Opera! Opera! Opera!

音楽知識ゼロ、しかし、メトロポリタン・オペラを心から愛する人間の、
独断と偏見によるNYオペラ感想日記。

LA DAMNATION DE FAUST (Fri, Oct 30, 2009)

2009-10-30 | メトロポリタン・オペラ
ドレス・リハーサルでは、

① たった一年でがたが来始めたセット
② 声のサイズがやや小さく、マルグリートの二重唱での高音を出さない(出せない?)ヴァルガス、
③ 中低音域では魅力的だけれども、高音域に無理があるために、最大の聴かせどころである
ロマンス(”燃える恋の思いに D'amour l'ardente flamme ”)で
悪い意味で尻すぼみに燃え尽きてしまうボロディナのマルグリート
④ 何よりもこの作品の良さをことごとくぶち壊し、
メト・オケから高校のマーチング・バンドのような音を引き出すという、
耳を覆いたくなるような恐ろしい技を繰り出したジェームズ・コンロンの指揮(もはや犯罪の域!)

この4点に問題は集約されました。
結果、昨シーズンのレヴァイン指揮、ジョルダーニ、グラハム、レリエー共演の時とは
比べるのも無意味と思われるほどに、緊張感のないだれた演奏となってしまっていました。

あのドレス・リハーサルと今日の公演の間にシーズン初日を迎えた『ファウストの劫罰』は、
その初日の演奏がシリウスで放送され、私も聴いていましたが、感じたのは、
ヴァルガスの歌にリハーサルよりも細かい表現や熱さが感じられたこと、
コンロン率いるオケが若干ましだったこと、位で、
ボロディナについてはほぼ同じ印象、
セットについてはリハーサルで聞いたようなびっくりするようなノイズ
(スクリーンを動かそうとする装置と
故障して”てこでも動かないわよ!”とその場に居座るスクリーン側が摩擦を起こして、
音楽が鳴っている途中におかまいなしに、バリバリバリ!!!という轟音がしていました。)
はとりあえずラジオでは確認できなかったので、
さすがに本番までに修繕したのね、と思っていたらば、、。



今日の公演が始まってまず気付いたのは、
ヴァルガスが初日の勢いや良かったところを全て失い、またもやリハーサルの時のような歌を聴かせていること。
というか、リハーサルよりもさらに悪いくらいの。
まるで、声が出てくる時にどこにも重心がないようなふぬけた声で、
これは私がこれまで聴いた彼の中でも、もっともふがいない歌唱で、
どうした?!!ヴァルガス!!??です。
しかも、声量は今までのなかでも最高に小さく、風邪でもひいて喉を守ろうとでもしているかのようです。

しかし、それを言えば昨シーズンのジョルダーニだって、
声のコンディションが悪く(というか、彼は最近万年コンディションが悪いので)、
決して理想的な歌唱ではなく、グラハムとレリエーに混じると一番弱い三角の角だったんですが、
とにかくオケが聴かせてくれ、しかもこの作品は最初から最後までオケの聴きどころが満載なので、
彼の歌の弱さがさほど気にならなかったものです。

それが、ヴァルガスは、なんて運が悪いんでしょう。コンロンの指揮と組み合わされてしまうなんて。
っていうか、もう、ほんっとうにびっくりするくらいオケの演奏がめちゃめちゃなんですけど!
さらに、言わせてもらえば、これはオケのせいじゃないですよ。
オケをまとめられないコンロンのせいです。
だって、たった昨シーズンにあれほど素晴らしい演奏を聴かせたオケが、
しかも、かなりのメンバーが昨シーズンからの居残りになっているオケが、
ひとりでにこんなことになるわけないじゃないですか!!
実際、リハーサルでは、各セクションからは魅力的な音も出ていました。
でも、それが全然セクション同士でかみ合わないのです。
しかも、あれからさらに病魔は進行したようで、
(多分、初日に若干ましだったのはオケ自身の自浄作用でしょう。
たまにあるのです。シリウスやHDのような大事な時に、あまりに指揮者がひどい場合は、
オケが自分たちで勝手に熱演してしまうことが。)
こんな指揮のもとでやってられるか!という空気が漂いはじめているのか、
もはや、各セクションから出てくる個別の音色すらやる気のない音になり始めています。
指揮者は、まず、オケがこの指揮者のためなら本気を出すぞ!と思わせるようでないと話になりません。
何もかもがそこから始まるんです。
『アイーダ』のガッティについて書いたテンポに関する不満なんていうのは、
当然、その先の問題で、逆を言うと、少なくともガッティはオケを本気にはさせていました。
それを言えば、『トスカ』の”イカ”(コラネリ)なんか、代役の指揮者でしたが、
そういう意味ではずっとずっと指揮者としての大事な任務を果たしています。
といいますか、コンロンの指揮は今まで何度か聴いたことがありますが、
この『ファウストの劫罰』での指揮で、
一体どうやって彼がLAオペラの音楽監督にまでたどり着いたのか、私には謎!と
決定的に思わせるに至りました。

