報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

金融自殺への道「郵政民営化」

2005年08月19日 21時16分25秒 | □郵政民営化
「郵政民営化」は「郵政民営化」ばかりを一生懸命に勉強しても、その本当の本質は見えない。
なぜなら、情報が制限されているからだ。
与えられた情報だけでものを考えれば、「郵政民営化」はすばらしいという結論が出るようになっている。
だから、賛成する人々は、反対する人が存在すること自体が理解できない。
こんなにいいことづくめの改革に、なぜ反対するのか?、と。

「郵政民営化」の本質は、日米の経済関係の中にある。
日本は、アメリカの巨額の財政赤字、経常収支赤字を常に埋め合わせてきた。
そのため、「日本はアメリカのATMだ」とさえ揶揄されている。

1996年、橋本内閣は、グローバリゼーションという錦の旗を振りかざすクリントン政権の圧力に屈し、「金融改革」を断行した。いわゆる「金融ビッグバン」だ。

しかし、「金融ビッグバン」の結果、何が起こっただろうか。
外国資本による、日本の金融機関の食い荒らしだ。
バブル崩壊でフラフラの金融機関に対して、不良債権処理やBIS規制(銀行の自己資本率8%規制)を強制すれば、破綻するのは目に見えている。日本の金融機関を破綻させて、安く買い叩くのがクリントン政権の目的だった。

98年に破綻した旧日本長期信用銀行(現新生銀行)は国有化され、7兆円もの公的資金を注入して再生された。そして2000年に、10億円でリップルウッド・ホールディングス(米投資ファンド)に売却された。新生銀行は、2004年2月に株式を上場し、株の35%を売却して、1178億円の儲けをだした。数字の間違いではない。10億円で買った銀行から1178億円の利益をだしたのだ。残りの株を売却すれば、さらに7000億円の利益が出ると見積もられている。7兆円もの公的資金を投入した銀行から、外国資本が(一部日本資本も参加)、巨額の利益を得ているのだ。

現在、日本の金融機関(銀行、証券、保険)には、無数の外国資本が群がっている。
外国資本による買収もしくは影響下にある金融機関をざっとあげてみる。

新生銀行(旧日本長期信用銀行)→リップルウッドHD
あおぞら銀行(旧日債銀)→サーベラス
東京スター銀行(旧東京相和銀行)→ローン・スター
幸福銀行→WLロス・アンド・カンパニー
UFJホールディングス→メリル・リンチ
りそな銀行→外国資本多数参加
三井信託銀行→ソシエテ・ジェネラルと業務提携
三井住友FG→ゴールドマン・サックス証券に優先株を発行

メリルリンチ日本証券(旧山一證券)→メリル・リンチ
ソシエテジェネラル・アセットマネジメント(旧山一投資顧問、旧りそなアセットマネジメント )→ソシエテ・ジェネラル
日興ソロモン・スミス・バーニ証券(旧日興證券)→ソロモン・スミス・バーニ証券

東邦生命→GEキャピタル
共栄生命系→ジブラルタル生命
あおば生命保険(旧日産生命)→プルデンシャル

探せばいくらでもでてくる。
「金融ビッグバン」によって、日本の金融機関は、外国資本の「草刈場」と化したとさえ表現されている。

『大蔵省(現財務省)は米国の言うことをそのまま行動に移しているに過ぎない。米国が望むことは、日本経済を良くすることではなく米国人の利益を最大限に増やすことなのである。』
米国人のビル・トッテン氏は、98年に「金融ビッグバン」の危険性を日本人に訴えている。
http://www.ashisuto.co.jp/corporate/rinen/totten/ow_text.php?A=1&B=143

日本の金融機関を食い荒らしてきた国際金融資本が、最後に狙っているのが、世界最大の貯蓄機関である郵貯・簡保の350兆円だ。この巨額の富を「草刈場」に投げ込んでいいのだろうか。

日本の貯蓄資産が海外に流出しても、我々が生きている間には、影響はないかもしれない。しかし、次世代以降に何が起こるかは、計り知れない。次世代の日本人が手にしているのは、単なる数字だけかもしれない。数字は巨額だが、日本国内には、公共投資や設備投資にまわすお金がいっさいない、ということも起こりえる。
「郵政民営化」は金融自殺に等しい。