Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

TURANDOT (Sat Mtn, Nov 7, 2009)

2009-11-07 | メトロポリタン・オペラ
注:この公演はライブ・イン・HD(ライブ・ビューイング)の収録日の公演です。
ライブ・イン・HDを鑑賞される予定の方は、読みすすめられる際、その点をご了承ください。

10/28の『トゥーランドット』シーズン初日に、オペラハウス入りしながらも、
気管支炎のため、タイトル・ロールからの降板を決めたグレギーナ。
約10日後の公演の同役でメト・デビューを果たす予定だったリーズ・リンドストロームに
代役に入ってほしいとメトから連絡があったのは開演の20分前だったそうです。
いくらトゥーランドット役は第一幕に出番がないといっても、
二幕の開演をぎりぎりまで伸ばして役をさらっていたというのも道理です。

その日の公演をシリウスで聴いた感想はすでにあげましたが、
これはHDが微妙になったな、と思いました。
まだ歌唱に練れていない部分やオケとのコンビネーションの面で問題があるけれども、
声も見た目もフレッシュでよりトゥーランドット姫に適性のあるリンドストロームに賭けるか、
トゥーランドットのメイクをつけるとまるでSawのマスクのような怖い見た目と
最近とみに高音が苦しく音がぶら下がりがちな歌唱、
けれども、数々の舞台を踏んで度胸もあり、ある意味ではより安全なグレギーナの方をとるか。

初日の後、公演に復帰したグレギーナの歌を聴いたヘッズがあげた失望の声と、
”彼女にやらせてみたら?”というリンドストローム擁護派の声が意外と大きいのもあって、
私はもしかしたら、これはまじでリンドストロームになるかもしれない、、と期待していたんですが、、

当日、プレイビルを見ると、歌手の交代を知らせる紙片はなし。
なんだよー、歌うのかよー、グレギーナ、です。
もしかすると、初日のリンドストロームの出来が意外と良かったのが
かえって彼女に脅威を与え、意固地にさせてしまったのかもしれません。

”あたし、絶対歌うわよ!!”



逆に、本人は降りることも考えていたのだけれども、
舞台をつとめるように強く勧めた人がいた(誰!?そんな余計なことをするのは!)というような話もあって、
真偽のほどはわかりません。
わかっているのは、彼女がHDでトゥーランドットを歌うことになってしまった、ということだけです。
最近私は『トゥーランドット』あたりのパワーホース的演目の感想を書くのがすごくしんどく感じることが多いです。
(最近の例では『トスカ』とか『アイーダ』とか、、。)
それこそ何度も繰り返しているので、自分でももう書くのが嫌なんですが、
演出のことを脇に置いたとして、歌唱だけとっても、観客を熱くさせてくれるような歌を
このあたりの演目で聴かせてくれる歌手が本当に、ほんとうに少なくなってきているからです。



いかに優れているかどうかに関係なく、長きにわたって舞台にかけられてきたという理由だけで、
古参の演出を片っ端から新しいものに変えたがっているように見えるゲルプ氏のもと、
シェンク演出のリングのような素晴らしいものまで息の根を止められてしまった今、
お釈迦にされてしまうのではないか、と私が非常に恐れているのが一連のゼッフィレッリの演出作品で、
実際、今シーズン、早速彼の演出の『トスカ』に変わって
ボンディがとんでもない置き糞をメトの舞台に残していったのは記憶に新しいところです。
そして、次あたりにこの『トゥーランドット』を毒牙にかけるつもりなんじゃないか、と気が気でないんですが、
今日の公演を観てつくづく思いました。
この『トゥーランドット』の演出だけは絶対に絶対に変えてはいけない!!と。
もし、この演出に手がかかるようなことがあったら、私は本気でメト鑑賞をやめてしまうかもしれません。



というか、今日の公演で、この演出とセットがなかったら、
ほとんど観るもの&聴くものは何もない、とまで思いました。
幕間にオペラハウス内に設置されたスクリーンでHDと同じ映像を見ていたのですが、
そこで次の幕のためのセットが組まれる様子が流れていて、
前にあるプロップのせいで観客にまず見えっこないような部分の柱やスクリーンの装飾部分にまで、
信じられないほどの細かい手間と細工が施されているのを見ると、
この演出を作り上げた人々の努力とこの演出が出来上がった時にどんな誇らしい思いだったろう、という思いがこみ上げてきて、
目新しさのため、とか、ヒップな若年層を集めるため、といった目先の理由のもとに
ゲルブ氏がこの演出を引き上げることのできる権利なんてどこにもないんじゃないかと思えてきます。
そして、さらにこんなすごいセットを作り上げられる力を持ったメトのスタッフに
あの訳のわからないボンディ『トスカ』のセットを作らせたのかと考えると、
その冗談のような事態に、情けなくて大笑いしたい気分になってきました。