今日座ったのはドレス・サークルの最前列で、
この階は客の落下防止を防ぐためのバーに若干幅があり、
それが最前列で普通に座っていると、ちょうどオケピを覆ってしまうような場所に設置されているのですが、
あまりにハンガリー行進曲の演奏がだらだらと覇気がないので、
”一体どういう指揮振りをしているんだ?!”と頭を少し下げて、
バーの下からのぞくようにしてコンロンの姿を見ると、
なんと、びっくりするようなオーバーアクションで暴れまくっているではないですか!!!

なんてむなしい、、
コンロンのオーバーアクションとあまりに対照的なオケのしょぼい音、、、
視覚と聴覚のあまりの一致しなさに、しばらく私の脳が情報処理を戸惑ったほどです。
指揮は、どんな動きもそれが音に結びつかないと意味がないでしょう。
どんなにばたばた動きまわっても、そこからオケが彼の指示を感じ取れなければ、
その動きはないに等しい。
なんだか、彼の指揮は根本のところが間違っていると思います。

また指揮とオケの演奏について気付いたことをまとめてここで全部書いてしまうと、
この作品で最も迫力があり、ここでオケが観客の心をしびれさせなければ嘘、という、
ファウストの地獄落ちのシーンなんかも、
レヴァインの時と比べて全く迫力がありません。
いや、物理的な音量から言うと、昨シーズンと全く同じ位の音がオケの各セクションからは出ています。
ただ、音が一体になっていないのです。
そのために、音の密度が薄く感じられ、本当に一体になればびしっと客席に鋭く入ってくるはずの音が、
各セクション毎にばらばらに飛んでくるので、音の輪郭がぼやけ、同じ迫力を得られないのです。

また、彼のセクションの間のバランス感もセンスが悪くて嫌になってきます。
特に、打楽器と低音の弦楽器をやたら強調したがる癖があって、
ハンガリー行進曲でのクライマックスの部分の打楽器を強調しまくった演奏は、
まるで下手な高校のマーチング・バンドみたいな音で、がっくり来ます。
このあたりも、メト・オケの長所が手に取るようにわかっているレヴァインに比べると
(まあ、その点に関してはなかなかレヴァインを越えるのは難しいでしょうが)、
このオケのいいところをわざわざないがしろにして、
なんでこんなローカル・マーチング・バンドみたいな音にするのか?!と頭を抱えたくなります。

それから、マルグリートのファウストに対する心の鼓動を表現しようとでも言うのでしょうか?
他の楽器の音を極力抑えて、コントラバスのパートをやたら強調している個所があって、
それもすごく安っぽくて嫌でした。



コンロンの指揮を???と思う点については永遠に書き続けることが出来そうですので、
これくらいにしておいて、指揮に続いて私が凍りついたのは、セットでした。

なんと、まだインターミッションにいたる前の、第二部の途中で早くもセットが崩壊。
一番最初の写真の、上段左から三つ目のセル(二人のダンサーが写っているそれ)、
こちらが問題のセルで、リハーサルで問題があったのと全く同じ場所です。
ということは、リハーサルから問題が根本的に改善されていなかった、ということになるでしょうか、、。
第二部ではこれらのセルそれぞれに上部のカーテンレールから下がった布に、
コンピューターからプロジェクトした映像が効果的に使われるシーンが連続します。
しっかりと映像を写すべき場面では布を登場させそこに映写し、
また、メフィストフェレスとファウストを乗せた小船が舞台を下手から上手に移動する場面では、
その布をスライドさせてどかせ、セルの奥行き一杯を使わせる、というように、
この布が自由自在に移動しないとかなり厄介なことになります。

