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ボッティチェッリの春

2008-03-04 06:01:56 | Art
いちだんと春めいた日。温かな陽射しに無条件に心ときめく。ねこもひとも。
これは英国のパロディ画家スーザン・ハーバードの猫版「プリマヴェーラ(春)」↑。

             ↓本物はこちら。Botticelli「La Primavera」
@Firenze      
そのむかし卒業旅行でヨーロッパ旅行した折、フィレンツェのウッフィツィ美術館で
この作品と対峙したときの衝撃は忘れない。古典絵画より現代アートだった小娘に、
「あーた ルネサンス なめんじゃないことよっ」と、がつんと知らしめてくれた。

ちなみに、フィレンツェ大学の植物学者らがつぶさに数えたという研究報告によると、
右から二番目の精霊クロリスが吐いているのは、薔薇、ヒナギク、スミレ、ワスレナグサetc…
お隣の春の女神のドレスにもヤグルマギク、ヒヤシンスなど約70ほどの花々が描かれているらしく、
絵全体に、フィレンツェ近郊に見られる実際の植物が計300種以上も実物大で登場しているのだとか。
(何が凄いって、全部洗い出した植物学者たちのオタク魂…)。

図像学的には諸説あり、書物によって解釈がかなり異なる。
敬愛する図像学者 若桑みどり氏の『薔薇のイコノロジー』にも、
ボッティチェッリの「春」を巡る興味深い洞察が。若桑さんの切り口は実にシャープで優雅。
薔薇のイコノロジー
若桑 みどり
青土社

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一般的解釈としては、上空で弓を射ろうとしているのは“盲目の愛”を象徴する目隠しキューピッド。
狙われているのは、三美神のひとり“純潔”。右端の蒼褪めた方は、春をもたらす西風の神ゼフュロス。
彼に求愛され、口から花を吐いている精霊クロリスは、
ニンフから花の女神フローラ(or春の女神プリマヴェーラ)に変身。
まあ、誰が誰であるかという解釈はさておき
花をふうっと吐き、メタモルフォーゼしている瞬間のニンフor女神の美貌に、座布団10枚っ(笑)。

昔から、メタモルフォーゼする瞬間を捉えたものにぐっと来る傾向がある。
(「ふしぎなメルモ」が三頭身少女から八頭身美人に変身する瞬間も妙に好きだったし)

これは、前にこのブログでもちらと紹介したベルニーニ作「アポロンとダフネ」より、
アポロンに追いつかれ、指先から月桂樹へとメタモルフォーゼしていくダフネのディテール。

魂が口からふうっっと抜けていく瞬間みたいな恍惚の表情と、
ミルキーホワイトに輝く大理石の滑らかな肌。ベルニーニの面目躍如な“映像的彫刻”。

少し飛躍するが、、ミケランジェロが描いたシスティーナ礼拝堂の天井画は、
天地創造そのもののメタモルフォーゼともいえるダイナミズム。
これはその一部、デルフォイの巫女のディテール。

しかし。。クロリスといい、ダフネといい、またもや口が半開き(笑)。

私はダ・ヴィンチの描く貌は、個人的に全然タイプではないのだけど
ミケランジェロとボッティチェッリの描く貌は、老若男女問わずとても魅力的に感じる。
いずれも、思わず噴き出しを横に添えたくなるような表情。
とかね。
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