この演出のセットや衣装やプロップの素晴らしさに全くもって見合ってないのが今日の歌と演奏です。
唯一、歌唱陣できちんと役に必要な歌を歌えていたのはリュー役のポプラフスカヤ(↑)でしょうか。

以前にも書いた、私がこれまでに聴いた最高のリュー、ヘイ・キョン・ホン姉さんの、
歌があまりに自然に流れ出てくるので、まるで普通に言葉を喋っているように錯覚してしまうほどの歌唱と、
優しく地味めな感じのするリューの性格をそのまんま声で表現したような美しくて軽く、かつ、リリカルな声、
そして、”お聞き下さい、王子様 Signore, ascolta"の絹の糸が空気に溶けていったような
あの最後の高音は今でも忘れられません。
フレーニとかスコットとかあまたの名歌手がこの役を歌っていますが、
ホンさんのあの時の歌唱に勝る歌唱を録音(生もスタジオ録音も)で聴かせている人は私の知る限り一人もいないです。
フレーニはライブであの高音の後に大げさな泣きを入れたりしている時があるのですが、
ホンさんのあの美しい最後の高音はどんな泣きよりも雄弁で、
実際、彼女はそこで下手な泣き芝居を入れるような無粋な真似をしなかったのもポイントが高い。
そして、アジア人であることが見た目にも思いっきりはまるという大変幸運な例で、
あれ以上にパーフェクトなリューはこの先観れ・聴けないんじゃないかな、と思います。

そんなホンさんのリューに比べると、私の理想と好みからして、
ポプラフスカヤの声は若干リューには逞しく、やや鋭い響きがあり、
かつ、やっぱりまだ”歌っている”感じがする域を完全には出ていないのですが、
それでも、唯一今日のキャストの中で、役を通して作品のドラマを感じられたのは彼女だけです。
特に第三幕のアリアの前の拷問に耐えられなくなって
ついカラフの名前を口走りそうになってしまう自分と葛藤する場面の表現はすごく良かったと思います。



問題のグレギーナは、私が恐れていた最悪の事態だけはなんとか避け、
今の彼女の声の状態や最近の歌の不安定さに鑑みれば、よく持ちこたえた方だとは思います。
ただ、裏を返せば、”こんなすごい歌を歌えたのか!”とか、
”こんなすごい歌手だったんだ!”とか、”ああ、優れたトゥーランドット役の表現だな。”とか、
そういうことは一切感じられなくって、限りなく歌っているだけに近い歌唱です。
というか、少なくともここ数年の彼女は、あまりに声と技術両方に制限があるために、
思うような役の表現が出来ているようには思えません。
ただただ、まだかろうじて残っているでかい声にしがみついて頑張っている、といった感じで、
彼女はキャリア的に非常に難しい地点に来ているのではないかと思います。
彼女のように、ドラマティコの役を得意として来た歌手というのは、
気をつけないと、引き際がとても醜くなってしまう可能性があると思います。
彼女の全盛期の頃、失敗なんか起こりっこない!というような調子で、
強引ではありましたが、アクセル全開で飛ばしまくるスリルのある歌を聴いて来ただけに余計、
こんな風に自分の力に役の方を合わせるような歌唱は聴いていて辛いものがあります。
(12年前の彼女のサントゥッツァは素晴らしかったし、その後も『トスカ』、『ナブッコ』などで彼女の歌を堪能しました。)



厳しさで全然負けてないのがジョルダーニのカラフ。
っていうか、そんなことはもう3月の125周年記念ガラの”誰も寝てはならぬ Nessun dorma"
の歌唱でわかっていたことなんですけれども。
彼の低音域が弱い(というか、存在しない、といった方がいいかもしれない。)のは
もう周知の事実なのですが、あろうことか低音のみならず高音もそんなに魅力的ではないし、
あとはこの役に必要な声のテクスチャーやウェイトの不足など、問題が山積みで、
はっきり言うと、彼はこの役を歌えない、と言ってもいいのではないかと個人的には思います。

