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俺だって、昔はまっさらの人間だったさ。
海原と天空の青を鋭角に切り取って聳え立ち、風を捕らえる帆布のように、人が直視するのをさえはばかるほどの眩い白さ、そんな潔癖に過ぎる心根が俺にはあったさ。
生成の手付かずの白無垢をこそ愛した俺が。
遠い昔の話しだがな。
が、いつの頃か、ドス黒い欲望が俺の腹腔の奥底に巣食っているのに気がついたんだ。
一体、どうしちまったと言うんだろう。
その欲望が喉元まで這い上がってくると、どうにも我が身を制することが出来なくなっている哀れな俺自身を見いだすのだ。
まっさらな無垢なヤツを、縛り上げ、揉みしだき、あるいは蝋をたらし、そしてさらには薬漬けにし、押さえつけ、俺の思うがままに操りたい。
陵辱したい。
隈々まで俺色に染めてしまいたい。
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固く結ばれた秘め所を、俺の指でこじ開け、押し広げ、襞の奥に隠されたその鮮やかな色合いを白日の下に曝すときの、あのときめき。
無垢だった、まっさらだった、ウブな白さを誇らしげにしていたヤツを、見る影もなく変貌させて、俺に出会う前のヤツを知る者全員の顔に驚愕と疑念の表情が浮かぶ瞬間を、あの背徳の香りさえする誇らしい瞬間を、俺はもう忘れられない。
昨夜までの、三日三晩続いた饗宴もまた、例外ではなかった。
俺の部屋には熱気と異臭がこもり、ちぎれ飛んだゴムと合法的薬品の容器が散乱し、床や壁には夥しい怪しげなシミがつくられた。
食事の一時すらも惜しみ、貪り尽くす果てしない昼夜の連続。
そして.........、
墨田の河面も一時の夢を忘れ、闇と静寂に戻る。
そして色町は活気を取り戻す。
モンスーンの湿りが、浴衣地を浸潤し、肌にまとわりつく。
そんなけだるさの残るうちに、昨日までのことを少し思い出して書き留めてみようか.......
いや、その前にしておくことがある。
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狂気をおびた宴の去った今、窓を開け放ち朝の風とともに、深々と息をしよう。
藍染めって、すっごいニオイなんだよねぇ。
初めて自宅での藍染めに挑戦したんだけど。
蓋付きのポリバケツを藍壺の代わりにして、藍液を作ったんだけど、かなり来るニオイ。
途中で慣れはましたが、換気扇は回さないとね。
異臭騒ぎにならないかと、ちょっとヒヤヒヤ物でした。
なんてーの、ウォーター・プレイとかスキャットとか、そっち系の臭気なのだ。
A(^_^;
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草木染めに取りかかる前に、まず手始めにしなければいけないことは、晒しを良く洗って、表面の糊を落とすことだ。
いかに無垢な純白に見えても、その表面を覆っている糊を入念に落としてからでないと、思うようには染めることができないのだ。
上辺のあどけなさに騙されてはいけない。
え?
なんのお話しだと思いました?
