蝉時雨が始まり、「今日も暑いですねえ」という台詞が挨拶になる日々がやってくるといつも、
熟んだ真夏の夢のなかを どこまでもどこまでも回遊しているような気分になる。
ぐるぐるぐるぐる。夢の出口はどっちだ。
――サメの独りごと@数寄屋橋
☆
22日は皆既日食だったけど、東京は曇天。しかも私はうっかり徹夜原稿明けで、頭も曇天。
太陽の見えない窓外をチラ見しつつ、ソファに横たわってNHKの生中継をうとうと眺める。
各都市の映像(一部は日食中継ではもはやなく、暴風雨中継っぽかったけど)が流れる中、
ピーカンだった硫黄島の皆既日食の瞬間、その神々しさに一気に覚醒。
というか 予想外の突発的落涙。
太陽の絶対的存在と、太陽を覆う影によってその存在を知らしめる月。
おてんとうさまとおつきさまへの畏怖と慈愛が、陰陽ぴたりと交わる恍惚の瞬間というか。
アマテラス神話も皆既日食の暗喩という説があるが、
地動説も電気もオゾンホールも無かった時代の方が、太陽と親密に生きていたのかもしれない。
これは超高感度カメラが捉えたプロミネンス(紅炎)。
どんなアートも、これには敵わないかも。
実は呑気にも前夜になって日食観察アイテムを渋谷の東急ハンズや電気量販店とかで探したら
案の定すべてSOLD OUT。この不況でメーカーも慎重に作り控え、店側も買い控えたのだとか。
「マスコミが変に騒いでるけど、日食が終われば一個も売れないからねえ」と某店スタッフ。確かに。
まあ、メディアでは次の皆既日食は26年後と煽っているけど、それは日本に限ったお話。
たとえば来夏イースター島に行けば、皆既日食が見られるチャンスはあるわけで。
専用眼鏡の代りに、ポスター用の筒を使って即席ピンホール望遠鏡を前夜にちゃちゃっと作った。
底にはBLUE NOTEのコースターをテープで貼り、中心に開けた小さな穴から三日月型に欠けた
陽光を投影するつもりだった…が、曇天で叶わず。ただ、東京の部分日食が最大になった11時台、
妙に肌寒さを覚え、慌ててパーカーを羽織った。薄暗さまでは感じなかったけど。
左は数年前に古書店で見つけた1999年8月11日の皆既日食がテーマの写真集[Le 11 aout 1999]。
作者はフランスのカルチャー誌パープルの初代アートディレクター、クロード・クロスキー。
実はこれらは本物ではなく、メディアの風景写真や広告写真をいじってドラマティックな
皆既日食シーンを捏造し、大量に消費される皆既日食映像を逆説的にパロディ化しているのだ。
☆
日食の翌日、お隣の柿の木から今夏初の蝉時雨が聞こえてきた。
田町で打ち合わせ後、半年毎の検診でかかりつけの歯科医院へ。全個室の診察室すべてに
異なる天井画が描いてあるのだが、この日はとても夏らしい天井画の部屋だった (左)。
帰りに銀座のボザール・ミューで開催中の佐山泰弘さんの個展へ(右)。
看板の下には、またもや看板猫のシーちゃんがふっかり爆睡していた。
これらは全部、実在する猫をモデルにした粘土作品。仕草や佇まいのリアルさには毎度驚かされる。
(佐山さんの作品については以前書いたblogをご参照ください)
夜は赤坂でレイちゃんと打ち合わせwithビオワイン&イタリアン。帰ってから原稿を書くつもりが
大爆睡。眠っても眠っても不思議と眠かった。日食や低気圧の余波?
