倉野立人のブログです。

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【チリ鉱山落盤 救出劇に思うもの】

2010-10-14 | インポート
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13日から14日にかけて、まさに全世界のマスコミを席巻したのは「チリ落盤事故救出劇」でしょう。
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南米チリ北部のサンホセ鉱山で、去る8月5日に地下400mで発生した落盤事故は、作業員33人を地下に閉じこめることとなり、一時は絶望説もささやかれました。
しかし、探索のための掘削機の先端に「私達は生きている」のメッセージを認(したた)めた紙片が絡(から)められていることが発見されて以来「奇跡の生存」として衆目を集め、もって国家的な救出プロジェクトが図られました。
救出作業にあたっては、さまざま試行錯誤があったものの、結果として当初の見通しを大幅に上回るペースで救出トンネルが掘られ、救助ゴンドラ「フェニックス」が投入されました。
そして、事故発生から68日ぶりに「フェニックス」に搭乗した作業員が、一人ひとり順番に、家族や関係者が待つ地上へと戻ることになるのでした。

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私は、今回の救出劇に、芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」を重ね合わさずにはおれません。
生前の悪業により地獄へ落ちた主人公カンダタに憐憫(れんびん)をかけ、お釈迦様が一本の蜘蛛(くも)の糸を垂らします。
それにつかまったカンダタは喜び勇んで天に向かうものの、ふと振り返ると多くの流人(るにん)が追従しているのに気づきました。
カンダタは、自分独りだけが助かるためにと他者を蹴り落とそうとするものの、その邪心がお釈迦様の琴線に触れ、結局元の地獄へと再び落とされてしまう、という、人の深層心理に触れた物語です
今回の「チリ救出劇」は、この「蜘蛛の糸」の真逆(まぎゃく)をいった美談でした。
ややもすると「自分さえ良ければ(助かれば)イイ」といった風潮の昨今、ギリギリの状況下におかれてもなお、カプセル搭乗の順番を譲り合った33人の「真の友情」には、ただ感服するばかりです。

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さらに言えば、事故発生後何十日もの間、パニックや仲間同士の喧嘩に陥らず、全員が冷静さを保ったことも「奇跡」と申せます。
その陰には、脱出の順番も「一番最後でイイ」と仲間に譲ったことで、そのすばらしい人間性がクローズアップされたリーダーの存在や、取りも敢えず地上とのビデオ通信などでコミュニケーションを図るなどした「メンタルケア」の効果などが言われていますが、いずれにしても狭い空間で「互いを尊重し合う気持ちの集積」が生み出した成果と言えるでしょう。
地球の裏側で拍手が鳴りやまなかった今回の救出劇ですが、私たちに「人は、社会の中でどうあるべきか」を考えさせられた出来事なのでした。
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