林の中の林の中のいまはもう使われていない小径にマツボックリがいっぱい落ちているところがあって、ちょっと前から気に掛かっていた。
時間のあるときにこれで遊んでみようかなって思ってたのだ。
で、いざ出掛けていって見ると、前日の雨のおかげでマツボックリはみんなしぼんでいた。
ガ~~ン!
そう、マツボックリは、水を吸うとカサを閉じてしまうんだよね。
で、乾燥してくるとその鱗片を開いて、間に挟まっている種を風に乗せて飛ばす。
いやぁ、旨くできてるもんだよねぇ。
カサを閉じちゃってると、地面に立てるのがちょっと大変なんだけれど、でも、考えてみると、カサが開くまでの変化を楽しめるんだよねぇ.....。
こりゃいいや、さっそく試してみよう。
で、色々考えては見たんだけれど、アンディ・ゴールズワージー風のウネウネにするのがやっぱ一番だよね。
そこはかとない違和感&何となくすっとぼけた感じ。
多少は工夫もしてみる。
始まりは、とぼとぼとおぼつかなげに。
やがて本格的千鳥足に。
お終いは、カオスに飲み込まれる。
おとぼけはこれぐらいにして、あんまり何かを象徴しようなんて考えないのが良いね。
1時間ほどして戻ってみると、日の当たってるところでは少しカサが開きはじめている。
でも、今日中に全開ってのは無理そうだね。
よく見ると、所々マツボックリが倒されている。
散り敷いている松葉が小さくほじくり返されているところも。
何か小動物の仕業のようだ。
わくわく。
ちょっと様子を見てみよう。
か、可愛いっ!
マツボックリを蹴倒した犯人は、この子だったんだね。
何ともきまじめな面持ちで、せかせかと松葉を運んでこちらにやってくる。
径のこっちには、カメラを構えた人間が、僕を含めて4人ほど。
カラス君、ちょっとたじろいだけれど、人間なんかにゃ構ってられないってな勢いで、僕らの間をすり抜けて傍らの流れの脇までとことこ歩いていった。
おもむろに流れにはいると、何とくわえた松葉を洗い始めた。
えぇ~っ?
ホントにこれ、松葉を綺麗にしたくて洗ってるのかな?
たまたま水に浸けたんではなくて、ホントに何度も水に浸けてバシャバシャやってる。
と、木の上に場所を変えて、落ち葉を足に挟んで何かはじめた。
よく見ると、コナラなんかの枯葉だけ選り分けながら綺麗な松葉だけクチバシにくわえて、腐葉土っぽいのは棄ててしまった。
松葉の向きまで、何となくそろえてくわえてるところにご注目。
と、また水に入って洗っている。
場所を変えて、またまた良く洗って、やっと納得したのか飛び立っていった。
ってことはなにかい?
このカラス、巣材の泥を水洗いで落としてから、巣のクッションにしてるって訳?
なんてきれい好きなカラス!!
って言うか、水で洗えば綺麗になり、ヒナのために気持ちの良い巣を作る事が出来ると、その辺まで理解した上での行動???
とすると、カラスの知能って、世間で言われてるよりのずっと高いことになる気がするんだけれど。
そう言えば前にも、何羽かでハンカチ落としみたいな遊びに耽ってたカラスたちに出会ったこともあったっけなぁ。
なんて考え込んでいたら、突然流れの脇から黒い影が這い出てきた。
野良猫がカラスをねらってたんだね。
カラスたち、まだまだここで巣材を集めるだろうから、猫に捕まらないようにしてもらいたいものだねぇ。
そんでもって、君のような賢い子をどんどん育てておくれ。
と、またまた人間達がやってきて何事か騒いでいる。
「あらまぁ、これ見てみて!自然にこうなったのかしら?」とかなんとか。
んなわきゃないだろうよ。
汗
この頃この手のイタズラをしていて、わりとそう言うトンチンカンな反応をする人が多いのには驚かされるのだけれども、中にはもちろんちゃんと自然と人為の境目を見極めて「だれかがイタズラで並べたんだね。でも、不思議な感じがするねぇ」なんて、ホッとさせてくれる感想を同行者にささやいてるのが聞こえたりもするのでした。
猫も杓子もとは言うけれどこの頃のエコ流行りはなんだか「エコも杓子も」と言いたくなるようなのが多くて、日本のエコってなんでこう表層に流れてしまうものばっかりなんだろうかと悲しくなるのだけれど、そもそもこんなたわいもない人工と自然の違いさえ見極められなくなってしまったこの国の人たちに、自然を守ろうと言ってみても、その守るべき自然像が曖昧模糊としているのでは、そもそも具体的方策のとられようはずもないのだと、悲しい納得を飲み込みかけ、いやいや何とかしなくっちゃって思い直したりするのでした。
さて、良い天気が続いていたというのに、出張やらが立て込んでいて3日後にやっとまたここに来ることが出来た。
マツボックリは無事に奇妙な行列をやったままだった。
先日のように、いけ好かないジジイが蹴散らかしていったりなんてことも、あれから無かったのは何とも嬉しい。
カラスだってネコだって、僕のささやかなイタズラには優しい無関心でいてくれたのに、一番共存が難しいのはやっぱり人間だって改めて思い知らされるのは、やっぱり嬉しい事ではないからねぇ....ハァ~~~涙
カサも綺麗に開いて、これならもう倒れる心配もないね。