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Left to Write

司法書士 岡住貞宏の雑記帳

気になる言葉2013

2013-12-24 17:45:04 | 考えたこと
Q&A改正消費税の経過措置と転嫁・価格表示の実務
クリエーター情報なし
清文社


 今年も暮れようとしておりますが,みなさまいかがお過ごしでしょうか?

 2006年に開設したこのブログ,主の飽きっぽい性格を反映し,最近はとんと更新ごぶさた……前の記事が平成24年12月30日「気になる言葉2012」ですから,なんと1年間のブランクを空けてしまいました

 「もう死んでんじゃねーかこのブログ?」との声も聴きながら,どっこい生きてるPCの中

 さて,1年間のブランクを経た最初の記事は,なにはさておき「気になる言葉2013」!……芸のないこって,まことにアイスミマセン。このまま年1回「気になる言葉2×××」を更新し続けるブログにしちゃおかなとも思ってます

 気を取り直して行きましょう。まず第3位は!?

 「初老」。

 みなさんは「初老の男性」と聞いて,何歳くらいの人物を想像しますか?一般的には60歳前後,若いとは言えないが老人と言うにはちと早い,そんな年格好を指す言葉して使われています。昨今の記事・出版物等では,ほぼ9割の確率(当社調べ)で,その年代を指す言葉としての使われ方をしているようです。

 けれどもこの「初老」,もともとは40歳(!)を指す言葉です。なんと私はとっくに初老を過ぎた男なんですよ,これが。

 平均寿命が80歳を超える現代,40歳で「初」とはいえ「老」とは,ちと酷な気もしますが……「初老」が今のように60歳前後を指す言葉として使われた始めたのは,かなり最近のことのように思います。少なくとも私が子供の頃には,本来の40歳を指す言葉として一般的に使われていたと思うのですよ。

 なので,近ごろの「初老=60歳前後」とする用法を見聞きすると,どうしても「ん?」と引っ掛かってしまう。違和感を覚えるのです。

 平均寿命が1.5倍に伸びたからとて,「初老=40歳」も1.5倍して「=60歳」としていいという訳じゃないと思います

 続いて第2位!?

 「性癖」。

 「もー,昼間っからヘンな言葉を書かないでよー」と思ったアナタ,「性癖」の意味を間違ってますよ。

 性癖とは,「性質上のかたより。その人のくせ。」という意味の言葉です(新明解国語辞典・三省堂)。性癖の「性」にはsexualityの意味はなく,characterの意味です。そういう言葉,たくさんありますよ。性格,性質,性能,性急,性善説,性悪女(しょうわるおんな)。「性」という言葉は使っているけど,ぜんぶエッチな意味はないでしょ

 ところがいつの頃からか,「性癖」を「性的な好み・趣味趣向」を表す言葉とする誤用が始まりました。つまり,「縛りたい」とか「ムチでぶたれたい」とか,「女湯を覗くのが趣味」とか,「露出狂」とか「○○を△△で××したい(自粛)」とか,そういう「クセになりそな性の悦び」を指す言葉として使われ始めたのです。

 まぁ,この誤用の気持ちは分からなくもないですがね。

 性に目覚め始めた小学校高学年のオカズ○サダ×ロ少年は,日々,辞書でエッチな言葉を調べては密かに喜んでいましたが,ある日とても淫靡な言葉を発見しました。それは「性癖」。ななんと「性のクセ」ですよ!ウヒョォーどんなヤラシイ意味なのかなぁ?どれどれ辞書で……なぁ~んだ,ガッカリだ……こういう経験をしたのは,何もオカ○ミサダヒ×少年だけじゃないはずだ!

 という訳で,性犯罪者に対して「ゆがんだ性癖」とか書いている週刊誌の見出しは,ありゃ誤用です。ご注意ください。

 そして今年の第1位は!?

 「○○に関する法律」。

 AKB48の新曲は,「鈴懸の木の道で『君の微笑みを夢に見る』と言ってしまったら僕たちの関係はどう変わってしまうのか,僕なりに何日か考えた上でのやや気恥ずかしい結論のようなもの」という長~いタイトルだそうで。歌番組などの紹介では,すべて読み上げるのでしょうかねぇ?

 しかしAKBにも劣らぬ長~いタイトルを付けるのが当たり前の世界があります。それは法律の世界。昨今作られる法律は,法律名(タイトル)が長すぎです。

 例えば,近ごろ私が一生懸命に取組んでいる「消費税転嫁対策特別措置法」。こう書いただけでも漢字12文字のやや長い法律名ですが,これは略称であり,正式名称は「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」です。46文字です。

 こんな法律名,長すぎていちいち言えないので,内閣府でも財務省でも公正取引委員会でも中小企業庁でも,公式文書でみーんな「消費税転嫁対策特別措置法」と書いてます。んなら,最初から「消費税転嫁対策特別措置法」とすればいいじゃん!少なくとも,前半の「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための」は要らないじゃん!後半の「消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」だけで十分だと思うのですが,どうですか?

 憲法・刑法・民法・商法(会社法)・刑事訴訟法・民事訴訟法のいわゆる六法のような基本的な法律を除き,現在作られる法律は「○○に関する法律(または特別措置法)」とするのが主流です。で,この「○○」の部分がめっちゃ長いのは上記のとおり。ちなみに今までで一番長い法律名は,「平成十三年九月十一日のアメリカ合衆国において発生したテロリストによる攻撃等に対応して行われる国際連合憲章の目的達成のための諸外国の活動に対して我が国が実施する措置及び関連する国際連合決議等に基づく人道的措置に関する特別措置法」だそうです。112文字。

 こんな法律ぜんぜん知らねーや,俺たちにゃ関係ねーや,とお思いですか?実はマスコミ等でも大いに取り沙汰された有名な法律なんですよ。略称は「テロ対策特別措置法」。最初からこっちを正式名にすりゃいいじゃん!

 法律名は内容をきちんと表すものにしたいという意図は分かりますし,不正確な名称,誤解を与えるような名称では困るというのも分かります。しかし,いかにしても長すぎるのでは?丁寧すぎて,逆に何言ってんのかぜんぜん分からないですよ。

 立法者のこういう言語感覚(というか修辞学というか)は,いったいどんな美意識に基づいて生まれて来るのでしょうねぇ?法律も,文学や報道や会話などと同じ「言葉」によって紡ぎ出すもの。国民一般の感覚からあまりにかけ離れた「言葉」を使っていては,内容のよしあしに関わらず,肝心な「立法の理念・精神」がうまく伝わらないんじゃないでしょうか?

 さて,今年もこんな批判めいた内容をもってこのブログ終わりにします。つーか今年初めて書いたんだった来年もよろしくお願いいたします。「気になる言葉2014」書きます