問題のセルにはこのレールに問題があるようで、途中でレールに布がつっかえてそこから移動しなくなるのですが、
それでも装置が無理に布をひっぱろうとするので、布がレールから外れてびろーんと手前に垂れてきてしまいました。
、、、、、。

その垂れてきた布のむこうは本来客席から見えない状態になっているので、
ダンサーやエキストラたちの移動に使われていて、表の舞台で起こっていることとは関係のない
彼らの様子がばっちり丸見えです。
しかし、彼らも猛烈に忙しいので、そんなことに構ってられるか!ということで、
野生の動物群の移動のようにすごいことになっていて、それも丸見えです。
時折、野生の動物(エキストラ)たちの移動が収まると、大道具のスタッフが布をひっぱってみたり、
別の布をあてがおうとしてみたりするのですが、場面によっては布を透かして映写する技術を使用している場合もあって、
お尻に大工道具を下げた親父の影絵がうつりこんでしまう始末。

でも逆にこういうアクシデントがあると、上手くいっているときにはなんでもなく見えていたことが、
物凄く細かい計算や技術の組み合わせによって成り立っているんだな、と気付かされます。
結局インターミッションまではこの状態で突き進んでしまいましたが、
インターミッション中に猛烈に修復したのでしょう、後半は滞りなかったです。

この演出はそういった細かい駒が全部かみ合って、かつ、パフォーマンスが熱ければ、
きちんと真価を発揮する演出だと私は思いますが、
今日のようにミスがあったり、またパフォーマンスそのものがだらけると、
一気に遊園地的なものに堕してしまう危険性もはらんでいます。
私の隣の二人連れも、”安っぽくて先が読める”というような表現をしていましたが、
先が読めるなんていうのは、オペラの世界なら当たり前で、
大体、ほとんどの人がストーリーを知って、もしくは以前に何回も見た事のある作品を観に来るわけです。
先が読めてしまう、としたら、それは観客に感動をあらたに感じさせる熱みたいなものが、
パフォーマンス自体に欠けているからだと思います。
ですから、そのことを演出のせいにするのはお門違いです。



インターミッションがあけて後半(第三部以降)が始まる前に、
マネジメントのスタッフから、
”ヴァルガスがお腹の不調を抱えていますが、
残りのパフォーマンスも歌いますのでご理解のほどを。”という言葉がありました。
だからあんなに体のどこにも重心がないような歌だったんだな、、と納得。
この言葉で少し心の重荷がとれたのか、むしろ後半の方が歌は良かったように思います。
声も前半よりはだいぶ前に飛んでくるようになりました。

ただ、もう初日のシリウスの放送で確認済みだったのですが、
第三部のマルグリートとの二重唱で二度出てくる高音は、もう歌わない、というスタンスにしているようです。
この作品を初めて聴くとか、馴染みのない人なら、多分ほとんど違和感がないほどです。
(一つ前の音をもう一度歌っているのだと思います。)

彼のこの役の歌唱にはいい面もあるのですが(決して乱暴な部分がなく、非常に丁寧に歌っている点とか)、
総合的にみると、何よりもこの作品のオーケストレーションの上を十分に届かすだけの声量とか際立った声質がないという点で、
この作品をずっとレパートリーとしてこの先も歌っていくのは
ちょっと難しいんじゃないかな、というのが私の正直な気持ちですが、
(だし、彼にはもっといいレパートリーが他にあるとも思う。)
この先、彼はどういう決断をするでしょうか?



声量の面では一切問題のないボロディナは、特に低音域から中音域での音が充実していて、
”昔トゥーレの王が Autrefois un roi de Thule"の歌唱は、美しい声でなかなか聴かせます。
しかし、リハーサルの時と全く同じで、この役で求められる最高音あたりになると、
突然問題が噴出す感じがします。
そして、それが、この役で一番美しい部分といってもよい
マルグリートのロマンス(”D'amour l'ardente flamme")に当ってしまっているのが最大の不幸です。
というか、彼女自身にこのあたりの音に不安があって、
それが自由にこの曲での表現に集中する足かせになっていることの方に問題があるかもしれません。
それでもリハーサルや初日の時には何とか果敢にチャレンジしていましたが、
何と今日は、この曲で最も大事と言ってもよい高音を出さずじまい。
、、、オルガさん、それはちょっと、いくらヴァルガスも高音を省略しているからといって、
どさくさにまぎれすぎじゃ、、。

