goo blog サービス終了のお知らせ 

Left to Write

司法書士 岡住貞宏の雑記帳

にぎりめし争奪戦

2011-03-18 08:50:44 | 考えたこと
グッド・バイ (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社



――おい、戦争がもっと苛烈になって来て、にぎりめし一つを奪い合いしなければ生きてゆけないようになったら、おれはもう、生きるのをやめるよ。にぎりめし争奪戦参加の権利は放棄するつもりだからね。気の毒だが、お前もその時には子供と一緒に死ぬる覚悟をきめるんだね。それがもう、いまでは、おれの唯一の、せめてものプライドなんだから。――

太宰治「たずねびと」より


 買い占めに走る人々を見て、なにとはなしに太宰のこの作品を思い出しました。

続・買い占めはやめて!

2011-03-16 23:29:09 | 世の中のこと
世論〈上〉 (岩波文庫)
クリエーター情報なし
岩波書店

世論 (下) (岩波文庫)
クリエーター情報なし
岩波書店



 群馬県の、その後の状況です。

 相変わらず、ガソリンスタンドには長蛇の列です。いや、相変わらず、ではなく、もっとひどくなっています。売り切れのため、開店しているガソリンスタンドがごく少なく、開いているスタンドには1km以上も車列が連なっています。

 さて、そこまでして確保したいガソリン、どれほど待っても手に入れたいガソリンなのですから、街には自動車がさぞかしたくさん走っているに違いないと思っていたのですが……なんと道路はガラ空き、普段の3分の1くらいしか交通量がありません。

 もちろん、大事なガソリンをキープしようと、多くの人が自動車の使用を一時控えているせいなんでしょうが……だったら、最初から控えればいいんじゃないですか!?少しの間、自動車を使わなくても事足りるのであれば、どうして最初からそうしないんですか!?

 仕事、介護、医療等でどうしても自動車を使わなければならない人もいるんですよ。そういう人達のために、ガソリンを残しておいてあげませんか?

 交通量は異様に少ないのに、ただ給油のためだけに渋滞している――なんて、おかしいことだとは思いませんか?

 「すぐ、絶対に必要というわけじゃないけど、念のため給油しておく」というのだったら、やめてください。

 お願いします。

買い占めはやめて!

2011-03-14 20:27:43 | 世の中のこと
災害救援 (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店



 悪夢のような大震災が起こってしまいました。マスコミ報道等で被災地の惨状に接し、心が痛いです。

 私の住む群馬県では、相当に揺れはしましたが、幸いなことに被害と言えるほどのものはないようです。

 しかし、その群馬県で、現在、ガソリンスタンドは長蛇の列、ガソリンの売り切れ続出。スーパーやコンビニには、食料品や飲料、トイレットペーパー、ティッシュペーパーなどを買い求める人々が殺到し、著しい品薄状態が続いています。

 このブログを読んで下さる方へお願いです。

 そんな買い占め行為はやめてください!そのような行為に加担しないでください!

 群馬県は被災地ではありません。普段どおりの生活を続ける分には、つまり余計なものまで買い込み、溜め込むということをしない限りは、燃料や食料品、日用品が欠乏することなど、あり得ないはずです。

 それなのに、どうして長蛇の列が?どうして品薄状態に?

 正直なところ、「みなが並んでいるから自分も、みなが買い込んでいるから自分も」という群集心理でしかないでしょう。厳しいことを言います。愚かなことです!

 群馬県に来た商品が、買い占めさえしなければ被災地に回る、という訳でないのはもちろんです。けれども、「群馬県で商品が不足している」という誤った情報が出回れば、「早急に群馬県の商品不足を解消しなければ」という誤った流れも生じかねません。そんなことになれば、結果的に被災地への供給物資が、その分だけ減ってしまうのです。少なくとも、そのような誤った商品不足の情報は、この非常時、混乱に拍車をかけることになると容易に想像できませんか?

 繰り返しますが、群馬県は被災地ではありません。落ち着いて、平静な生活を続けるべきです。そして、被災地の救援のため自分にいったい何ができるのか、真剣に考えるときだと思います。


荒地の恋

2011-03-13 01:13:00 | 本の紹介
 なかなかブログ更新ができません。

 言いわけさせていただくなら、昨年末からなにしろ忙しい。これまでとは次元の違うような忙しさに、毎日まいにち追われております。

 誰に向かって言いわけしてるの?と笑われそうですね。自分でも可笑しいですが……まぁ、ほん~の少~しだけ、私のブログを楽しみにしてくださるファンがいらっしゃるようですので、その方々への言いわけです。

 更新さぼってどうもスイマセン

 ひさびさの記事は、やっぱ忙しくて時間がないので、自分でもいちばん好きで得意な「本の紹介」を。


荒地の恋 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋



 詩人が、親友である別の詩人の妻に恋をしてしまう物語。苦しい恋の経験を通じて、詩人はあらたな言葉の力を得るのです。

――と紹介すると、とってもロマンティックで切ない物語を想像するでしょう。しかしちょっと、いやいやずいぶん、事情が違います。恋する詩人は妻も子もある53歳、相手の人妻は46歳。「好いた惚れた」というには、ずいぶんトウの立った年齢です。あんのじょう、ふたりの恋は周囲を、そして自らをも、ドロドロの地獄にたたき落とします。

 まずは生活、なによりゼニ・カネです。どうやって稼いだらいいのか?どうやって妻への仕送り(法律的には「婚費分担」ですな)と、自分の生活費とを両立させるのか?恋の喜びはほどほどに、そんな生活苦あふれる、別の意味で切ない物語です。

 そして驚くべきことにこの物語、細部はともかくストーリーとしては、ほぼ実話なんです。

 詩人の名は北村太郎。そして親友の詩人は田村隆一。同人詩誌「荒地」を舞台に戦後現代詩をリードしたふたりの詩人は、東京府立第三商業学校の同級生で同じクラス。三商の国語教師にして詩人の佐藤義美先生から共に薫陶を受け、詩の世界に羽ばたいた40年来の親友なのでした。

 「そんな親友の女房を寝取るなよ~」って、それだけで私はギブ・アップ。しかし、恋をするとなったらそれができてしまうのが、詩人の詩人たる所以なのでしょうかねぇ?寝取られた田村さんも、図太く平気です。自分もほかの女に走ったりします(笑)。私は詩人になれませんね。

 ちなみに、この小説の作者・ねじめ正一さんは直木賞作家ですが、もともとは(もちろんいまでも)詩人であり、詩壇でもっとも権威ある新人賞の「H氏賞」を受賞しています。タイヘンな詩を書く人です。ヘンタイな詩を書く人と言っても間違いではありません(笑)。ここに引用すると公然わいせつ罪に問われそうですので、やめときます。どうぞご自身で詩集を買って、こっそり音読してみてください。

 ねじめさんの詩を読むと……やっぱり私は詩人になれそうもないや。


ねじめ正一詩集 (現代詩文庫)
クリエーター情報なし
思潮社