私の今年のチケットの購入の仕方のせいもあり、
今シーズンは、サブスクリプションをストップしたあるお客さんの席をほとんど丸々引き受けるような形になったために、
サブスクリプション継続中の隣席のおば様と結構な頻度で顔をあわせています。
今日もそのおば様が隣にいらっしゃいました。
私はおば様のことを、年齢のせいもあって、勝手にキャリアの長いヘッズだと思い込んでいて、
彼女が”どうして今日みたいなテノールしかいないのかしらね?
世の中、これだけたくさんテノールがいるんだから、もうちょっとましなのがいるでしょうに。”とおっしゃった時、
びっくりして、”ええっ!!例えば誰とか??”と詰め寄ってしまいました。
あまりの私の勢いに、”えっと、ヴァルガとか何とか言う人とか、、”と縮み上がるおば様。
”ヴァルガスですって?とんでもない!ヴァルガスなんて、ジョルダーニよりもう一つ声が軽いですよ。
この間、『ファウストの劫罰』でヴァルガスを聴きましたが、
声の重い軽いを言えば、同じ役を昨シーズン歌ったジョルダーニの方がまだ重い位です。
いいですか?カラフ役は、高音が楽々に出ながら、しかしロブストな声質と声の重さが必要なんですよ。
例えばパヴァロッティは高音はさすがですし、あれだけ素晴らしい声を持っているので聴かせてしまいますが、
どちらかというと本来は軽めの声である彼は、カラフ役に向いた声質ではないと個人的には思いますし、
実際全幕は声が重くなり始めてから歌っていたと思います。
声の質で言えばドミンゴの方が向いていると思いますが、彼は高音がパヴァロッティのようには出ない。
この両方を満たしているのは歴代でもコレッリくらいで、
今のオペラの世界にはこの役を歌える人はほとんどいない、というのが私の意見なのです。
(カレーラスは軽くスルー。)
ですから、どこかにこの役を歌える人がいるなら是非名前を教えてください!!”
私がそういいながらにじり寄るので、おば様は怖くなったのか、
”私、オペラに通い出したのはここ二年くらいのことなので、声に種類があるなんて思いもしなかったわ。
思いのほか、大変なことなのね、、。”とたじたじ。
あら、やだ!それを最初から言ってくださればこんな風に怖がらせることもありませんでしたのに。
でも、そうなんです!カラフ役を全幕で歌うのはそんなに簡単なことではないんです。



ヴァルガスより声の重いジョルダーニでも、せいぜいリリコが限度で、
カラフのような役からは手をひいた方がいいと、
ウェハースのようにふわふわで、スリルも興奮もない彼の歌を聴いて思うのでした。
だって、本人がどれだけ一生懸命歌っても、この声では全然こちらの心に訴えかけてこないんですもの。
二幕の最後、トゥーランドットの掛け合いのところで出てくる、
”No, no, Principessa altera! Ti voglio ardente d'amor!"のardenteのdeも、
無理矢理絞り出しているだけで(かつピッチが狂っている)、
音とはいっても、”音楽”の”音”に数えるのは躊躇されます。
最大の問題はこれらの技術や自分の欠点をカバーアップすることに本人が手一杯になっている点で、
そういう事態に陥ってしまうということが、そもそも、
彼はこの役を歌うべきではないということを示しているのではないかと思います。



これで歌手のことを語りつくしたかと思ったら、まだまだ!
ティムール役を歌ったレイミーを忘れてはなりません。
彼はいくら年老いてもやっぱり凡百の歌手とはクラスの違う歌手であるということは、
例えばリューの亡骸に突っ伏して歌う場面の長く延ばした音のセンスの良さなどにキラリ!と見えたりするんですが、
むしろ、ドラマ的に割りと平坦な部分での歌唱に、痛々しいまでの老いが現れています。
昨年レポレッロであんなに闊達な歌を歌っていたのになぜ、、という気もしますが、
確かにそろそろ多くのヘッズが言うように、引退を考える時期(とっくに?)に来ているのかもしれません。
観客にとって、彼のような素晴らしいキャリアを持つ歌手が半ばカメオ出演のように
こういう役で現れてくれるのは楽しい部分もあるのですが、
観客に楽しい部分よりも見ていて辛い部分の方が勝つようになったら、それは考え時、ということなのかもしれません。



