[書籍紹介]
浅草寺境内の正顕院で寺子屋を開いている大滝信吾。
実家は兄が継ぎ、350石で御前奉行をつとめているが、
信吾は深川芸者を母とする妾腹の弟。
そこで、家を出て、正顕院の住職光勝の世話で
子どもたちを相手に寺子屋をやっている。
その子どもたちのいろいろな問題を描く。
たとえば、父が博打をして借金を抱えている源吉、
博打場の用心棒をする父を案じる太一郎、
妾の子として苦しむおゆう、
突然得意先を失った棒手振り魚屋の息子三太、
その過程で、裏家業元締の
狸穴の閑右衛門との関わり。
更に、正顕院の住職光勝も元は武士で
敵討ちとして狙われている。
兄からは家を継がないかという話が来たり、
長屋の立ち退きや兄の食材調達にも支障が出る。
最後のくだりて、意外な人脈が発揮される。
ただ、訳ありの武士が市井の寺子屋を営む、
という話には既視感があり、新味はない。
が、下町の人々が生き生きと描かれる上、
四季折々の風景描写は、砂原浩太朗らしく、
読むのに心地よい。
角川春樹事務所の読書情報誌「ランティエ」に
2023年9月号から24年7月号に隔月連載したものを
一冊にまとめた。
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