もちろん、草木染めの作り方のお話しですよ。
浴衣の日用にと頼まれていた手ぬぐいなんかを、この3日間で一気に染め上げていたんです。
A(^_^;
幾何学模様っぽい柄にしたいときは、こんな風に水性ペンなんかで目印をつけておくと、あとの作業が効率的です。
下書き専用の筆記具とかけっこうな値段で売られてますが、100円ショップで売ってるような水溶性インクのフェルトペンセットで十分です。
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線に沿って襞を寄せ、ヒモや輪ゴムでしっかり絞ります。
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よけいなところが挟み込まれていないか、縛ったところ以外は一度できるだけ拡げて、目的のラインが絞れているか確認しましょう。
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布地を直接染液に漬け込むとムラになるので、必ず軽く水洗いして絞ってからにしましょうね。
絞り目に十分水がしみ込んでいた方が、模様もクッキリ白く浮かび上がりますからね。
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で、これは柿渋の染液。
臭いのよねぇ~。
なんだろう、酔っぱらった親爺の口臭みたいな。
特に日本酒で酔っぱらったときのあの体臭、熟柿香(じゅくしこう)って言われる、あれ。
それはさておき、染液がまんべんなく行き渡るように、時々軽く揉んでかき混ぜます。
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長時間漬け込むときは、こんな風におとし蓋?をしておくと、液面から顔を覗かせた部分が乾いてムラになったりせず、良いでしょう。
もちろん、こまめに液の中で泳がせるのがいちばん良いんですが。
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ところで、こちらは藍染め液です。
藍の場合は、ただ浸けておいても一向に染まりません。
時々引きだして、空気に触れさせて初めてあの藍色が発色するんですよ。
だから、3分ぐらい浸けては、こうやって引きだして軽くしぼり、拡げて風を通します。
引き揚げた瞬間は翡翠色ですが、空気に触れると見る間に藍色に変わっていきます。
布切れを拡げてパタパタさせ空気にあてるほど、良い色になっていくんですが、そのニオイたるや。
アンモニア臭もブレンドされている感じの刺激臭に、目がチカチカします。
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藍液の状態は、布を染めるたび毎に刻一刻と状態が変化していきます。
1発目、2発目、3発目と回を重ねる毎に、薄くなっていくのは、何だか親近感さえ憶えますねぇ。
最初は濃紺に染まりますが、次に布を入れたときには青に、そして3度目に染めるときはこんな風に浅黄色(明るい空色)に染まり、次の染めに入ったときは甕覗きと呼ばれる淡い青に染まります。
もちろん、染液の量や布の量なんかの兼ね合いで、変動はありますが。
十分発色させた後、水洗いして、絞りの結び目をほどいていきます。
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固く結んだ糸や輪ゴムを切ってほどいていく瞬間。
固く結ばれた襞の奥に隠されていた模様や意外な色合いが目に触れるその一瞬一瞬は、草木染めの神秘をしみじみ感じさせてくれます。
藍は生き物だって言いますが、実際自分で藍染めの液を建ててみると、そのことがやっと実感できました。
これって、よその藍瓶で染めさせてもらっても、なかなかピンと来なかったことです。
なんでも経験ですねぇ。
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これが先ほど染めていた柿渋。
渋で染めた物に鉄を反応させて、黒褐色の落ち着いた色合いに仕上げています。
柿渋は、こうやって日に晒すことでだんだん色が出てくるんですよ。
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こちらは同じ柿渋でも斑染めの仕上げ。
濃い斑点が一面に散らばって、独特の風合いになっています。
窯変点目の茶碗じゃないけど、全体にイイ感じに斑点を発色させるのって、技術以上に運のよしあしもかなりあるんですよね。
まして、まったく同じ物なんて、2度造ることは不可能。
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これも柿渋。
京友禅の技法と手描きの技法をいくつか組み合わせて染めてみました。
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拡げるとこんな感じの、刷毛目風になっています。
実際にはやたら手の込んだ工程を組み合わせてるんですが、ちょっと見はほとんど手間をかけてない風に仕上がってるって思ってもらえれば、それがこちらのねらい目なんですけどね。
そうそう、柿渋の殺菌力を利用したデオドラント商品とか開発されたそうですね。
なんでも、加齢臭を抑える効果があるんだとか。
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藍染めも、呼吸しながら発色するので、1週間ぐらいは畳んでおかないで風を通してあげないと、色がさめちゃうんですよね。
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こんなのを浴衣の胸元に忍ばせておいて、さりげなく汗を拭く。
何とも小粋な風情じゃござんせんか?
藍染めも蚊避け蛇避けの効果があるんで、夏の必需品ではあるんですよね。
誰ですかねぇ、太い蛇は避けないで寄せて欲しいだなんてうそぶいてるのは?