☆
土曜は神楽坂のアグネスホテルで女優さんの対談取材後、メトロで谷根千方面へ。
言問い通りのゆるい坂を上っている途中、お寺の庭に美しい蓮の蕾が見え、思わず立ち止まる。
上野方面に曲がると、小さな広場で流し素麺をやっていた。ちょっと生ぬるそうだったけど(笑)
東京芸大前にある築100余年の市田邸に着くと、塀から何かどろりと。。
これは昨夏に続き 芸大生が中心になって企画している「続・続・続」展(7/18~26)の
作品のひとつ。融けた氷が溢れ出しているイメージだそう。庭には同じ作者(森一朗氏)の鯉も。
着物姿の若尾文子がつつつ..とやってきそうな廊下の奥には、古箪笥の置かれた小さな蔵があり、
そこで谷中の建物についてのインタビューを上映していた。といっても古い建物を擬人化し、
あたかも建物自体が語っているように映像を加工してあって面白かった。
でもって、こちらが大平龍一氏の作品[Semishigure]。昨夏の同展では、この黄金の蝉4444匹が
市田邸の塀にびっしりへばりついていて呆気にとられたけど、今度はお座敷を占拠していた。
しかも床の間前には、巨大な蝉のご神体が鎮座し、スピーカーが内臓されたその頭部からは
リアル蝉時雨をアレンジした蝉テクノがミンミンジージーシュワシュワ聴こえてくるというあんばい。
その響きが案外クセになる快さで。CDがあったら欲しいかも(笑)
市田邸を後に、SCAI THE BATHHOUSEに寄り道したりしながら
日暮れ前の夕焼けだんだんやよみせ通りあたりをお散歩。
帰りに千駄木の「やなか珈琲店」で休憩。ここには、お店のパッケージでお馴染みの
本多廣美画伯の版画作品が数多く飾ってあると伺ったので訪ねてみたしだい。
2階の喫茶室に行くと、まるでギャラリーみたいに本多さんの作品がずらり。
満員のテーブルを縫ってたまたま座った席にあったのが、この画。
題名は[月光採集の夜]。捕虫網で月明かりを採る猫に思わず微笑。
帰宅後、窓を覗くと、暮れたての西空に 生まれたての細い細い三日月が浮かんでいた。
これは先日、並木通りのギャラリーGKから連れて来た本多さんの版画[猫と女学生]の
おまけにいただいた過去の個展案内用の葉書。すべて和紙に手刷り。手触りも味わい深い。
☆
最後に、今日も炎暑なので、ローマで開催されている世界水泳2009の涼しげな画像を――
上はフランス、下はスペインの美女たちによるシンクロナイズドスイミングの艶技。
ただ・・フランスのはテーマが“虫”で、スペインはタイトルが “恐怖の館”。えーっ?!
確かに水着は骸骨柄だし、メイクもなんだか「デトロイト・メタル・シティ」ばりにまがまがしく、
音楽も動きもおどろおどろしくて、アップ映像は気の弱い幼児だと泣いちゃいそうな迫力だった。
ローマも暑そうだなあ。
本日も、蝉時雨が絶好調。
熟んだ真夏の夢のなかを どこまでもどこまでも回遊しているような気分になる。
ぐるぐるぐるぐる。夢の出口はどっちだ。
――サメの独りごと@数寄屋橋
☆
22日は皆既日食だったけど、東京は曇天。しかも私はうっかり徹夜原稿明けで、頭も曇天。
太陽の見えない窓外をチラ見しつつ、ソファに横たわってNHKの生中継をうとうと眺める。
各都市の映像(一部は日食中継ではもはやなく、暴風雨中継っぽかったけど)が流れる中、
ピーカンだった硫黄島の皆既日食の瞬間、その神々しさに一気に覚醒。
というか 予想外の突発的落涙。
太陽の絶対的存在と、太陽を覆う影によってその存在を知らしめる月。
おてんとうさまとおつきさまへの畏怖と慈愛が、陰陽ぴたりと交わる恍惚の瞬間というか。
アマテラス神話も皆既日食の暗喩という説があるが、
地動説も電気もオゾンホールも無かった時代の方が、太陽と親密に生きていたのかもしれない。
これは超高感度カメラが捉えたプロミネンス(紅炎)。
どんなアートも、これには敵わないかも。
実は呑気にも前夜になって日食観察アイテムを渋谷の東急ハンズや電気量販店とかで探したら
案の定すべてSOLD OUT。この不況でメーカーも慎重に作り控え、店側も買い控えたのだとか。
「マスコミが変に騒いでるけど、日食が終われば一個も売れないからねえ」と某店スタッフ。確かに。
まあ、メディアでは次の皆既日食は26年後と煽っているけど、それは日本に限ったお話。
たとえば来夏イースター島に行けば、皆既日食が見られるチャンスはあるわけで。
