レヴァインのメトへの復帰、オープン・エンドに

2011-12-09 | お知らせ・その他
こちらの記事のコメント欄でKew Gardensさんがお知らせして下さっている通り(Kew Gardensさん、ありがとうございます!)、
レヴァインがメトでの指揮に戻って来る時期が、とりあえず永遠未定というステータスになることになりました。
もちろん、このまま二度とメトの指揮台に戻って来ない可能性もあり、、、、ということは、
先シーズンの最後の『ワルキューレ』の公演(HDの公演)が彼のメトでのラスト・パフォーマンスになってしまった可能性もあります。

以下、12/9に発表されたメトからのオフィシャルなプレス・リリース(レヴァインからのステートメントを含む)の訳です。

* メトからのプレス・リリース *

音楽監督ジェームズ・レヴァインは、八月に負った脊椎への傷害の完治に専念するため、
今シーズンの残り、および2012-13年シーズンの指揮を辞退することとなった。
レヴァインは夏季休暇中に転倒後、緊急手術を受け、今シーズンの初めの数ヶ月間に予定されていた公演からの降板を余儀なくされている。

脊髄の損傷が深刻であるため、レヴァインの担当医らは術後回復のプロセスは時間のかかるものになるだろうと述べており、
9月からずっとレヴァインはリハビリ施設に入院しているが、間もなく退院の予定である。
この数ヶ月間で症状はかなり良くなったものの、正確にいつ完治し、仕事に戻れるかは不明。

ゲルブ支配人との会談を経て、レヴァインは今シーズンの残りすべてと2012-13年シーズン中は指揮をしないことを決断した。
レヴァインがそれよりも早く指揮が出来るようになる可能性はあるが、彼が指揮予定だった演目を代わって引継ぐ指揮者を確保する為、
来シーズンに関する決断を今行う必要があるとの判断からである。メトの2012-13年シーズンとキャスティングは来(2012)年2月に発表される。

“これはジム自身にとっても、カンパニーにとっても、また彼の多くのファンにとっても、大きな打撃であり、
最終的には彼がメトに戻って来れるようにしておきたいと考えています。”とゲルブ支配人。
“休みを延長することで完治に専念してもらう一方、来シーズンに向けてメトが代わりの指揮者を選ぶにあたって最善の選択が出来るよう配慮したつもりです。”

レヴァインからのステートメントは最後を参照。

また、回復状況をみながら、コーチング、プランニング、リンデマン・ヤング・アーティスト・デヴェロップメント・プログラムの芸術上の指揮監督など、
指揮以外の音楽監督としての任務に追々復帰する予定である。

今シーズン既にレヴァインに変わって『ドン・ジョヴァンニ』、『ジークフリート』、『神々の黄昏』といった新演出作品を指揮した・することになっているルイージが、
4~5月に上演されるリング・サイクルを指揮する。
(ただし、『ジークフリート』の最後の二公演と、『神々の黄昏』の5/9の公演および5/12のマチネ公演以外。これら4公演の指揮者は近いうちに発表される予定。)

5/20に予定されているカーネギー・ホールでのメト・オケの演奏会を代わりに努める指揮者も追って発表される。

ルイージはこれまでの予定通り、3/26に初日を迎える新演出の『マノン』と4/6から始まる『椿姫』のリヴァイヴァル上演で指揮を執ることになっているが、
『椿姫』のランの最後の四公演(4/21, 25, 28 & 5/2)はリング・サイクルの上演との兼ね合いから別の指揮者が代役を努める。
『椿姫』四公演の指揮者も後日発表する。

* 音楽監督ジェームズ・レヴァインからのステートメント *

今年の夏の初め頃、私は狭窄(きょうさく)症と呼ばれる症状によって大変な痛みに苦しめられており、その状況を改善するために3つの手術を腰・背中に受けました。
狭窄症については手術は成功し問題は取り除かれ、痛みを感じることももはやありません。
しかし、メトでのリハーサルの開始をたった一週間後に控えた8月末のある日、私は転倒して脊髄を損傷し、緊急手術が必要となってしまいました。
幸運なことに、先に受けていた三つの手術の結果を損なうことにはなりませんでしたが、
それ以来、私はずっと病院でリハビリのプログラムと徹底したフィジカル・セラピーを受けています。
三ヶ月が経過し、来週の頭にようやく自宅に戻ることが可能となりましたが、リハビリとセラピーは外来患者として継続していくことになります。

