まきた@VetEpi

酪農学園大学をベースに、発展途上国と日本の獣医疫学に取り組む獣医師のブログです。

初めてのスラム

2005-10-15 17:08:27 | 学業
10月15日(土)。

ウガンダ入国当初から、首都カンパラにはたくさんのスラム街が点在していることは認識していたが、今週は初めてスラムに足を踏み入れた。

ウガンダで最も大きく、籍を置いているマケレレ大学の近くにある国立ムラゴ病院の脇の急な上り坂を、ブタカブキルワという地域を訪ね、道を教えてもらったとおり車で登りきると、眼前の山の反対斜面に、大きなスラムが広がった。

計画にはスラムの調査も組んであったが、私にはこれが生まれて初めてのスラムだったし、外国人である自分とドライバーの二人きりという少人数だったので、実際目の前にすると、入って行くのは正直言って少し怖かった。車から降りると、近くにいた少年にその地域がブタカブキルワであることを確認し、村長宅まで案内してもらった。スラムの周囲を縫っている細い下り坂は、強い人の糞尿の匂いが立ち込め、息が出来なかった。スラムの家々は、小さく所狭しと建てられた粗末な土壁であるのに対し、そこからそれほど離れていない場所には、オレンジ色の瓦と、白い壁の美しい高級住宅がいくつも立ち並び、さらに隣の山には、カンパラの中心地に高いビルがそびえているのが印象的だった。写真は集会場で唯一広い場所が保たれているが、その周囲は雑多で、1メートル弱の通路がかろうじて通っているのみの間隔で小屋のような家が混在している。

村長不在のため対応してくれた村の自治会メンバー3人は、意外にも友好的で、今後も調査が問題なく続けられそうだった。狭いスペースで家畜をたくさん飼っているイメージがあったが、意外にもほんの少数の山羊とニワトリを飼っているだけだった。肉屋も牛乳を売る店もなく、貧困のため牛乳も飲まないと人々は言っていたので、動物から人に伝染する人畜共通伝染病のリスクは低いかも知れなかった。逆に栄養失調と、乳幼児の栄養のために与える牛乳を加熱しているかが心配だった。

スラム周囲の強いアンモニア臭があったにもかかわらず、公衆トイレ(深い穴が掘ってあり、足場はコンクリートで固めてある)がいくつか見られた。しかし、鍵がかけられており、限られた人だけが使っているのかも知れなかった。今週は他に3つのスラムを回ったが、他の地域では、18歳の女性が膀胱炎にかかっていたが、トイレを使うには一回100シリング(約5円)払わなければならないので、一日2回しかトイレに行けず、病気が治らない、悪化しているという話を聞いた。

多くのスラムは川沿いか沼地にあるのだが、強い雨が降ると周囲の山から雨水とゴミがなだれ込み、すぐに1メートル以上の洪水になり、水が引くまでに3時間ほどかかるという地域も訪れた。そこではNGOの援助で、入り口が高さ2メートル近くにあるコンクリートのトイレが作られていた。そういう気の利いた援助には、心から感謝の気持ちが起きる。

協力隊時代は、村人のためなら、思い付いたことは何でもしようと手を出していた。茶生産、養豚、簡易燻製、ノートとペンの援助、学校トイレの援助など。今でもパキスタンの大地震や津波などの災害を知ったり、戦争や貧困問題を考えるとき、自分の専門性に無力感を感じることがある。しかし、ウガンダには、長期間かけて作り上げてきた計画を持ってきていることだし、早く自分の専門である獣医疫学の知識、実力を付け、限られた分野でも、確実に自分が出来ることで貢献できるようになりたいと思う。

これらスラムの人々のためにも、何かしら意味のある調査の結果が得られるように努力したい。

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2 コメント

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Unknown (なおみ)
2005-10-17 12:34:24
日本の電車の中吊りに青年およびシニア海外協力隊員の募集広告が貼り出されています。

マキちゃんのブログを読んで、青年およびシニア海外協力隊員の必要性を改めて感じました。



日本では当たり前のこと(特に衛生管理・教育)が整理されておらず普及していないんだね。私の親友も今、モンゴルの病院で看護師の管理者として働いてるけど同じこと言ってた。



専門性ね…大事だよね。私も専門性の構築のために今の研修終了後の計画を立てているところです。ただ、今の研修の費用と給料の8割を職場からもらってのヒモ付き立場なので、すぐには実行できないのが歯がゆい限り…



マキちゃん、身体に気をつけて計画を実行していってくださいね。





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自分に合ったスタンスで (まっきー)
2005-10-18 23:40:48
「自分に合ったスタンスで」

国際協力、ひいては国内外にこだわらず、奉仕活動には、この自覚が非常に大切だと思います。

募金もとても効果があるし、身の回りのことからする方が現実的だとも思います。いつか自分に順番が回ってくることもあると思いますよ。



僕にとっても、家族と一緒に暮らせること、というのは非常に大切。今、ずっと離れていますが、何とかなるけれど、あまりいいものではないですね。



今は出来ることを精一杯やっているけれど、自分が不幸になってしまっては、いい道とは言えないと思うので、ま、僕も僕なりの「自分に合った」国際協力を模索していきます。

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