年老いたつながりで言うと、皇帝役のチャールズ・アンソニーは1929年生まれの現在80歳!!
メトの舞台の最多登場回数記録保持者で、このHDの時点で、2900公演を悠に越え、
(この日が2983公演目か2938公演目のどちらかだったと思いますが忘れてしまいました。)
現在3000公演に向け、驀進中です。
私が生まれるまだ前の、ニルソンとコレッリが共演したメトの1966年の公演(メータ指揮)のCDを持っていますが、
ポン役 チャールズ・アンソニーとなっていて、いつから歌ってるのか、この人は!って感じなのですが、
メトの舞台に彼が初めて立ったのは1954年のことで、以来、ずーっとメトの脇役を勤め、
NYのオーディエンスにそれはもう深い愛と敬意を持たれている歌手です。
(いくつかの写真に見られる黒い衣装と白いあごひげをつけたおじい様が彼です。)
私も今まで本当にたくさんの公演で彼の姿と声を拝見・拝聴してきました。
チャールズ・アンソニーとはちょっと変わった名前ですが、
彼の苗字は実はカルーソー(なので、フル・ネームはチャールズ・アンソニー・カルーソー。ばりばりのイタリア系です。)で、
エンリーコ・カルーソーと比較されるから、苗字を落とした方がいい、というビング旧支配人のアドヴァイスを受けて以来、
今の名前で通すようになったそうです。
私の近くに座っていたご夫婦は、彼が誰かというのを知らなかったうえ、
よぼよぼ(今や姿も声も、、)なのは演技だと思っていたようで、
カーテン・コールでも全く同じ様子なのを見て、”あ、本当に高齢なんだね。”と語り合ってました。
でも、レイミーと違って、誰も彼を辞めさせろ、とは言いません。
もはや、ここまで来たら、とことん頑張れ!という意見がヘッズの中にも多く、
それは世界で主役級を歌って来た歌手とメト・オンリーでコンプロマリオ系歌手として頑張って来た者の
立場の相違なのかもしれません。



最後にふれておきたいのが指揮とオケ。
最近、歌手だけでなく、やたら指揮者にも若くてルックスのいい人がメトに登場するようになってきたように思うのですが、
前から言っているように、指揮者は顔で指揮するわけではないんですから
(しかも、そもそも演奏中はずっと向こうを向いてるわけで。)
もうちょっときちんとオペラの経験を摘んだ優秀な指揮者を連れてきて欲しいと思います。
このラトヴィア出身、1978年生まれのアンドリス・ネルソンス(↓ 下の写真)という指揮者は、
どれほどの音楽性を持っているのかわかりませんが、
(テクニックがある程度ともなってこそ、音楽性の話ができるというものです。)
こと、テクニックに関して言うと、まだまだなところが多いし、メトのオケを掌握できてません。

特に、彼が頻発するのは、窓拭き(タクトを扇の端をなでるようにくるくる回している)と
じゃんけんゲーム(空いている手でグーパーグーパーと拳を握り締めたり開いたり、、)。
特に前者はどこにビートがあるのか、さっぱり不明。
『トゥーランドット』は割とメト・オケが得意とする演目だと思うのですが、
今日ほどまとまりを欠いている演奏は珍しい。
他の日の公演をシリウスで聴いても、崩壊していた部分が少なくないので、
一過性ではなく、慢性的にこの指揮者に技術が足りないと見ます。
2006-7年シーズンで、突然予定されていた指揮者が抜けた穴を埋めるため、
二回だけルイージが登場して『トゥーランドット』を振った時には、
すごくいい演奏を聴かせていたオケなのに、、。
これが指揮者の実力の違いってことなんでしょう。
(けれどもそのネルソンスが、2010年のバイロイトの『ローエングリン』の指揮をする予定らしいと聴きましたが、
本当なんでしょうか、、。あんな指揮で、、、。)



冴えない主役二人、現時点では少なくともこの作品を指揮するには未熟な指揮者のせいで全くらしくないオケの演奏、
それでもHDを見る価値があるとすれば、それはひとえにゼッフィレッリの演出、セットに衣装や小道具。
見ているだけで、スタッフの努力の結晶としての神々しさに心を打たれるはずです。
このセットに見合う歌手よ、早く登場しておくれ。