脊髄の損傷は回復するのに長い時間がかかることで良く知られております。
誰一人として他の誰かと同じスピードで回復することはなく、普通、リハビリは長期に渡ります。
私の医師もセラピストも回復状況にはおおいに満足してくれていますし、私にも良い結果が感じられてはいますが、
完治というにはまだ遠い状況であることに、私自身、非常なフラストレーションを感じております。
しかし、治療の初期段階でみられた回復の度合いを見るに、時間と継続したセラピーがあれば、順調な予後になるであろうと医師たちは考えています。

メトはかなりの余裕をもって事前にシーズンを計画しなければならないため、
今の私にはいつ実際に指揮をすることが出来るのか、ということをはっきりと伝えることが求められています。
これまで、ピーター・ゲルブおよびメトのスタッフたちと、長きにわたるミーティングを重ね、この件について話し合ってまいりました。
そして、後日変更が必要とされるような指揮予定を発表することは、
オーディエンスの皆様にも、またメトのカンパニー全体にとっても、きわめてアンフェアである、という結論に我々は達しました。
私自身も、シーズン内容が発表され、チケットが売れてしまった後で公演から降板するというリスクを犯すことは本意ではありません。
そのことを念頭におき、このような結果は私の望むところではなく残念ではありますが、
自らの務めを完全にこなせるという確信が持てるまでは指揮の予定を立てるべきではないだろう、と考えるに至りました。
2012-13年の予定の調整も最終段階に入っており、代わりに指揮をすることが出来る最善の指揮者とはすぐにでも契約交渉に入らねばなりません。
症状が回復すれば、再び指揮に立てるものと信じておりますが、それがはっきりしない状態で発表をするようなことも避けたいと思っております。
このような結論になってしまったのは大変残念なことではありますが、これが正しい選択であると私は確信しております。

ポジティブな事柄の方に目を向けると、指揮以外の音楽監督としての責務に戻れることは私自身大変楽しみにしております。
ピーター・ゲルブと協力しながらの長期的なアーティスティック・プランの調整、
今後の公演プランのためのアーティスティック部門スタッフとの共同作業、歌手へのコーチング、
リンデマン・ヤング・アーティスト・デヴェロップメント・プログラムの参加者への指導などは引き続き行っていく所存です。

これまで、しばしば急な要請にも関わらず、私の仕事を変わって請け負ってくれたファビオ・ルイージをはじめとする指揮者には深い感謝の念を表します。
また、ファビオが首席指揮者という重要な役柄を通して、メトのカンパニーの中で、よりパーマネント(訳注:継続的&常設的)な存在になったことを大変嬉しく思っております。

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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Madokakipさま (Kinox)
2011-12-12 09:35:43
まぁ! 悲しんでいいのか、喜んでいいのか、あわてていいのか困るニュースですね。
もう随分騒がれていますが、まだ次を考える段階じゃないということなのでしょうか。
> 指揮以外の音楽監督としての責務
というのは、演出家と音楽家の間をとりもったり若い客演指揮者にアドヴァイスしてあげたりは入らないんでしょうか。作品の理解が深く発言力がある人がいれば、Madokakipさまが仰ったようなカウフマン爆発事件は避けられるかもしれないのに。でもそういえばレヴァインはネガティブなことは直接面と向かって言えないで人を通したり、後で電話で言ったりするような人だったんでしたっけ。
椿姫、見に行く日がルイジじゃなくなったのはちょっと嬉しいような。デッセとの相性もいいラングレだったらいいなぁ。
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一抹の淋しさ (kiyaki)
2011-12-12 11:17:24
メトと言えばレヴァインという時代にオペラにはまった者としては残念ですし、淋しいですね。
オペラは、本当に国際的なものですが、スカラ座もバレンボイムになっちゃって、もうアバドとかムーティの時代には戻れないかんじ、ベルリン国立歌劇場の支店になっちゃったみたい....歌手だってやっぱりベルリンつながりが出張ってきてますし。
今シーズンはじまったばかりですけど、来シーズンは「ローエングリン」、カウフマン、ハルテロス、パーペ、ヘルリツィウス、指揮はバレンボイム、演出はグートだそうです。パーペは国王ではなくテルラムントということですよね?
演出も共同制作であっちもこっちも同じのやってるし、劇場の個性がなくなってきてますね。
参考までに最近のスカラの開幕公演は、
2006アイーダ、2007トリスタンとイゾルデ、2008ドン・カルロ、2009カルメン、2010ワルキューレ、2011ドン・ジョヴァンニ、2012ローエングリン
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Kinoxさん (Madokakip)
2011-12-12 17:35:37
>作品の理解が深く発言力がある人がいれば、Madokakipさまが仰ったようなカウフマン爆発事件は避けられるかもしれない

