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ウロコのつぶやき

昭和生まれの深海魚が海の底からお送りします。

最近読んだ本とマンガ

2008-09-06 01:13:06 | 漫画
永久帰還装置 (ハヤカワ文庫 JA (918))

大分前に出てたんですが、ずっと読みそびれてました。
新装版で出てたのを買ってやっと読めました。

最後まで読んで、やっとこの作品が「SF小説」ではなく、「SF小説の形を借りた恋愛小説」であることに気づきました。「恋愛小説」ってジャンルが好きな人は、多分この本読まないだろうなと思うような恋愛小説ですが。
でも見方によっては、ものすごく純粋な恋愛小説って気もしないではないです。
だって「愛とは何か」をとことんつきつめて考える、ただそれだけのために「多次元構造の世界を渡り歩き、世界に干渉する邪悪な高次の存在であるボルターと、それを追う永久刑事。彼らの干渉を受け、変容する世界に巻き込まれた女は…」とか言う大掛かりな舞台装置をわざわざ用意してる訳ですよ。
そんな訳でこれは、とことん理詰めで語られる愛の物語だと思いました。
結論から言えば、タイトルの「永久帰還装置」っていうのが、即ち「愛」のメタファーなんでしょうね。世界が変容しても、自分が変容しても、自分の帰るべき場所がどこなのかを教えてくれる道標。
本来比喩的に使われるであろう表現を、本当にやってしまう所が流石です。
そして相変わらず、猫が重要なキーポイントになってる所が神林さんらしい。
個人的にはキベーレのキャラクターがちょっと新鮮でした。

***

聖(セイント)☆おにいさん (2) (モーニングKC (1720))
聖☆おにいさん 1 (1) (モーニングKC)

「東京の立川で同居するブッダとイエス・キリスト」という設定が気になって買ってしまったマンガ。
およそ「生活感」からはほど遠い崇高で神聖な存在であるはずの聖人二人を、「生活感」のド真ん中に投げ込んでそのギャップを楽しむギャグマンガです。
パロディというのは元ネタを知らないと楽しめないものですが、神様仏様ならみんなが知ってるからその点誰にでも楽しめる…と思いきや、結構マニアックなネタも入ってるので、仏教とキリスト教に関してそれなりに知識があるとより楽しめるかも。あと、宗教に対してあんまり堅苦しく考えない方が楽しめるかもです。
「ジョニデに似てると言われて喜ぶイエス・キリスト」とか、結構いい感じに意表を突かれました。
新選組コスプレまでやっちゃうキリスト様には、是非眠狂四郎のコスプレにも挑戦して頂きたい(眠狂四郎には、「顔がキリストにそっくり」という設定があるのです…)。

***

妖怪研究家ヨシムラ (怪COMIC)

livedoorのデイリー四コマでやってる五コマ漫画。まさか本当にデイリー四コマから単行本化されるとは思いませんでしたが、デイリー四コマでも人気があったし、そこから「怪」への掲載があったりして、見事単行本発行と相成りました。
胡散臭さと普通っぽさを併せ持つヨシムラの妙なリアリティと、妖怪のくせにやたら人間臭い妖怪たちがたまりません。表紙にもなっているカッパのブリックとヨシムラの奇妙な友情(?)など、随所にホロリとくるネタもあり、たかが四コマと侮れない味わい深い作品になっています(五コマだけど…)。
好きな妖怪は
・カッパのブリックとその友達(子供って不条理だ)
・まくらがえし(イキがってる小物)
・あかなめ(スイーツ(笑)なねえさん)
・あずきとぎ&あずきはかり(職人気質)
・男泣きじじい(ハードボイルド)
・あまのじゃく(ハードボイルド)
・芹沢教授(そう言えば人間だった)
…その他、枚挙に暇がありません。

***

イヌジニン ―犬神人― (1) (怪BOOKS)

