goo

映画「My Blueberry Nights」

2008-03-24 08:54:42 | Cinema
CDだけ一足先に聴いていた、ウォン・カーウァイ(王家衛)監督の最新作
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』を日曜に観てきた。カーウァイ初の英語作品にして、
本人も「デビュー作」と云うほど、隅々までみずみずしい。そして甘酸っぱい。

観た後はきっと、熱々ブルーベリーパイにバニラアイスを添えて食べたくなる(断言)。
アイスの滴りに胸きゅん

この映画は、“失恋からの立ち直り”といった取り上げられ方が目立つが、
単に失恋の痛手を癒すためだけの傷心ロードムービーでは決してなく
“遠回り”を主題に、幾つもの“喪失と再生の旅”を描いた映画、と思う。
カーウァイいわく、「2人を隔てる距離は見た目には僅かでも、時として彼らの心はひどく離れている。
そうした隔絶感を克服する道のりを描きたかった」と。

カーウァイ作品との出逢いは『欲望の翼』。その才能に驚き、『恋する惑星』でまさに恋に堕ち、
以後『楽園の瑕』、『 天使の涙』、『ブエノスアイレス』、『花様年華』、『2046』と、公開される度、
ジャンルや国境を軽々と超越し、映画史をさらりと塗り替える感性に いつも陶然とさせられてきた。
←『花様年華』より

過去の作品たちが微妙に角度を変え、時空を変えつつ、人物も物語も有機的につながっている
というのが、ウォン・カーウァイ ワールドの大きな特徴。
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』で旅に出るヒロイン ノラ・ジョーンズは、
『恋する惑星』でやはり旅に出るヒロイン フェイ・ウォンに重なるし(どちらも稀代の歌姫だし)、
カフェで待ち続けるジュード・ロウも、やはり『恋する惑星』の待つ男トニー・レオンに重なる。
そして、カフェという舞台装置も、クールな選曲も、カーウァイ映画にやはり不可欠な存在。

この作品では、「上質な楽器の音色のよう」と、カーウァイがタクシーのラジオで耳にして
ヒロインに抜擢した歌姫ノラ・ジョーンズの声ばかりが取りざたされる(実際とても心地よい)が、
ジュード・ロウのしなやかな滑舌のハスキーヴォイスも絶妙。
今公開されているケネス・ブラナー版『スルース』の試写を観たときも、そう感じた。
←リメイク版『スルース』
ジュード・ロウは『スルース』で、かつてマイケル・ケインが演じた愛人役を、
今度は夫役のマイケル・ケインを相手に見事に怪演していたが、その妖艶な声の演技には舌を巻いた。
ジュード・ロウは、そのアンドロイドめいた美貌も手伝って、エキセントリックな役が目立つが、
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』では、ひたすらピュアでチャーミング。
いつかカーウァイ映画でトニー・レオンと競演してくれたら大歓迎。万が一駄作でも無問題(笑)
goo | コメント ( 0 ) | トラックバック ( 0 )
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。