Opera Newsに掲載されていたカウフマンのインタビューにあったと思いますが、
『ワルキューレ』でルパージュが、当初、舞台上に設定した大きな溝(舞台前方と後方の間に意図的に作った溝みたいなもの)は
神とそれ以外の存在を分ける境界線であるから、君は溝の前に来て歌っちゃいけないとか、わけのわからないことをカウフマンに言っていたそうなんですね。
カウフマンもまだ去年はキャスリーン・バトル化する前だったからか、大人しく言うことを聞いて、
こんな客席から距離のある奥まったところから歌いにくいな、、と思いながらも歌い続けていたらば、
レヴァインが、“なんか、君、遠いね。そんなところで歌ってないで、もっと舞台の前に来なさい。”と助け舟を出してくれたそうです。
ルパージュの言う神と人の境界線とやらも、レヴァインの一言の前には力尽きたようです(笑)
こういう歌唱や演奏の妨げとなるような演出の暴走を止められる彼のような人がいるといいですよね。
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keyakiさん (Madokakip)
2011-12-12 17:36:39
同じく、私もとても寂しいです。
特に私は鑑賞しているオペラの公演のほとんどがメトのそれで、
この公演、あの公演、要所要所にレヴァインがいるのがずっと普通のことでしたから、、。

ルイージは力のある指揮者だとは思いますし、さらに若い層ではネゼ・セギャンとか出てきてますが、
レヴァインが倒れて、ルイージが代わりに指揮台に立つ回数が増えるにつれ、
彼の優れた点と同時に、そのウィーク・ポイントもよく見えるようになったように思いますし、
レパートリーによって、かなりの得手、不得手も感じられ、
例えばHDの『ジークフリート』なんかは、音楽監督が手がけた演奏としては
私ならアンダーパーに分類したくなる内容の演奏でした。
ゲストで来て、いくつかの演目、いくつかの公演で良い結果を出すのと、
多岐にわたるレパートリーでコンスタントに一定以上の結果を出すことは全く次元の違うことで、
ましてや40年もの長きに渡って後者を成し遂げて来たというのは、本当にすごいことなんだ、と実感します。

>演出も共同制作であっちもこっちも同じのやってるし、劇場の個性がなくなってきてますね

本当に、、、新演出って言ったって、他の劇場で先にかかったものは
もうYouTubeで観ましたけど、、という感じで、全然新鮮味のないことが往々にしてありますよね。

>最近のスカラの開幕公演は、
2006アイーダ、2007トリスタンとイゾルデ、2008ドン・カルロ、2009カルメン、2010ワルキューレ、2011ドン・ジョヴァンニ、2012ローエングリン

ワーグナーの方がヴェルディよりも多い!!!
確かに最近スカラは良くワーグナーをうってるな、、と思ってましたが、
こうやって改めて見ると、驚きであり、また残念でもありますね。
イタリアもので良い作品は本当に一杯あるのに!!!

オケのサウンドは個々の劇場で違っていて、これもオペラを聴く時の楽しさの一つだと思うんですが、
演出と同様に、こういうベルリン国立歌劇場スカラ出張所みたいなケースが多くなってくると、
オケの個性も段々均されていってしまうのかな、、と心配になります。
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