以前の記事でもご紹介したことのある、昨シーズンのHDの公演からの、
グラハムの歌唱の映像をもう一度引用しますと、6'38"に出てくる音で、
(最後に二度繰り返されるVoir s'exhaler mon âme, Dans ses baisers d'amour!の、
二度目のVoir s'exhaler mon âmeのexhaler)
この曲のなかでも最もエモーショナルな一音だけに、これを飛ばされるとがっくり来ます。




結局一番歌が安定しているのはアブドラザコフのメフィストフェレスでしょうか?
私はリハーサルの時の感想にも書いた通り、彼のメフィストフェレスは、
声質のせいもあって、ちょっと優しすぎて、どんな形の不気味さもあまり感じないのですが、
これはこれで魅力と感じる人が多いのか、彼のこの役は観客にはなかなか好評です。
彼もレリエーに負けず劣らず、舞台では割と長身に見え、身のこなしも綺麗なので、
その点では何の不足もないのですが、、。
彼はもうちょっと違う役で聴きたいかな、というのが本音です。
ただ、3人のメイン・キャストの中では最も破綻がなく、
歌もよく準備されている感じがするのは彼で、
かつレリエーよりも音のつなぎ、移行がきれいな部分はあるので、
そのあたりも評価の高さに繋がっているのかもしれません。

それにしても、昨年の公演と比べてパンチが足りない今年の『ファウストの劫罰』。
これを去年聴いていたなら、この作品をこれほど好きにはなっていなかったと思います。
昨年に続いて気を吐いていたのは男性と児童の合唱くらいです。
次回再演される時には、単に名前が通った歌手というのではなくて、
本当にこの作品の真価が出るようなキャストであることを祈っています。
もちろん、そして、何より指揮者の選択を誤らないよう!!!

Ramon Vargas (Faust)
Olga Borodina (Marguerite)
Ildar Abdrazakov (Mephistopheles)
Patrick Carfizzi (Brander)
Conductor: James Conlon
Production: Robert Lepage
Associate Director: Neilson Vignola
Set Design: Carl Fillion
Costume Design: Karin Erskine
Lighting Design: Sonoyo Nishikawa
Interactive Video Design: Holger Forterer
Image Design: Boris Firquet
Choreography: Johanne Madore, Alain Gauthier
Dr Circ A Even
ON

*** ベルリオーズ ファウストの劫罰 Berlioz La Damnation de Faust ***

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44 コメント

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Unknown (蘭丸)
2009-11-02 11:01:21
4月にLAで「ワルキューレ」を観た時にコンロンの指揮のオケの音の平凡さに???と思ったのですが、もしかしたらピットが全てカバーされてた為と思ってましたがMadokaさんのレポを読む限りそうではなかったみたいですね。

音とは別にあそこまでつまらなかったワルキューレの指揮を聴いたのも初めてでした。
返信する
ちょっとびっくりしました (Madokakip)
2009-11-04 13:10:25
 蘭丸さん、

コンロンの『ワルキューレ』、、、

この『劫罰』を聴いた後では怖さ2万倍です!!

昨年レヴァインが指揮したHDの公演のようなのをイメージしてオペラハウスに来られた方たちが可哀想、、、しくしく。
返信する
2010.7.15 二期会「ファウストの劫罰」 (素人耳)
2010-07-16 13:23:21
7/15、二期会の「ファウストの劫罰」を見てきたぞよ。
http://www.nikikai.net/lineup/damnation/index.html

「ラコッツィ行進曲」はブラスバンド演奏で中学生の頃から知っておったが、全曲を初めて聴いたのはMETのライヴ・ビューイングのときじゃった。それがとても印象的だったので、今回生で初めて観る気になったんじゃよ。

本当に素晴らしい公演じゃった!マルグリートの林美智子が病気でキャンセルして、もともとダブル・キャストだった林正子に代わったんじゃが、この人がすばらしうて!!