ついでに買ってみた、「ヨシムラ」と同じ作者のマンガ。
犬神人とは、平安時代に京都のある神社に仕えた下級の神職のこと。神社の様々な汚れ仕事を請け負い、人々に畏れられていたとか。
そんな犬神人たちが現代の日本で活躍し、淀んだ「気」と人間の暗い思念の結びつきによって生まれる「怪(け)」を退治して行くという設定のマンガです。
「ヨシムラ」とはうって変わって大人向けのマンガです。絵柄が何か、エグいネタを描くときの富樫義博みたいな感じになってるんですが…(ていうか、基本は伝奇「ホラー」なのでその点ご注意を)。
「ヨシムラ」からもちらちら垣間見える、作者の知識の豊富さと人間観察眼の確かさはこの作品でも健在です。
1話完結で4話収録。1話で「目」の広田さん、2話で「耳」のもときくん、3話で「手」の三隅さん、4話で「声」の樹さんと順番にフューチャーして行って(でも一貫した主役は三隅さんぽい)、この1巻で設定の大まかな全体像が把握できる感じです。上手いね。

『蒼天航路』王欣太(原作/李學仁)

2007-08-29 22:06:35 | 漫画
文庫にして全18巻。
友人がGWに持って来たヤツを、今回の帰省でやっと読破しました。
一応ネタバレありですが、元が超有名な話なのでネタバレも何もないかも。

中国の三国時代を舞台に、曹操(曹孟徳)の人生を描いた漫画です。敢えて、三国志漫画とは言いたくない感じ。
日本で「三国志」と言えば、「三国志演義」に基づいた作品が多いけど、これは講談と史書を元に創られた「小説」であって、書いてあることは必ずしも史実ではない。
で、この「蒼天航路」は「史書」よりの漫画だと友人は言ってたけど、その割に史実にはない演義オリジナルエピソードの「美女連環」とか「桃園の誓い」エピソードもしっかり入ってます。
決して「史書」に忠実な訳でも「演義」を否定してる訳でもなくて、それら諸々の資料を元に、独自の「三国時代ストーリー」を再構築しようと試みてるのかな。壮大ですね。

でもキャラクターがすごく漫画的に強烈にデフォルメされてて、あんまり真面目な歴史モノとしてはおススメできないかなあとは思いました。でも、デフォルメされているお陰で漫画としては面白かったし、あと、やたら登場人物が多い「三国志」モノの中でも「あんまり」誰が誰だか分からなくなるということが起きにくかったので、個人的にはOKです(やっぱり多少は混乱しましたけど)。

でもまあ、友人が「正史」っぽいと感じた理由も分かります。
「演義」では徹底して、蜀の劉備をヒーローに、魏の曹操を悪役に描いている。それに対して「蒼天」は曹操をヒーローとして中心に据えているという点で、あんまり「演義」っぽくは感じられないかも。
でも、曹操をヒーローとして描くこと自体は、それほど斬新には感じられなかったですね。元々日本人には曹操好きが多そうだし(日本人に織田信長が人気だ、と中国人に言うと、中国人は、「えー、だって信長って曹操と同類じゃん」と応えるという話をどっかで読んだんですがどこだったかな)。
何か、劉備の「仁」とか「徳」っていうのは、漠然としてて分かりにくい。その点曹操はすこぶる頭がキレる。理知的で論理的。
陳舜臣は理性の人だから、彼の書く三国志も曹操びいきだったと思うので、実は私はそんなに曹操が虐げられてるとは思ってなかったり。横山光輝の三国志でも、曹操は悪役っていうよりは、主人公のかっこいいライバルってイメージじゃなかったでしたっけ?

そんな訳で、曹操くんがヒーローの漫画なんですが。
が。

意外なことに、この漫画の劉備(劉玄徳)がえらくかっこ良かった。
だらしなくていい加減だけど憎めない。飄々としてつかみ所がなく、誰でも受け入れ、水のように相手の心に入って来る、とてつもなく懐の広い男。
「演義」ベースの聖人君子な優等生くんより、はるかに生き生きとして魅力的な劉備だと思ってしまいました。「王道」とはこういうことかと。

頭の良い人が、その才覚を以て権力の座に着くことを「覇道」と言います。普通はこういう人が「英雄」とされますが、中国ではそうではない。
「覇道」は所詮、人の道なのです。天の意に背いて、人間が勝手に権力の座に着くことは、決して褒められたことではないのです。
曹操はこのタイプ。徹底した頭の良さで、自らの知略によって一国の主人へと上り詰めた。
しかし中国では、一国の長というものは本来、「天によって任じられた者」にしか許されないものなのです。
それが「王道」。知謀や知略を駆使しなくても、その仁と徳により、天の方からその者に位を与えるのが理想とされている訳です。
劉備自身、最初は大望は抱いていないし、増して権力を得るための具体的なプランなんて持っていない。なのにまるで天が彼を導くように、運命が彼を駆り立てる。人が集まり、人が彼を望む。

