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短編集『逢魔宿り』

2023年08月01日 23時00分00秒 | 書籍関係

[書籍紹介]

「あまやどり」と読む、
三津田信三のホラー小説短編集。
というより、怪異譚集といった方がいいかもしれない。
どの短編も、
作家の三津田信三が知人から聞いた、
という体裁で語られる。

「お籠りの家」
その家の血筋の男子への決まりで、
七歳になる時、人里離れた不思議な家に
七日間籠らなければならないという話。
奇妙なルールに縛られ、老婆の世話を受け、
結界を破って侵入しようとする何者かとの闘争が恐怖を呼ぶ。

「予告画」
教え子に、友と交わらず、休み時間も絵を描いているこどもがいた。
しかし、ある時、教師は、それが「予知絵」ではないかと推察する。
通学路で吠える犬が首輪だけで描かれた直後、
犬は姿を消す。
ゲームを描いた絵に在る丸い物体。
その直後、ドッジボールのボールを受けて、生徒の一人が転倒する。
夏休みの絵に書かれた祖母が死人のように描かれ、その後、実際に死亡する。
そして、予知画の被害者になるかもしれない恐怖が教師を包む。
バイクに轢かれそうになったり、階段から転げ落ちそうになる予感。
そして、プールでの溺れ死に。
更に、意外な事件が起こる・・・

「某施設の夜警」
山の中の宗教団体施設の夜警についた男が、
夜中のオブジェ群の巡回中に襲われる怪奇現象の数々。
最後に意外な事実が明かされる。

「よびにくるもの」
寝たきりになった祖母に頼まれて、
電車に乗って香典を持っていった不気味な家での出来事。
その家から来たと思われる訪問者に祖母が命を終わらせられる。
更に、主人公を訪れる者が来て・・・

「逢魔宿り」
雑誌に連載している連作怪奇短篇について、
昔仕事をしたデザイナー・松尾から連絡が入った。
是非会って話がしたいというので訪問した事務所で話を聞く。
日課の散歩中に立ち寄った四阿(あずまや)で出会うある一家の人たちの語る怪異譚。
子供時代に山小屋で遭遇した怪異、障子に映った奇妙な影絵、
宿直していた学校で起きた異変。
彼らが怪異譚を語るたび、なぜか近隣で事件が多発し・・・

どの作品もオチや種明かしなどなく、
純粋な怪異譚。
意味が分からない、しかし意味のあるような、
恐怖が漂う短編集。
それだけに、ゾッとする瞬間があった。

著者の三津田信三は、ホラーとミステリを融合させた独特の作風の方。
日本の伝統的怪異譚の継承者と思われる。



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