Maria Guleghina (Turandot)
Marcello Giordani (Calàf)
Marina Poplavskaya (Liù)
Samuel Ramey (Timur)
Charles Anthony (Emperor Altoum)
Joshua Hopkins (Ping)
Tony Stevenson (Pang)
Eduardo Valdes (Pong)
Keith Miller (Mandarin)
Anne Nonnemacher, Mary Hughes (Handmaidens)
Antonio Demarco (Executioner)
Mark DeChiazza, Andrew Robinson, Sam Meredith (Three Masks)
Sasha Semin (Prince of Persia)
Linda Gelinas, Alexandra Gonzalez, Annemarie Lucania, Rachel Schuette (Temptresses)
Conductor: Andris Nelsons
Production: Franco Zeffirelli
Set design: Franco Zeffirelli
Costume design: Anna Anni, Dada Saligeri
Lighting design: Gil Wechsler
Choreographer: Chiang Ching
Stage direction: David Kneuss
Grand Tier C Even
ON

*** プッチーニ トゥーランドット Puccini Turandot ***

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81 コメント

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Metのトゥーランドット (jun)
2009-11-12 15:47:32
Metのトゥーランドットといえばやはり日本で何度も廉価発売されているドミンゴ&マルトンDVDが有名ですね。
でも私をわくわくさせてくれるのは1961年のストコフスキー指揮のライヴ盤です。
この時の演出はどんなものだったのでしょう?
この公演でもポン役でアンソニー氏出演されています。
数々の名歌手と仕事されたでしょうから、現在の歌手についてどう思われているか伺いたいものです。

>このセットに見合う歌手よ、早く登場しておくれ。
例えばホセ・クーラのカラフは?もう高音だめですかね?
トゥーランドットではアレックサンドラ・マルクがよく数年前まで名前見ましたが現在はどうでしょう?

グレギーナ近頃あまり評判よくないですね。
HDマクベス夫人も強引でしたし、やはりスケールが大きいし体格もあるので強いキャラ求められるのかもしれませんが本来の彼女はアメーリアとかマノン・レスコーとかリリカルな部分もある役の方があっているのかもしれません。
私は彼女東京でのピアノ伴奏付きのリサイタルで歌われたカッチーニのアヴェ・マリアの息の長い美しい歌唱が忘れられません。

レイミーに関しては同意見です。あのつばめHDの時も声が震えちゃって無惨でしたもんね

グレギーナ (Boni)
2009-11-12 17:06:43
4月にグレギーナのトスカを観たのですが、パワーの低下は明らかでした。

>強引ではありましたが、アクセル全開で飛ばしまくるスリルのある歌

そうなんですね。
彼女の魅力は何といっても、「高音域がフラットになるからってそれが何なの!誰がこんな声だせるってのよ?」って感じで突き進む、あのド迫力の歌だったのですが。
全盛期に歌ったアビガイッレ役を思い出すと、ちょっと寂しくなります。

>この両方を満たしているのは歴代でもコレッリくらいで

もうひとりのフランコ、暴走機関車ボニゾッリは如何でしょう?
もちろん敢てお勧めはいたしません。

>カレーラスは軽くスルー

えええ、、可哀想に。
ウィーンで収録された映像で彼の演じたカラフは、思わず微笑んでしまうほど可愛らしいのですよ。
後退気味の前髪が、ちょっとキューピーちゃ(以下略
こんなです! (Madokakip)
2009-11-14 14:03:27
 junさん、

>1961年のストコフスキー指揮のライヴ盤

ああ!!それ、欲しいんですよー。
同じニルソン&コレッリペアに、リューがアンナ・モッフォなんですよね。

>この時の演出はどんなものだったのでしょう

こんなだったみたいですよ。
ストコフスキーのリハ中の写真もあります。

http://www.metoperafamily.org/operanews/issue/article.aspx?id=4931&issueID=323

>アンソニー氏

ものすごくシャイで口下手な方らしいんですね。
私は化粧室に行っていたのかな?
それとも、幕の直前だったのか、
オペラハウスのモニターで見逃してしまったのですが、
このHDでメトの長寿歌手ということでフィーチャーされ、
アンソニー氏へのインタビューのコーナーがあったそうです。
(ちなみにこの日のホストはラセットです。)

>現在の歌手についてどう思われているか伺いたいものです

、、、、
多分、聞かれたアンソニー氏もお困りになることでしょう。

>ホセ・クーラのカラフは?もう高音だめですかね?

