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近ごろ気になる言葉があります。まぁ「近ごろ」に限った話ではありませんが。
ご存じのとおり私はオヤヂですので、言葉遣いにうるさいです。「近ごろの若いモンは何だ?言葉の使い方がなっとらん!!」とか言うアレです。ちょっとウゼーです。
で、その近ごろ気になる言葉ベスト(ワースト?)3を発表して、今年のブログの締めくくりといたします。何もそんなモンで締めくくらなくても良さそうなものですが、そこはオヤヂですのでご容赦ください。
それでは始めます。まず第3位は!?
「甘い」。
「ケーキが甘い」とか「砂糖が甘い」とか、実際に「甘い」ものは結構です。別に気になりません。しかし本来は甘くない「肉」とか、キャベツのような「野菜」とか、「豆腐」とか、そういうモノの味を表現するにも、近ごろ「甘い」という形容詞がひんぱんに使われています。
「味が濃厚である」とか「口当たりが良い」とか、そういうことを表現したいのでしょうが、「ホントに肉が甘かったら気持ち悪いだろ!」と思ってしまいます。
たぶん使われ始めには、意外性のある面白い表現だったのだろうと思います。しかし、すでにすっかり陳腐化し、何の面白味もありません。止めた方がいいです。
第2位!
「自分事(じぶんごと)」。
これは本当に最近、今年になって使われ始めた言葉じゃないでしょうか?私はその意味をまだしっかりつかめていませんが、多分、「他人ではなく、ほかならぬ自分自身にまつわる事柄」で「当事者性の高い、利害関係の深い事柄」というような意味のようです。「A君がしたこの失敗は、『自分事』として気を付けなければならない」というような用例が正しいでしょうか。
この言葉、恐らくは「他人事」という言葉からの連想で、「他人」の事ではなく「自分」の事という意味合いで使われるようになったのだと推測しています。
でもねぇ・・・もともと「他人事」は「たにんごと」ではなく、「ひとごと」と読むのが正しいのですが・・・。「他人事」を「たにんごと」とする誤読は、以前からよく指摘されていました。私はこの誤読からして気になっていたのですが、誤読から派生してさらに造語がなされるに至っては、ついて行けません。
「じぶんごと」。どうにも落ち着かない言葉です。最初に使ったのは誰なんでしょうか?
そして第1位!
「〇〇おいしゅうございました。××おいしゅうございました」。
この言葉は文法的に間違っている訳ではありません。やや古い印象は受けますが、正当な日本語の用法であろうと思います。
では、なぜ気になるのか?
円谷幸吉さんをご存知でしょうか?東京オリンピックで銅メダル、次のメキシコシティオリンピックでも活躍を期待されながら、27歳の若さで自殺してしまったマラソン選手です。
その円谷選手の遺書は、次のような文面でした(一部を抜粋)。
父上様母上様 三日とろろ美味しうございました。干し柿、もちも美味しうございました。
敏雄兄姉上様 おすし美味しうございました。
勝美兄姉上様 ブドウ酒、リンゴ美味しうございました。
…(中略)…
父上様母上様 幸吉は、もうすっかり疲れ切ってしまって走れません。
何卒お許し下さい。
気が休まる事なく御苦労、御心配をお掛け致し申し訳ありません。
幸吉は父母上様の側で暮しとうございました。
この「美味しうございました」の繰り返しを、川端康成は「千万言も尽くせぬ哀切」と評したとのこと。私もこの遺書を初めて読んだとき、悲しい韻律に胸ふさがる思いがしました。
「おいしゅうございました」。とても美しい言葉です。しかしその美しさが、かえって円谷選手の悲劇を際立たせて、私には「使用できない言葉」となってしまいました。他人が使う分には仕方ないと思うのですが、「〇〇おいしゅうございました。××おいしゅうございました」と繰り返しで使われると、どうもねぇ・・・。「あんまり軽く使って欲しくないなぁ」と思ってしまいます。
ま、これは私の勝手な思い込みですがね。「おいしゅうございました」という言葉遣いは円谷選手のオリジナルではありませんし、ましてや私には何の権利(?)もありません。
さて、年の最後まで批判めいた内容のブログとなってしまいましたが、お付き合いいただきありがとうございました。
今年もお世話になりました。来年も、またよろしくお願いいたします!