専用眼鏡の代りに、ポスター用の筒を使って即席ピンホール望遠鏡を前夜にちゃちゃっと作った。
底にはBLUE NOTEのコースターをテープで貼り、中心に開けた小さな穴から三日月型に欠けた
陽光を投影するつもりだった…が、曇天で叶わず。ただ、東京の部分日食が最大になった11時台、
妙に肌寒さを覚え、慌ててパーカーを羽織った。薄暗さまでは感じなかったけど。
左は数年前に古書店で見つけた1999年8月11日の皆既日食がテーマの写真集[Le 11 aout 1999]。
作者はフランスのカルチャー誌パープルの初代アートディレクター、クロード・クロスキー。
実はこれらは本物ではなく、メディアの風景写真や広告写真をいじってドラマティックな
皆既日食シーンを捏造し、大量に消費される皆既日食映像を逆説的にパロディ化しているのだ。
☆
日食の翌日、お隣の柿の木から今夏初の蝉時雨が聞こえてきた。
田町で打ち合わせ後、半年毎の検診でかかりつけの歯科医院へ。全個室の診察室すべてに
異なる天井画が描いてあるのだが、この日はとても夏らしい天井画の部屋だった (左)。
帰りに銀座のボザール・ミューで開催中の佐山泰弘さんの個展へ(右)。
看板の下には、またもや看板猫のシーちゃんがふっかり爆睡していた。
これらは全部、実在する猫をモデルにした粘土作品。仕草や佇まいのリアルさには毎度驚かされる。
(佐山さんの作品については以前書いたblogをご参照ください)
夜は赤坂でレイちゃんと打ち合わせwithビオワイン&イタリアン。帰ってから原稿を書くつもりが
大爆睡。眠っても眠っても不思議と眠かった。日食や低気圧の余波?
☆
土曜は神楽坂のアグネスホテルで女優さんの対談取材後、メトロで谷根千方面へ。
言問い通りのゆるい坂を上っている途中、お寺の庭に美しい蓮の蕾が見え、思わず立ち止まる。
上野方面に曲がると、小さな広場で流し素麺をやっていた。ちょっと生ぬるそうだったけど(笑)
東京芸大前にある築100余年の市田邸に着くと、塀から何かどろりと。。
これは昨夏に続き 芸大生が中心になって企画している「続・続・続」展(7/18~26)の
作品のひとつ。融けた氷が溢れ出しているイメージだそう。庭には同じ作者(森一朗氏)の鯉も。
着物姿の若尾文子がつつつ..とやってきそうな廊下の奥には、古箪笥の置かれた小さな蔵があり、
そこで谷中の建物についてのインタビューを上映していた。といっても古い建物を擬人化し、
あたかも建物自体が語っているように映像を加工してあって面白かった。
でもって、こちらが大平龍一氏の作品[Semishigure]。昨夏の同展では、この黄金の蝉4444匹が
市田邸の塀にびっしりへばりついていて呆気にとられたけど、今度はお座敷を占拠していた。
しかも床の間前には、巨大な蝉のご神体が鎮座し、スピーカーが内臓されたその頭部からは
リアル蝉時雨をアレンジした蝉テクノがミンミンジージーシュワシュワ聴こえてくるというあんばい。
その響きが案外クセになる快さで。CDがあったら欲しいかも(笑)
市田邸を後に、SCAI THE BATHHOUSEに寄り道したりしながら
日暮れ前の夕焼けだんだんやよみせ通りあたりをお散歩。
帰りに千駄木の「やなか珈琲店」で休憩。ここには、お店のパッケージでお馴染みの
本多廣美画伯の版画作品が数多く飾ってあると伺ったので訪ねてみたしだい。
2階の喫茶室に行くと、まるでギャラリーみたいに本多さんの作品がずらり。
満員のテーブルを縫ってたまたま座った席にあったのが、この画。
題名は[月光採集の夜]。捕虫網で月明かりを採る猫に思わず微笑。
帰宅後、窓を覗くと、暮れたての西空に 生まれたての細い細い三日月が浮かんでいた。
これは先日、並木通りのギャラリーGKから連れて来た本多さんの版画[猫と女学生]の
おまけにいただいた過去の個展案内用の葉書。すべて和紙に手刷り。手触りも味わい深い。
☆
最後に、今日も炎暑なので、ローマで開催されている世界水泳2009の涼しげな画像を――
上はフランス、下はスペインの美女たちによるシンクロナイズドスイミングの艶技。
ただ・・フランスのはテーマが“虫”で、スペインはタイトルが “恐怖の館”。えーっ?!
確かに水着は骸骨柄だし、メイクもなんだか「デトロイト・メタル・シティ」ばりにまがまがしく、
音楽も動きもおどろおどろしくて、アップ映像は気の弱い幼児だと泣いちゃいそうな迫力だった。
ローマも暑そうだなあ。
本日も、蝉時雨が絶好調。