実は書きながらクーラの調子の良いときはどうだろう?と思ってました。
雰囲気は現役のテノールの中ではぴったりですよね。
高音はどうなんでしょうね?
何年か前に見た『トスカ』のVittoria!とか、
全っ然記憶にないですねー(笑)

>トゥーランドットではアレックサンドラ・マルク

そうですね。
ただ、この役を歌う人の回転ってすっごく早い気がします。
メトでも1シーズンだけ歌ってそのまま帰ってこない人がほとんです。
なので、ニルソンみたいに長い間この役を歌っえる
(しかも最高の評価を手に入れられる)なんて、
驚異的です。

>グレギーナ近頃あまり評判よくないですね

声の衰えが著しいですね、最近の彼女は。
もともと彼女は高音を柔らかく出すことが出来ないですし、
やろうとすると、舌が引っ込んでうがいをしているような妙な音になることが多かったですよね。
なので、彼女のアイーダの歌唱なんかは昔から厳しいものがあると感じていました。
リリカルな役も、繊細に歌わなければならない高音がなければ大丈夫なんですけれども、
役を選ばなければならないかもしれないですね。
アメーリアは確か新国立劇場で聴いたことがあったと思いますが、
悪くなかったと記憶しています。

ただ、彼女は幸か不幸か、他にドラマティコのソプラノが不毛の時代に活躍したので、
ずっと、その苦手だった繊細な音を克服できずに終わってしまったような気がします。
そんな音がなくても、あのド迫力の歌唱があれば、
観客は狂喜しましたから。

それが、声から迫力が抜けて来てしまった今、
レパートリーを移行する点でネックになっているかもしれません。

でも、彼女は以前からベル・カントものを歌いたがってましたよね。
椿姫とかノルマとか、、。
ノルマはメトで歌いましたが、ちょっと彼女の雰囲気はヴィオレッタじゃないよなあ、、
そんな逞しい二の腕で、死に近い病ってことはないだろう、、(笑)と思います。

>カッチーニのアヴェ・マリア

私もそのリサイタル、行きましたよー!
あれはもう何年前のことでしょう?
あのあたりをピークに、少しずつ、下り坂に入ってしまったのかな、という気がします。
自問自答 (Madokakip)
2009-11-14 14:27:16
 Boniさん、

>4月にグレギーナのトスカを観たのですが、パワーの低下は明らかでした

やはり、そうでしたか、、。
後、最近悪い時の悪さが半端じゃないらしいんですね。
こうやって、大きい波が出ることも、ちょっとやばい兆候ですよね。

>「高音域がフラットになるからってそれが何なの!誰がこんな声だせるってのよ?」

そうです、そうです(笑)
もう、こっちは、”ははーっ!”と言って聴くしかないという、、。
junさんへのコメントにも書きましたが、
彼女はキャリアのピークの時でも、
繊細に出さなければならない高音、これが苦手でしたよね。
でも、他の部分があれだけ迫力があると、
ま、いっか、、、と思えましたよね。

>全盛期に歌ったアビガイッレ役を思い出すとちょっと寂しくなります

本当に!!

>暴走機関車ボニゾッリ

私、恥をかなぐり捨てていいますと、
ボニゾッリ、生でも録音(全幕)でも一度も聴いたことがないんですよ。
なんか、オペラを聴き始めた頃、本なんかに、
”イモくさい”なんて書かれていて、
イモなテノールは聞かなくていいや、、と、そのまま通過してしまったのです!!
今だったら絶対ありえないですけれども、批評家のいうことを聞くなんて。

今、You Tubeで聴いてますが、いいではないですか。
イモ万歳!!です。

http://www.youtube.com/watch?v=LJ1TtdmDXA0&feature=player_embedded#

これなんか強烈過ぎて笑ってしまいました。
(この映像、何なんでしょう?MTVのビデオクリップじゃあるまいし、、。)
今こんな風にこの曲を歌えるテノール、少ないですよ。
イモである事実なんて、小さな問題です。
ありがとうございます。
他にも彼の歌、色々聞きたくなってきました!

で、自分で”他に歌える人はいないのか?”なんて質問をふっておいて何ですが、
その後、思い出した人がいました。
ジュゼッペ・ジャコミーニです。
彼がスカラ座とロシアで行ったコンサートで歌った”誰も寝てはならぬ”、
これがすっごく良いんです。

(パリで歌った時の映像がありましたのでご参考に、、。)

http://www.youtube.com/watch?v=_lLu0PuzniI


私の中では、カラフに最適の声はコレッリ、ジャコミーニ、この二人が双璧で、
もしかしたら、そこにイモが混じりこむ可能性が出てきた、といったところでしょうか?

