Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

『血も涙もなく』

2006-12-10 00:41:54 | J.J.Y. Filmography


(Image source: nkino)
シネマート新宿オープニング記念シネマフェスティバルより、『血も涙もなく』(2002年 監督:リュ・スンワン)。
激しい・・・バイオレンスが激しすぎて・・・通常なら目を覆うところなのだけど、ストーリーがよくできている。狙うものは1つで、それをめぐって、さまざまな人間が絡み合うのだけど、その絡み方がめちゃくちゃ面白い。ただ、万人ウケは絶対ありえない作品。

前科者で借金の取立てに追われる女タクシー運転手役にイ・へヨンssi、元(ボクシングの)ラウンドガールで、ボクサー崩れの暴力的な男(チョン・ジェヨン)と縁を切れずにいる女役にチョン・ドヨンssi、この女性主人公2人と、彼女たちを取り巻く俳優陣が個性豊か。この2人の女優によるアジュンマとアガシの組み合わせがなかなかいい。イ・へヨンssi はなんだかカッコイイアジュンマだ。

自分の作品の中では、女性をアクセサリーみたいに扱いたくないと、先日のフィルメックスでもスンワン監督が語っていたけど、この作品では、男も女も対等に殴りあう。女がかなうはずもないのに、男に執拗に食らいついて、強靭なのだ 。時として、バイオレンスに屈しそうになるので、痛ましいのだけど。

ハナマル印  のチョン・ジェヨンssi は、ボクサー崩れのチンピラ役でこれまたバイオレントすぎる男、自分の女にも容赦なく手をあげる・・・一見、刹那的なヤケッパチのバイオレンスのように見えるのだけど、どこか哀しげで、自分でコントロールできなくなるほどエスカレートしてしまうところには、狂気さえ感じる。

あまりにアクションが激しすぎて撮影中負傷したそうだけど、そりゃケガもするよ・・・チョン・ドゥホンssi(兼アクション監督)と対峙するシーンなんて、相手が強すぎる、無理だよー、死んじゃうよー、ジェヨンssi が・・・と叫び続けたのだけど、もちろんボコボコ  にされてた。最後はちょっと切なくて、私的には胸キュンだったけど。

カレにとってこの作品は、『ガン&トークス』直後の作品なのだけど、『ガン&トークス』のジェヨン役とは、役柄がまったく違うという以上に、容貌も雰囲気もガラリと変わっているので、ビックリ 。『トンマッコル・・・』の後の『ウェディング・キャンペーン』もまったく別人のように見えるし、いつも変幻自在なのだろうか。一体どういう役作りをしているのか聞いてみたい。


ちょっとリュ・スンボムssi 、私の大事なジェヨンssi を・・・そして、おいおい、そこで持ってくか、その鞄・・・スンボムssi のコミカルな役どころも見逃せなくて、そのマヌケな行動ぶりが何ともタイミングよく組み込まれているのだけど。しかし、したたかなヤツ・・・と思ったけど、やっぱり、マヌケだったのかも。

どうしても、バイオレンスの方に目を奪われがちなのだけど、作品全体の組み立て方に注目すると、面白さが分かるような気がする・・・スンワン監督、恐るべし・・・


『麦の穂をゆらす風』

2006-12-01 23:20:03 | Cinema な時間

(Image source: muginoho. jp)
久々に正統派の映画を観た・・・って、今までのはなんだったのかって(笑)。特に意味はなく、単に私的趣味に偏りすぎているものだから・・・

さて、今年のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品、ケン・ローチ監督『麦の穂をゆらす風』。

アイルランドの英国からの独立運動が背景となっている作品なので、反英映画と呼ばれているが、個人的は反米や反英という言葉があまり好きでないので、そういう色眼鏡で観たくないという意識がどうも働いてしまう。結局のところ、人間の心の豊かさとは何か、人間の暮らしとは何かということに尽きるような気がする。

人間が武器を持つには、それなりの理由や過程があるのだけど、実はその正当性はどこにもないような気がする。映画を観ながら、「戦うなら素手で戦え」とずっと心の中で叫んでいた。一方が武器を手にすれば、もう一方はもっと大きくて沢山の武器を、そして一方はそれを見てさらにもっと大きくて沢山の武器を・・・と「もっと、もっと」の繰り返しだ。現在、世の中で紛争と呼ばれるものは、この愚かで果てしない繰り返しの一部だ。

タイトルにもなっているアイリッシュ・トラッド『麦の穂をゆらす風』のその牧歌的なメロディラインとは裏腹に、歌詞は抵抗の詩だ。この作品に登場するアイルランドの人々が誇りをかけて戦う姿には胸打たれるが、悲しみの帯びた瞳が印象的だ。最初は大英帝国が敵だったはずなのに、いつのまにか、同胞に手をかけ、兄弟にも手をかけ、悲しみに連鎖が止まらないのはなぜだろう。

役者も揃っていていい。アイルランドの荒涼とした山や谷を吹きぬける風を肌身で感じてきたかのように、リアリティ溢れる作品