Addicted To Who Or What?

引っ越しました~
by lotusruby

『麦の穂をゆらす風』

2006-12-01 23:20:03 | Cinema な時間

(Image source: muginoho. jp)
久々に正統派の映画を観た・・・って、今までのはなんだったのかって(笑)。特に意味はなく、単に私的趣味に偏りすぎているものだから・・・

さて、今年のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品、ケン・ローチ監督『麦の穂をゆらす風』。

アイルランドの英国からの独立運動が背景となっている作品なので、反英映画と呼ばれているが、個人的は反米や反英という言葉があまり好きでないので、そういう色眼鏡で観たくないという意識がどうも働いてしまう。結局のところ、人間の心の豊かさとは何か、人間の暮らしとは何かということに尽きるような気がする。

人間が武器を持つには、それなりの理由や過程があるのだけど、実はその正当性はどこにもないような気がする。映画を観ながら、「戦うなら素手で戦え」とずっと心の中で叫んでいた。一方が武器を手にすれば、もう一方はもっと大きくて沢山の武器を、そして一方はそれを見てさらにもっと大きくて沢山の武器を・・・と「もっと、もっと」の繰り返しだ。現在、世の中で紛争と呼ばれるものは、この愚かで果てしない繰り返しの一部だ。

タイトルにもなっているアイリッシュ・トラッド『麦の穂をゆらす風』のその牧歌的なメロディラインとは裏腹に、歌詞は抵抗の詩だ。この作品に登場するアイルランドの人々が誇りをかけて戦う姿には胸打たれるが、悲しみの帯びた瞳が印象的だ。最初は大英帝国が敵だったはずなのに、いつのまにか、同胞に手をかけ、兄弟にも手をかけ、悲しみに連鎖が止まらないのはなぜだろう。

役者も揃っていていい。アイルランドの荒涼とした山や谷を吹きぬける風を肌身で感じてきたかのように、リアリティ溢れる作品