きょうもきょうとて、P席三昧。
今度は、エルガーのヴァイオリンコンチェルトとホルストの惑星。
エルガーの方は、その天上界的長さにおいて人びとを魅了するようですが、邪悪人間の僕にはちと荷が勝ちすぎました。
あ~た、50分もかかるヴァイオリンコンチェルトって、ど~よ!
会場の入りは、7割ぐらい。
ホルストの惑星なんて、なかなかやらない曲なのに、もう去年のブームは去ってしまったのかしらねぇ?
おかげで、会場には来なくても良いようなお客がひしめいていて閉口させられました。
どんなお客かって?
咳をしても口元を覆わない。
演奏中にですよ。
それも世にも美しいppp(ピアニッシモ)のさなかに
「ゴホッ!ゴホゴホゴッホ!」
あ~たねぇ、自宅でカウチポテトじゃないんだから、少しは周囲に気を遣うとかできんのかね?いい大人がっ!!!
で、その音がホール中に反響している。
まともな神経の持ち主なら、恐れ入ると思うのだが。
と、そんなのが、一人や二人ではないのだ。
かててくわえて、演奏中に荷物をガサガサするやつ。
見ると、カバンにしまったパンフレットをいちいち出したりしまったり。
落ち着き無いこと甚だしい。
で、そのカバンを空いている隣の座席に乗せてみたり、また下ろして足下に置いて倒したり向きを変えたりと延々とやっている。
と思えばすぐ脇の婆2人連れは、歌舞伎公演と勘違いしてるのか、しきりに喋くっている。
やれバイオリンがやれ指揮者が、あぁうるさいったりゃありゃしない。
反対側の御仁は退屈紛れにパンフレットを音を立ててめくり続け、しきりに時計を眺めている。
嫌ならさっさと帰ればいいのにっっ!!!
一体に於いて、日本の公共空間でのマナーというものは、すっかりなりをひそめてしまった。
傍若無人、我が物顔、跳梁跋扈である。
いちいち腹を立てているようでは、コンサート会場に坐ってなんか居られない。
くつろいで音楽を聞きたかったら、自宅でCD、これに限ります。
しくしく。
それでもなお、何をまた好きこのんでなけなしの金はたいて、身分不相応にもコンサートホールなんかに足を運ぶのかと言えば、それはやっぱり、そんな嫌な目にあっても遙かに素晴らしい感動を体験できることもあるからなのよねぇ。
でだ、この日がやっぱりそれだった。
ホルストの惑星をP席で聴く。
こんな素敵なことがあるだろうか?
すぐ後ろにはパイプオルガンがそびえ、透明な重低音で僕の内蔵を緩やかに共振させる。
すぐ目の前には8台のティンパニと金管楽器群が。
そんなところに坐って、火星(戦争をもたらす者)の地獄の咆哮に包まれてみたまえ!
今までのイライラなんか木っ端微塵だ。
...............
そして最後の海王星(神秘主義者)。
あの永遠の彼方から聞こえてくるコーラスは、今回はどこで歌われれるんだろう?
舞台裏でと言う指示があるんだけれど、一階のステージ脇の扉の裏で?
ひょっとすると、僕のすぐ後ろにあるドアの向こうで?
曲の終わりが近づくとはっきりと歌声が聞こえた。
僕のすぐ後ろのドア越しに。
そして音楽は果てしなく遠ざかっていった。
うぅ~ん、成仏しました。