報道写真家から

我々が信じてきた世界の姿は、本当の世界の実像なのか

「郵政民営化」とメディア(6)

2005年08月07日 21時58分21秒 | □郵政民営化
明日、参院本会議で「郵政民営化」の採決が行われる。
どういう結果が出るかは、まったく分からない。
メディアは、「政局」報道ばかりに終始し、国民から「郵政民営化」問題の本質を遠ざけ続けている。

マスメディアは、はじめに「郵政民営化」ありきで、最初から最後まで、「郵政民営化」の本質に触れることを避けてきた。そして反対派を断罪することに終始してきた。メディアが検事と判事の役割を演じてきた。メディアが勝手に物事の判断をするべきではない。メディアの役割とは、あくまで国民に広範で正確な情報を提供することにある。判断を下すのは国民だ。

第二次大戦時、メディアがどのような役割を果たし、その結果どうなったか。小泉政権の「応援団」と化したメディアは、歴史から何も学んでいないようだ。60年後の現在、メディアは同じ愚を平気で犯している。このような、メディアは早く歴史から去るべきだろう。営利団体であるメディアは、所詮権力の従者にすぎない。これからは、市民自らが正確な情報を発信し、広げていく時代にならなければならない。

もはや、マスメディアの本質は、十分に露呈した。もちろん、どこの国でも事情は同じことだ。日本だけの現象ではない。911報道を振り返って、CNNの記者は「自国が攻撃されている時に、公正な報道などできない」と言い切った。戦時下では、政府に迎合した誤った報道をしてもいいということらしい。まさに「大本営発表」の世界だ。メディアというのは、結局のところそういうものなのだ。平時には、公正中立、不偏不党などと言っているが、お家の大事となれば、そういう建前はかなぐり捨てて、権力の従者になる。それが、世界のメディアの本質だ。

イラク報道で良質の報道を続けていたアル・ジャジーラのバクダッド支局には、米軍機により誘導爆弾が投下された。一人の特派員が命を落とした。BBCは国営放送でありながら、英国政府のイラク参戦へのまやかしを暴いた。その結果、英国政府にその信念を叩き潰された。アル・ジャジーラとBBCは健闘したと思う。しかし、既製メディアには、やはり限界がある。国家から、独立した中立で不可侵なメディアはない。国営であれ、民営であれ、国家の呪縛からは逃れられない。英国は、ほとんどアメリカの「属国」状態であり、その英国の国営放送局がアメリカのイラク政策を阻害するような報道は許されない、ということだ。

日本はどうだろうか。「大量破壊兵器」の存在を確信したとしてイラク派兵を強行し、またアメリカ政府の「年次改革要望書」を忠実に実行している小泉首相や竹中大臣は、アメリカ政府の「パペット」でしかない。日本のメディアも、そんなことは当然知っている。同時に、この二人に逆らうことは、アメリカに逆らうことであることも理解している。つまり、アル・ジャジーラとBBCと同じ運命が待っているということだ。しかし、アル・ジャジーラとBBCは、刀折れ矢尽きるまで戦った。日本のメディアは戦う努力もせず、さっさと権力に迎合した。

メディアの誘導に乗らないことが、懸命な人生を生きる第一歩だろう。