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「郵政民営化」とメディア(4)

2005年08月02日 13時45分18秒 | □郵政民営化
<「郵政民営化」とは日本の貧困化だ>

 「郵政民営化」をめぐる議論は、どれも建前をめぐる議論でしかない。「郵政民営化」の本質に関する議論は、公の場では一切なされていない。もちろんマスメディアが伝えることはない。メディアは積極的な小泉応援団でしかない。


「郵政民営化」に関する政府の主張を確認してみよう。

① 郵政民営化が実現すれば、350兆円もの膨大な資金が官でなく民間で有効に活用されるようになる。

② 全国に津々浦々に存在する郵便局のネットワークは、民営化すれば、民間の知恵と工夫で新しい事業を始めることが可能になる。

③ 郵政民営化が実現すれば、国家公務員全体の約3割をも占める郵政職員が民間人になる。

④ 郵政公社は、これまで法人税も法人事業税も固定資産税も支払っていないが、民営化され税金を払うようになれば国や地方の財政に貢献するようになる。また、政府が保有する株式が売却されれば、これも国庫を潤し財政再建にも貢献する。将来増税の必要が生じても、増税の幅は小さなものになる。

 つまり、350兆円が民間で活用され、郵便事業が便利になり、公務員が減り、納税がふえる、という夢のような改革だ。

 はたして、そうだろうか。

 小泉改革を、簡単に表現すれば、政府の支出を抑える「緊縮財政」と国営企業の「民営化」、そして「市場の自由化」だ。
 まったく同じ政策を、IMF(国際通貨基金)と世界銀行は開発途上国に強制してきた。その結果、何が起こっただろうか。開発途上国経済の崩壊だ。農業の衰退、教育を受ける機会の減少、医療衛生環境の悪化、失業の増加、治安の悪化などだ。IMFと世界銀行が支援した国の経済状態が好転した例などほとんどない。「緊縮財政」「民営化」「自由市場」というのは、国民生活を破壊する結果しか残していない(くわしくは、カテゴリー内の「IMF&世界銀行」を参照されたい)。

 小泉首相は「改革には痛みをともなう」と主張しているが、その言葉は、IMFと世界銀行が開発途上国に対して発した言葉そのものだ。途上国の人々は耐え続けたが、「緊縮財政」で浮いたお金は、外国債権者への返済に回され、自国民のためには使われなかった。「民営化」によって、国営企業は外国資本に乗っ取られ、電気、水道など公共料金が上昇し市民生活を圧迫した。「自由市場」によって、外国製品が流入し、国内産業は崩壊した。

 ようするに「緊縮財政」「民営化」「自由市場」によって得をしたのは外国企業と外国資本だけだ。途上国の現状は、ここで説明するまでもない。すべてこの三つの政策の結果だ。まったく同じことが、いま日本で進行している。その「本丸」が「郵政民営化」だ。

「郵政民営化」が実現すれば、郵貯・簡保の350兆円は日本国民のために使われることはない。アメリカの双子の赤字を補填し、アメリカの戦争を支え、外国資本と外国企業を潤す結果となる。もちろん、国内のごく一部の企業は潤うだろう。

 小泉改革とは、日本国民の富を外国に明け渡すことにほかならない。その結果、当然、日本は貧困化する。日本国民の富は、外国資本と国内のごく一部の富裕層が独占し、中産階級は没落し、大多数の国民は貧困層を形成するようになる。

 これが、小泉政権が描く、バラ色の「郵政民営化」の正体だ。
「郵政民営化」とは、「日本の貧困」化以外の何ものでもない。