報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

コラプション

2006年03月08日 21時19分42秒 | ●パキスタン地震
今回のパキスタン北部地震の被災地の写真レポートもほぼ終了です。
ご覧いただいた方々の中には、いま何が必要なのか、何をすればいいのか、それを知りたいと思っている方もおられるかもしれません。

そうした問いにはたぶん僕はお答えすることができないと思います。
必要な物はすべてです。おカネも含めておよそ想像できるものすべてです。では、それらを届ければ被災者の状況は改善されるのか。答えは、否です。

すでに国際社会から総額60億ドルもの援助が取り付けられています。これが満額提供されることはないにしても、かなり巨額であることに変わりはないでしょう。この巨額の援助金のすべてが被災者の支援や復興に使われるということはありません。この巨額のおカネは多くの政府機関や部署、外部機関や業者を経由して流れていきます。

過去の多くの例は、届くはずのおカネや物資が途中で行方不明になるというのはごく普通のことである、ということを教えています。

あまり考えたくないことではあると思いますが、それが現実です。多くの善意の寄付が地中深く吸い込まれている可能性は非常に高いのです。ただし、使途不明金の存在が公にされることはほとんどありません。したがって、誰にも証明することはできません。しかし、証拠がないからといって、腐敗や不正は存在しないと考えるには無理があります。

まだ、60億ドルすべてが届いているわけではないですが、国際社会が提示しているこの莫大な援助金額と、現実の被災者のテント生活の劣悪さを比べると、この落差はどこから生まれるのかと誰もが考えると思います。そして、誰もが同じ結論になると思います。しかし、誰もそれを口にできません。

スリランカの津波被災者の救援活動に携わったアメリカ人と、一週間ほど前にバンコクで話しをしたのですが、被災者の劣悪な状況はスリランカもまた変わりないようでした。多額の援助金がありながら、なぜどこもこのようなことになるのか、と水を向けると彼は「コラプション」とだけつぶやきました。

何とかならないのか、と思われるでしょうが、何ともならないのが現実です。
相手は見えないのです。それは個人の場合もあれば、組織の場合もあるでしょう。政府機関の場合もあれば、民間の場合もあるでしょう。地元の場合もあれば、海外からやって来ることもあるでしょう。

原理的には、世界の飢餓や貧困がなくならないのと同じではないのか、とも思いはじめています。

「途上国は、なぜ飢えるのか」
http://blog.goo.ne.jp/leonlobo/e/0fc4adb4a94bf22503588efcdbff4fa0