Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

『ククーシュカ ラップランドの妖精』(DVD)

2006-12-23 23:45:11 | Cinema な時間


(Image source:amazon)

トンマッコルと設定が似ていてパクっているだの、お色気版トンマッコルというコメントを見かけたので、聞き捨てならん・・・早速検証しなくちゃ、ということで、『ククーシュカ ラップランドの妖精』(2002年 監督:アレクサンドル・ロゴシュキン)。第24回モスクワ国際映画祭最優秀監督受賞。

『ククーシュカ』の製作・公開年は2002年、トンマッコルの舞台版は2002年12月に上演されているのだから、この時点でパクリというのは無理。舞台版トンマッコルの上演が決まったのは、『ガン&トークス』(2001年)の撮影時だったとなんかの記事で読んだ記憶がある。舞台版の存在を知らない人のコメントだったのかな。なんだ、なんだ、もうすでに安心モード

戦争に疲れた男たちが、心の安らぎの場を見つけるが、やがて立ち去る・・・というところはトンマッコルと同じだけどね。そのラインだけが同じ。『ククーシュカ』には『トンマッコル・・・』にはない要素がえぐりだされているという感じかな

タイトルにしても、「トンマッコル」が「子供のように純粋な」という意味に対して、「ククーシュカ」には子供どころか、オナな含蓄が・・・(笑)

『ククーシュカ』を『トンマッコル・・・』に絡めて見てしまうと、「トンマッコルへようこそ 妄想編」が私の頭の中で出来上がってしまいそうなので、まったく別物作品として楽しむことに。ほっ・・・

フィンランド最北の地ラップランドで、ロシア軍とドイツ軍、そして自国の領土回復のためドイツに同盟していたフィンランド軍が戦っていた頃のこと。平和主義であるがために仲間に置き去りにされるフィンランド軍のヴェイッコ、味方の誤爆によって重傷を負ったロシア軍大尉イワンが、ラップランドに暮らす女アンニに出会う・・・この3人、それぞれフィンランド
語、ロシア語、サーミ語しか理解することができないにもかかわらず、不思議な生活が始まる。

『ククーシュカ』の邦題に付けられた
「ラップランドの妖精」の「妖精」というのは、サンタクロースの故郷ラップランド的なファンタジックなイメージでつけたのか。どちらかというと、ラップランドの凍てつく荒涼としたツンドラのイメージの方が先立つし、妖精のイメージを持つファンタジックな存在はどこにも見当たらない。2人の兵士を助ける女も「女」でしかなく、原始的な存在。

この3人は共通の言語を持たない。やたら3人ともおしゃべりなのだけど、相手の言っていることを理解していないため、意思疎通というものがない。それぞれの会話の行き違いが、あまりにも行き違い過ぎて、お互いの大いなる行き違いに気づくこともなく、理解しあえない状況を受け入れることが日常という点が面白いのだけど・・・。人間、言葉は関係ないとでも言いたげだ。アンニの家に迷い込んだ兵士2人とアンニの関係は、原始的、つまり男と女でしかなく、やがて、2人の男はそれぞれの故郷へ帰っていく。

そして、エンディングはそう来るか 。ククーシュカとは、ロシア語で「カッコー」という意味で、カッコウは他の鳥の子供を育てる習性があるそうだ。実はアンニの本当の名は「ククーシュカ」。アンニは愛称だった。アンニそのものが「カッコー」だったのだ。他の種族の男の子供を育てる女。そして、双子だし・・・。平和の証ってこと? 

何が起こっているのかよくわからないままにストーリーが進むので、思いがけない展開が楽しめる。そして、凍てつく荒涼とした風景には、人の温もりがより一層貴重なものに思える。