ファウストの福井敬、METのジョルダーニよりよほど良い声だと思うんじゃが、どうであろう?メフィストの小森輝彦も良かったので、主役三人は◎。

この公演に行く気になったもうひとつの理由はミシェル・プラッソンが指揮するということじゃった。今回の東フィルの演奏の素晴らしいこと!!プラッソンのおかげであろうか!

演出も素敵で、「もう一度見たい」と思わせるものじゃった。

平日のせいもあってか、客の入りは60%くらいであったが、18日までやっておるので興味があれば見て、聞いてくだされ。わしはD席4階右で5000円。

15日は相変わらず、東条さん、石戸谷さん、岡本稔さんが来ておったからblogで感想が読めるであろうぞよ。

樋口裕一さんの感想はこちらじゃ。
http://yuichi-higuchi.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-f197.html
とりあえずご報告
返信する
H・アール・カオス (みやび)
2010-07-16 13:38:58
でござりまするな?!二期会は演出に力を入れておられるご様子…。私も拝見しとうございました。いや、18日まで機会があるとな…予定を上手く調整することが出来ますれば…。

二期会と申せば、ライバル(?)の藤原歌劇団ですが、そういえば先月、ロッシーニの「タンクレーディ」を見に参ったのですが、報告しそびえれておりました。こちらは、演出に関しては正直なところ、良くも悪くも無難といったtころでございましたが、演奏はなかなかよろしゅうございましたよ!

今回はアルベルト・ゼッダ御大のご意志によって近年では稀なハッピーエンド版での上演でありました。マエストロ・ゼッダの人気はすごいものでござりました。歌手では表題役のマリアンナ・ピッツォラートが評判でしたが、日本勢も大健闘といってよろしいかと存じます。

今の時代は、ヴェルディやプッチーニの贔屓より、ロッシーニやバロック贔屓の方が幸せな時代であるかもしれませぬ…。
返信する
トリノ接近!! (素人耳)
2010-07-16 15:39:26
みやび殿、お久しぶりでござる

みなさんのコメントは読ませていただいておるんじゃが、如何せん、いろいろ忙しいのと、コメントを書き込むと、お返事にも気を配らねばならぬので、しばらく「Read Only Member」を決め込んでおったんじゃ。

ところで毎度のことじゃが、「H・アール・カオス」とは何じゃな?

>ロッシーニの「タンクレーディ」

わしも行きたかったんじゃが、前回の「泥棒かささぎ」のようにTV放送があるのでは?などと勘繰って、行かずに済ませてしもうた。高橋薫子も出ておったかのう?わしは彼女のファンなんじゃが・・・。ゼッダの指揮は一昨年だかの「ロッシーニ・フェスティバル来日公演」で楽しませてもろうたよ。

>今の時代は、ヴェルディやプッチーニの贔屓より、ロッシーニやバロック贔屓の方が幸せな時代であるかもしれませぬ…。

まあまあ、そう悲観なさらずとも・・(笑)。今月は楽しみな「椿姫」と「ラ・ボエーム」(!)が控えているではないか。みやび殿は御覧にならぬのかな
返信する
素人耳殿 (みやび)
2010-07-17 00:02:07
毎度のことながら、中途半端な書き振りで失礼つかまつりました。H・アール・カオス(H・ART・CHAOS)とは演出・振付家の大島早紀子とダンサー白河直子によって設立されましたコンテンポラリー・ダンス・カンパニーにござります。今回の二期会公演では、「H・アール・カオス」の名は表には出ておりませなんだか。海外公演も行うなど高名でありますが、私は音楽・絵画・舞踊、いずれもどうも現代モノに弱く…実際に舞台を拝見したことはありませぬ。おそらく、他のバレエ・ファンの皆様の方がお詳しいと存じます。
前回やはり二期会と共演した「ダフネ」も大変好評の様子でしたし、H・アール・カオスではありませぬが新国の「カルミナ・ブラーナ」でのバレエ&歌も大変楽しゅうございましたので、オペラとセットというのは狙い目かも、と思うておりますが…さて。