http://www.youtube.com/watch?v=KDC6q75Icbo

でも、こちらの歌はなんか微妙ですね、、↓
キャリアの後の方だからかな、、
音程も不安定ですし、自分の思うように歌えていない感じがしますね。

http://www.youtube.com/watch?v=xGOf2d5yieo
Unknown (jun)
2009-11-15 18:29:33
今1961年盤は入手難なんですね!残念です。
メトが出したCDでも選ばれるくらいの白熱火花散るといったわくわくものライヴです。
http://www.amazon.com/Puccini-Turandot-Metropolitan-Broadcast-Recording/dp/B002GTJZ5Y/ref=sr_1_22?ie=UTF8&s=music&qid=1258274814&sr=1-22
このメトCDは高価でした。私は音質が劣る廉価盤で所有しています。

私の好きなモッフォの絶頂期のリューも素晴らしいです。
Signore, ascoltaの最後はやはり”泣き”がはいっています。
この時代のはやりとか、演出で泣きを入れて下さいと要請があったのでは?
ここでの成功によりストコフスキーとの有名な共演盤が録音されました。特にヴォカリーズでのモッフォの名唱はいまだファンが多いです。
http://www.amazon.com/Joseph-Canteloube-Villa-Lobos-Bachianas-Brasileiras/dp/B000003ERS/ref=sr_1_9?ie=UTF8&s=music&qid=1258275971&sr=1-9
そしてコレルリは本当にエクサイティングです。

>暴走機関車ボニゾッリ
私生一度だけ聞きました!これでもかっていうくらい大声を出します。美しい声かなぐりすてているのでまったくといって品格は感じられませんでしたが。
デ・グリューだったので3幕の”私は狂人ではないのか”のアリアでは声の出ない奴はテノールじゃないといわんばかりの歌声と大時代的な泣きがたっぷりですごかったです。
そのころへぼいテノールしか聞けてなかったのでとても感心してしまいました。
録音で聞くときついかもしれません(笑)
キャリア初期のモッフォとの映画版 椿姫のDVDなんかではアルフレードを端正に歌っていますが。

あとはニコラ・マルトゥヌッチがカラフ歌いですね!
入手難のため、89.99ドル!! (Madokakip)
2009-11-16 15:19:57
 junさん、

あれ!!
私が見たのはこんなに高い値段じゃなかったですよ。
ということはあれは廉価版だったのですね。
それにしても、このメト盤の高価さはどうでしょう!!
こんな高いなら、コレッリのブロマイドが500枚くらい中に入ってないと!

>Signore, ascoltaの最後はやはり”泣き”がはいっています

確かに当時はこれがもしかしたら一般的だったのかもしれないですね。
モッフォの絶頂期の頃は本当に軽くて綺麗な声をしているんですよね。
私、彼女のジルダ、結構好きなんですが、
正規盤のCDで、死ぬ間際に”きゃーっ!”って言いますよね。
あれだけは、ちょっとなあ、、と引いてしまうんですが、
これも当時はそういう風に演じていたのをそのまま録音に持ってきたのかもしれないですね。

>ボニゾッリ

デ・グリューで、声の出ない奴はテノールじゃないといわんばかりの歌声っていうのがすごいですね(笑)
トゥーランドットやトロヴァトーレと違って、そんなレパートリーじゃないのに(笑)。

>そのころへぼいテノールしか聞けてなかったのでとても感心してしまいました

そういうこと、ありますよね。
ずーっとヘボいテノールの歌が続くと。

>録音で聞くときついかもしれません

歌もそうなんですけど、先にあげたあのトロヴァトーレのビデオクリップ(?)の見た目が強烈でまたびっくりしました。
すごい個性ですよね、ある意味では。

>ニコラ・マルトゥヌッチ

彼は私、生で聴いたことがあると思います
(プッチーニの作品だったと思うので、
カラフだったかな、と思うのですが、
マノン・レスコーだったかもしれません。
大違いですが。当時はブログのような便利なものがなかったのでこうやって記憶から抜け落ちていくんですよね、、。)
でも聴いた時期が遅かったので、
(2000年前後だったと思いますので、60歳位、、。)
声に張りがないテノールだな、と思ったにとどまりました。
若い頃に聴けていればよかったんですが、、。
エキゾチックな衣装も似合いそうな、
カラフ向きのルックスをしていますよね。
ボニゾッリのトロヴァトーレ (Boni)
2009-11-17 17:13:29
確かに、あのトロヴァトーレの映像はぶっ飛びましたね。
始めて見たときは笑いました。
どうやらオペラ映画の一部のようなんですが、全編のDVDが出たら欲しいような、、、