天に望まれた者。王道を行く者。あらゆる人を受け容れる、大いなる「空」。
劉備という人が「英雄」である所以を、これほど分かりやすく伝えてくれた作品はなかったなーと思いました。

それに対して曹操は…確かにかっこいい。素晴らしくキレる頭、人並み外れた剛胆な精神力と実行力。過去や因習に捕われない斬新で合理的な発想の数々。その上芸術的センスも良くて詩も上手なスーパーマンなんですが…どう見てもフォローのしようのない「悪事」まで、「それも全部分かった上でやってるんだよ!」的なフォローが入るのがちょっと見てて苦しかったです。

***

まあ、結局曹操も劉備も志半ばに倒れた上に国自体も結局長続きせず、最終的に統一国家(晋)を建てたのは曹家の家臣の司馬懿(司馬中達)の一族だったというのがオチなんですけどね。
そこまで行かずに、曹操が死んだ所でこの漫画は終わります。

個人的に、終盤ちょこちょこ出て来ては色んなことを呟く、ヒッピー兄ちゃん風の何晏が面白かったです。

おまけ。
一応この漫画のネタバレなので要反転。
最後の最後、あれだけ長年連れ添って尽くして貰った卞玲瓏を差し置いて水晶かよこの男は!と思ったのは私だけですか?

漫画の感想

2005-04-19 23:38:59 | 漫画
まずはお礼。
Web拍手をクリックして下さった方、ありがとうございます。
いきなりブログのリンク集に張り込むって良く考えたら暴挙ですね。
こんな管理人におつき合い頂いて、本当に感謝しています。

ということで本題

その1 眠狂四郎(廉価版)第3集 斬鬼情炎篇

第2集が多少まったり風味だった反動なのか(いや、裏柳生とか幕府隠密集団とか大量に斬ってたけど、なんていうか、雑魚扱いなんです裏柳生)、第3集はのっけから激しいバトルが連続で展開。充実してます。大満足。
唐突に出て来た風魔小太郎がカッコ良過ぎです。色んな意味で。
狂四郎さんの祖父さんも登場。この祖父にしてこの孫有り。
瀬戸内界篇では師匠が登場。でも個人的には、師匠より保坂の爺さんの方がいい男だと思います。心意気に惚れ惚れ。
ていうかこの漫画、意外に爺ちゃんキャラが皆すごくいい味です。好々爺から因業爺までよりどりみどりです。備前屋も渋カッコいいと思います。
で、次に引っ張る終盤の強敵は白鳥主膳。

眠狂四郎より強く
眠狂四郎より美しく
眠狂四郎よりも危険な男!!

……というナイスなキャッチフレーズを背負っていますが、漫画で見た限り、「妖美」っていうより「可愛い」タイプに見えます。女顔かつ童顔で性格も子供っぽいし。ショタ的にはツボかも知れない。文字若の姐御と絡む辺りもいい仕事です白鳥主膳。

***

その2 鋼の錬金術師 第1~6巻

流斗さんからの借り物。
……で、いざ感想を書くとなると実はちょっと困ってます。
なんていうか。

減点法で点を付けると限り無く満点になる漫画なんですよね。ケチを付ける所がない。
あっさりさっぱりして分かりやすい絵柄、
ちょっとベタだけどその分わかりやすい、魅力的なキャラたち、
そして良く練られた設定とストーリー。
チョコチョコ入るギャグにもセンスが感じられます。
……なのにこう、今いちのめり込めないのは、単に私の好みの問題なんでしょうか。
私が好きになるには真っ当過ぎるのか?
いっそ絵柄が由貴香織里なら萌えられるんでしょうか。
ていうか、どうも私はホークアイ中尉が好きなようなんですが、なんかこう、もひとつ出番が地味な気がする。中尉とマスタング大佐の関係って、「天使禁猟区」のバービエルとラファエルに似てると思うんですけどね……。
ラフィーくんも大佐以上に脇役だったけど、存在感はもっと派手濃かったような気がする。その違いがどこから来るのかはよく分かりませんが、真面目に調べて評論したらちょっと面白いかも知れません。