>高橋薫子も出ておったかのう?わしは彼女のファンなんじゃが・・・。

素人耳殿も、でござりまするか♪高橋 薫子のアメナイーデ、なんと難しそうな歌であることよ…と思いましたが、大変よろしゅうござりましたよ♪
他の女声陣、鳥木弥生(イザウラ)、松浦麗(ロッジェーロ)も好演。アルジーリオの中井亮一殿は、これが初の大舞台とのこと、それにしては難役でちと負担が大きくてお気の毒であったやもしれませぬ。前半は危うい箇所もありましたが、後半はしっかり持ち直し、次回に期待といったところでありましょう。

>今月は楽しみな「椿姫」と「ラ・ボエーム」(!)が控えているではないか。

そうでございました、「ボエーム」に参ります!「椿姫」はまだ切符も残っている様子にござりますが…ちと、日程が合わなさそうで残念至極。
返信する
頂いた順です。 (Madokakip)
2010-07-18 17:59:05
頂いた順です。

素人耳さん、

>林美智子が病気でキャンセルして、(中略)林正子に代わったんじゃが

このお二人は双子か何かでいらっしゃいますか?名前がそっくりですね。

>ファウストの福井敬、METのジョルダーニよりよほど良い声だと思うんじゃが、どうであろう?

ええ、それはもう間違いないでしょう。きっぱり。
ジョルダーニも綺麗な声だった時期はあったようですが、最近の彼の声はかなり荒れてますからね、、。

それにしてもそのような内容の良い公演の客席が60%しか埋まっていないというのは、
『エレクトラ』ショックと同じくらい悲しいですね。

そして、樋口裕一さんのブログ、なかなかに当ブログとは違った意味でコメント欄がヒート・アップしているのにびっくりしました。

http://yuichi-higuchi.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-8c1d.html


みやびさん、

>ヴェルディやプッチーニの贔屓より、ロッシーニやバロック贔屓の方が幸せな時代であるかもしれませぬ

ヴェルディ、プッチーニにワーグナーも加えていいかもしれません、、。
ロッシーニは春ですよねー。
返信する
7月18日に行って来ました。 (Kuritakmi)
2010-07-18 19:40:07
別の項目にてOperaとは全く関係の無い話題を展開しまくっていますが、こちらは本日の二期会の公演を見てきたので、その報告です。

(本日も酷暑で、33度の中、行って参りました。)

指揮のミッシェルプラッソンはさすがで、私のすごく好きなオープニングからファウストの独唱の部分で良い音が出ていたと思います。

今日はB Castの日で、歌手ではファウスト役の樋口達哉が声に艶があって良かったですね。

ただ、メフィスト役の人は、持ち声がそうなのか、調子が悪かったのか良く分かりませんが、声に輝きが無く、個人的には全く魅力を感じられず、残念でした。

演出を女性によるモダンバレエのグループを主宰する人がやっていて、随所で踊りが生きていました。面白かったのはMETではワイヤーに吊られた蜘蛛みたいな男の人が縦横無尽に動き回っていましたが、女性が宙吊りになって踊っていたところ。あれ、ちょっとヒントを貰ったかな、という感じ。

おまけですが、Operaの前に芸大の付属美術館で開催中のシャガールとロシアアバンギャルド派という展覧会も見ました。

カンディンスキーの初期の作品とかも出ていましたが、目玉はシャガールが1967年にMETで演出した魔笛の関連のスケッチや絵。METの125周年のときにCGで再現されていた例の演出です。
なかなか良かったですね。

当時の公演写真も出ていましたが、あの舞台装置、衣装で歌っているのがニコライ・ゲッダ、ルチア・ポップ(夜の女王役!)、ヘルマン・プライなんですよね。すごいメンバーだったのだ、と再認識しました。
返信する
私も行きました (みやび)
2010-07-19 06:12:58
何故か17日までだと思っていたので(そして、17日は既に赤坂大歌舞伎(と称して勘三郎が赤坂ACTシアターで公演している)のチケットを持っていたので)今回は無理かと思っていたのですが、素人耳殿に18日までと教えていただいたので、行ってまいりました。素人耳殿、かたじけのうござりました。

ということで、Kuritakmiさんと同じ公演を観ていたということになりました。

ファウストの樋口達哉ですが、何となくイタ・オペ調な感じがしなくもなかったですが、良い声ですよね。(新国も、いい加減ガストン@椿姫なんかにキャスティングするのを止めてあげればいいのに…どうせ脇役なら、去年のカッシオにしてくれた方がまだ良かったのに…。)
林正子は予定よりハード・スケジュールになってしまったようですが、良かったと思います。歌もですが、主役陣の中では、一番細やかな演技ができていたように思います。