もし彼のトロヴァトーレに関心をお持ちでしたら、ヴェローナ音楽祭の映像もDVDになっていますよ。
歌も演技も、期待通りに大時代的。
”Di quella pira”など、吼えるは飛び上がるは、やりたい放題。
しかも、万雷の拍手に答えてアンコールです。
彼のマンリーコと、フィオレンツァ・コッソットのアズチェーナが濃ゆすぎて、ルーナ伯爵とレオノーラは全く印象に残りません。

しかしながら、ボニゾッリのデ・グリューはちょっときついですね。

ジャコミーニについては、実は恥ずかしながら、5年ほど前に「運命の力」の映像を観るまでまったく知りませんでした。
レオンティン・プライスがタイトルロールを演じたメトロポリタンの映像です。
誰だ、このテノールは、とパッケージを見ても、名前を聞いたこともない歌手。
何故これほどの歌手を知らなかったんだろうと不思議に思っていたら、極端に録音の少ない人だったんですね。

4月に観たグレギーナの「トスカ」でカヴァラドッシを歌っていたのがホセ・クーラだったのですが、彼の持ち味は、例えば「道化師」のカニオのような役柄には合っていても、この役には向いていないのではないかと感じました。
劇的な表現は良いのですが、もっと歌い上げるところがあってもいいんじゃないかと。
この人は現在のスター歌手の中でも、ベルカントから最も遠いところに位置するうちの一人ではないかと思います。
私も探してます (Madokakip)
2009-11-18 15:04:12
 Boniさん、

>全編のDVDが出たら欲しいような

私、真剣に探してますよ(笑)。
というか、まじめに、このポスティングを起こした方にメッセージを書こうかと思っているくらいです。
日本語の字幕が入ってますよね。
日本で商品化されたか、テレビで放映された、ということですよね。

後ろでめらめら燃えるベタな炎、
どこに駆けて行くのかとあっけにとられるマンリーコ、
いつの間にか群がっている仲間たち、と、
つっこみどころ満載なんですが、
この演出に全然負けるどころかなおキャラが立っているというのがすごいです。

しかし、入手が困難なことが予想されるので、
とりあえず、その吼える、飛び上がるでやりたい放題のヴェローナから行ってみようか、と思います。

>ボニゾッリのデ・グリューはちょっときついですね

椿姫のアルフレードというのも、
このトロヴァトーレの映像を見た後ではかなり想像がつかないです。

>ジャコミーニ
>極端に録音の少ない人

そうなんですよ。
私が聞いたところでは、当時、丁度3大テノールが全盛期で、
レコード会社は彼らの獲得と音源の発売に忙しくて、
ジャコミーニのことはシカト状態だったらしいんですよ。
時代がさかのぼりますが、
オリヴェーロ、ジェンチェルなんかも正規の録音が少ないですよね。
もったいないことです。

>ホセ・クーラ

に関しては、私はものすごく長い間、
何が良いのかあまりわからなかったんですが、
昨シーズンの『道化師』、これですっごく見る目が変わりました。
けれど、一ヶ月前に発売された音友を読んでいましたら、
夏の公演のレビューがたくさん出ていて、
ヨーロッパのどこかでクーラが同じくカヴ・パグをダブルで歌ったんですが、
道化師は全然駄目で、カヴの方が賞賛されてました。

私からするとええっ??って感じなんですが、
彼は結構その時々で出来にムラがあるのかもしれないですね。
私も彼がメトで何年か前に歌ったカヴァラドッシは
無難、という域を越えなかったです。
声の質的には必ずしも悪くないと思うのですが、、。
またまたメータ! (jun)
2009-12-01 19:45:24
お祭り好き男メータのまたまたトゥーランドット!
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3722083
しかもチェン・カイコー演出。
ここでのグレギーナはどんなんでしょうね?
トゥーランドットとセット (Madokakip)
2009-12-02 14:13:04
 junさん、

メータといってすぐに思い浮かぶのはなぜかいつも
トゥーランドットなんですよね、そういえば。

約10年前にはチャン・イーモウの演出で、
フィレンツェ歌劇場を引き連れて、”紫禁城のトゥーランドット”してましたよね。
10年毎のライフワークなのかな。

メトのHDの直前は、このヴァレンシアのグレギーナの映像が引き合いに出されて、
今の彼女なら、歌(の崩壊度)がこれくらいにとどまればいい方、なんていわれてました。
短い抜粋をYou Tubeで観ただけですが、
大体メトのHDと同じような感じかなと思います。
演出がチェン・カイコーだったんですね。

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