ゆるゆる素浪人の「気まぐれ日誌」~ 自己満足とボケ防止に、人生の雑記帳~  

そういう意味で老人の書いた「狼の遠吠え」、いや「犬の遠吠え」と思い、軽い気持で読んで頂けば有り難いです。

和歌山カレー事件の最高裁判決に思う

2009-04-23 06:28:00 | 時事・雑感
昨日は1998年に起こった和歌山毒カレー事件で、
林真須美被告に最高裁が死刑判決を下したニユースで活字が躍っていた。。

11年前に平穏な田舎の「夏祭り」で起こった和歌山毒カレー事件は、
当初は食中毒を疑って調査していたが、
途中から警察サイドも加わり殺人事件に拡大して捜査された。
最終的には死者4名、中毒者63名の無差別殺人事件で終わる。

その時の原因物質が致死量100mgの砒素化合物(亜ヒ酸)だったが、
カレー一皿に 250mgも含まれていた事が判明している。
この「亜ヒ酸」の鑑定に威力を発揮したのが、
高額で大型のX線回折装置、蛍光X線分析装置の分析機器であった。

これらで測定すると手の指紋に同じものが無いように、
同じ工場で同じ日に作られた「亜ヒ酸」には特有の不純物情報が残っており、
それらを測定することにより同一性の鑑定が可能となる。

今回の事件は実証も無く動機不明の難事件、
だからこそカレーに含まれた砒素と真須美邸から採集した砒素とが、
同じ砒素と確認された鑑定の意味は大きく、
最高裁判決でも重要な状況証拠として採用している。

私は11年前の当時は食品や医薬品のお目付け役だったので覚えているが、
この事件を契機に全国的に危機管理体制の構築と機器整備が実施された。
と言うのは「カレー事件」を模倣した愉快犯的事件が全国で散発する。
例えばお茶やコーヒーに農薬や家庭洗剤を混入するという事件で、
我々食品化学検査担当者泣かせの仕事に奔走させられた。

このような社会不安の原因ともなる毒・劇物を使用した事案への対応の一環として、
迅速に中毒原因物質を明らかにするために厚生省及び警察庁は、
平成10年度補正予算で毒・劇物検査用の高性能分析機材を全国に整備した。
これまで地方の科捜研や衛生研究所では鑑定検査能力が一段と飛躍し、
亜ヒ酸やアジ化ナトリウムなどの毒・劇物の検査体制が十分整った。

このカレー事件は司法上からは動機不明で実証に乏しく、
状況証拠に力点を置いた新しい判決事例ではなかろうか。
一方少し前まで不可能に近い化学物質の鑑定が、
新しい大型科学機器による測定手法の開発で鑑定を可能にした。
そういう意味でこの「カレー事件」の科学捜査法と判決は、
後世に残る画期的な裁判事例として残るのではなかろうか。