とか色々言ってるけど、面白いし続きは気になるし読みたいと思ってるんですよ。話良く出来てると思うし。
……ただ、錬金術のこととか、作者はちゃんと調べてるっぽいけど……。少年漫画として面白くするために、敢えて間違った描写をしてるんだと思うんだけど……。
元々日本では知られていない分野の話なだけに、この漫画色々誤解を招いているような気がしないでもありません。
ていうか「賢者の石」って「第一質料(プリマ・マテリア)」のことじゃなかったっけ?
この漫画の設定では違うものらしいけど。ていうかそもそも錬金術の使用目的自体全然違うからなあ……。

眠狂四郎の円月殺法、受けてみよ!

2005-03-21 00:14:00 | 漫画

……きっかけはコンビニの廉価版コミックスでした。
なにげに背表紙見て、ああ、私好みの剣士キャラがいるなあと。
で、よくよくタイトル見たら眠のダンナじゃござんせんか。

元々好きだったんですよ、柴田錬三郎。
元はナベケンさん萌えから『御家人斬九郎』読んで、キレのいい文体(尤も、一昔前の作家さんはみんな文章は上手ですけどね)とシュールなキャラにホレました。淫微だけど下品じゃないエロにも萌え。
あと、『忍者からす』かな、手許にあるのは。後は借り物や図書館でチョコチョコと。眠狂四郎は『無頼控』しか読んだ事ないですが。
基本的に柴錬キャラは、「キャラとして傍目で見る分には面白いけど、現実にいたら絶対に関わりあいになりたくない」という私の好みにピッタリの人が多くて大好きです。

そんでもって、コミック版。
廉価版じゃない正規の単行本は新潮社のバンチコミックスから出ている模様。もう10巻くらい出てるのですね。
作者は柳川喜弘という方(もちろん柴田錬三郎と連名)。
……このコミックバンチって、昔のジャンプ系作家が多いなあ……MOMOTAROのにわのさんとか描いてるよ。

で、眠のダンナを描いてる柳川という人も、原哲夫門下生の一人ってことは、元々はジャンプ系なんでしょうね。
絵柄はあくまで男臭く、でもゴツ過ぎずクド過ぎずいい感じ。
眠のダンナは天パでロン毛ですが(※ハーフなので、別に天パで間違いではない。市川雷蔵版とは大分イメージ違うけど)、他のキャラは服装も髪型もわりと時代考証がしっかりしてて、台詞回しもちゃんとしてるので気持ちよく読めます。

そしてもちろん眠のダンナはエロカッコイイ。下唇と褌が色っぽくてたまりません。
ストーリーは原作と大分変えてる感じですが、何者にも縛られず自由奔放なようでいて、その実重い宿命を背負った狂四郎のニヒリズムはちゃんと出てると思います。
もちろん殺陣もバッチリでございます。
今回のジャスティライザーで、何故グレンがデモンナイトを倒せたのか納得できない人は、眠狂四郎を読んでみられると良いでしょう。
円月殺法の恐ろしさが良く分かります。

でもなんか眠のダンナ、二巻辺りからキャラ崩れてないか?

あと、エロシーンもありますが、原作に比べると控えめだと思われます。ていうか、原作そのまま絵にするととんでもないことになります。
……なんせ斬九郎も原作じゃ、お姫さまのとんでもない所に刀突き付けてたからなあ……。

コミック版のエロと言えば、綱代さんが好みですね。
地味な顔と真面目な性格で武芸に長けた、侍女というより忠臣と言った方が良いような硬派な腰元。……なのにケツ丸出し、という辺りがたいへん柴錬っぽくて良いと思います。

あと、文字若の姐御も好き。話的には美保代さんが正ヒロインぽいポジションだけど、キャラ的に動かしやすいのは姐御だろうなあと思います。
……ていうか、いつの間にか姐御の家、たまり場化。眠のダンナまでなにげに居着いている(それまでは、どこで寝起きしてるか謎でした。……風呂にも入ってなかったらしいし、まさか野宿?)。
ていうか、姐御とダンナは時々、まるで長年連れ添った夫婦のように見えます。立ち食い蕎麦デートが萌えでした。

以上、舌の根も乾かぬ内の萌え語りでした。
あとは「バイオハザード4」のレオンに思いきり萌えたい所なんですけどね。
困ったことに私はゲームキューブを持ってない。