>面白かったのはMETではワイヤーに吊られた蜘蛛みたいな男の人が縦横無尽に動き回っていましたが、女性が宙吊りになって踊っていたところ。あれ、ちょっとヒントを貰ったかな、という感じ。

私はMETのライブビューイングでこの演目を観ていなくて、サイトウキネンの時のTV放送の記憶しかないので、蜘蛛男のくだりが記憶にありません。なので、Kuritakmiさんのおっしゃっていることとピントが全くずれているかもしれませんが、ワイヤーを使った踊りはH・アール・カオス(今回の演出・振付家の大島早紀子が主宰するコンテンポラリー・ダンス・カンパニーの名称で、今回のダンサーはこのカンパニーのダンサーです)の以前からのスタイルです。
創立当時からこのスタイルかどうかは存知ませんが、少なくとも93年の時点ではワイヤーを使っていますので、ルパージュの「ファウストの劫罰」をヒントに、ということではないと思います(サイトウキネンでの初演は97年)。2007年に二期会が「ダフネ」を初演した際も大島演出でしたが、写真をみると、やはり今回同様にワイヤーを使っていたようです。
(Kuritakmiさん、「そこを言っているんじゃなんだな」というところかもしれませんので、その場合はすみません、と先に謝っておきます。もちろん、言葉尻をとらえて揚げ足とりするうもりでもありません。)

H・アール・カオスのメンバーの身体能力は目を見張るものがありましたし、合唱のメンバーの動かし方もすごく良かったと思います。
それに比べると、ファウストとメフィストの演技にはあまり惹かれるところがなかった気がするのと、ダンスの振りによってはやはり音が立ちますので、場面によっては少しうるさいと感じられるかもしれません。私は見入ってしまったのであまり気にならなかったのですが。

客入りですが、日曜日でしたが、やはり空席が目立ちました。藤原の「タンクレーディ」もメジャーとは思えないですが、あちらがかなり埋まっていたのはロッシーニ・ファンが多いということでしょうか。公演数が3回と4回でも随分違うのでしょうか…。
トリノもロイヤルもチケットの余りがあるようですし…う~ん、来年の来日公演はちょっと重なりすぎじゃないかと心配です。
返信する
キャスト違いの劫罰 (Madokakip)
2010-07-19 06:13:29
Kuritakmiさん、

素人耳さんにAキャストの模様を聞かせて頂いたうえに、
こうしてKuritakmiさんからBキャストの様子も教えていただけるとは、
インターネットの恩恵ですね。

>演出を女性によるモダンバレエのグループを主宰する人がやっていて

これがみやびさんのおっしゃっている、H・アール・カオスなんですね、きっと。

>女性が宙吊りになって踊っていたところ。あれ、ちょっとヒントを貰ったかな、という感じ

、、、Kuritakmiさんはヒントを貰ったと優しい言葉を選ばれてますが、
これはMadokakipが感想を書いていたら、”ぱくっていた”という表現になっていたかもしれません、、。

メフィストは大事な役ですから、ちょっと歌唱がいまひとつだったようで残念ですが、
まあ、メトではあのジョルダーニのファウストに付き合わなければなかったのと、
相殺ですね。
なかなか、3人全部がそろうという公演はないものですから、
主役3人が◎とおっしゃっていた素人耳さんのAキャストはラッキーでいらっしゃいました。

後、この演目はオケはもちろん、合唱も非常に大切なエレメントだと思うのですが、
お二人からのコメントに何の言及もないことから察するに、、、?

>ニコライ・ゲッダ、ルチア・ポップ(夜の女王役!)、ヘルマン・プライ

ほんと、ため息ですね。
今は、『魔笛』なんて特に、誰よ、それ?っていう歌手がいっぱいキャストに混じっていて、
それも、”いや、全然知らなかったけど、聞けてよかった!”という風になるのならともかく、
公演後も、これでは名前をすぐに忘れそうだな、、という歌手がいっぱいいますからね、、。

だから、最近の一部のレパートリーの歌唱レベルの低下を嘆くという、
いつものループに入っていくわけでございます。
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