台湾の最南端部、墾丁(ケンティン)国家公園のなかにある南仁 (ナンレン) 山生態保護区 自然散策コースに行ってきました。
ここは台湾にわずかしかない低海抜熱帯雨林で、原生維管束植物は1238種にものぼり、
台湾地区の維管束植物の約三割を占めるそうです。
植物相が複雑なので、
さまざまな野生動物が生息しており、哺乳類が約15種、鳥類が約310種、爬虫類と両棲類が約59種、淡水魚類が約21種、蝶が約216種、及びおびただしい種類の昆虫がいるんだそうです。
今回歩いてみて感じたのは、動植物ともに日本との共通性が意外に多いという点でした。
まぁ、確かに氷河期の頃はこのあたりとも陸続きだったんでしょうから、当然と言えば当然なんですがね、まさかこんな最南端でもとは思っても見ませんでした。
なんていきなり言われても、台湾のどの辺なのかイメージが湧かないでしょうから、赤い印をつけてみました。
で、台湾のだいたいの大きさは、まぁ、九州ぐらいって思えばそんなに違ってない感じでしょうかね。
森林の中を抜けていく小道沿いにできたギャップ(小さな日だまりの草地)が、チョウチョたちのたまり場になって居るんです。
日本だったら、獣道とか、どんどん入って行っちゃうんだけど、ドクヘビがイッパイ居るエリアだから大人しく散策路だけ歩いてました。
「ヘビは約26類、たとえば、ヒャッポダ、アオハブ、タイワンハブ、アマガサヘビ、インドゴブラ、ワモンアカヘビ、過山刀など。前の五つは毒蛇で、その中ではタイワンハブが石灰岩洞窟に出没し、アオハブは多くが森林や灌木帯の樹林を攀じ登っています。」なんて紹介されてたら、やっぱさすがにね。
クリックすると大きくなります。
それにしてもチョウの密度はものすごく、花の香りに釣られて見上げると、こんな風にチョウがどっさり群がってたりするんですよ。
オオゴマダラやタイワンアサギマダラなんかの姿が見えすか?
この木は高さ15mぐらいかな。枝先の感じではウコギ科の
フカノキの仲間のようでした。
九州とほぼ同じ大きさの島に約380種もの蝶がいる台湾は、蝶の宝庫と言われているってのも納得。
日本の蝶は約230種ですから、同一面積当たりの種類と個体数、つまり生息密度はおそらく世界一と言われるのも当然でしょうねぇ。
もちろん蝶の他にも、たぶん森林性かなって思われるトンボたちにも出会いました。
が、前回の台湾行きの時に大あわてで高雄で探して買ってきた昆虫図鑑が「昆虫の世界」ってなタイトルだと思ったら「世界の昆虫」だったので、台湾の虫事情がさっぱりつかめないまま今回の訪問となってしまったのでした。
アホよねぇ。
なので、これから登場する虫たちの名前は、もうしばらく不明のままでアップすることになってしまいました。
この子なんか、もう去年から何度も写真に撮ってるんだけど、ネットじゃなかなか正体がわからなくってねぇ。
もちろん、日本に似たのがいるとそれっぽい名前で検索してみて何とか見つけられたりするんだけど、例えばこの子は日本の
ルリボシカミキリに似てるからって検索してみても、意外に見つからなかったりする。
こっちは200年7月24日に長野県松本市にあるアルプス公園で撮ったルリボシカミキリ。
台湾で見つけた方は、翅の一番下の方にある黒い斑点の中に青い点が入ってるのが特徴ですよね。
この子なんか、日本のオオミスジとかに似てるんだけど、遙かに大ぶりだし模様も違いますね。
シロミスジかな?
こっちは
リュウキュウミスジだよねきっと。
これは
キミスジ。
この羽の裏が派手な豹柄の蝶は、
ヒメキミスジ。
ほらっ!
羽を開くと三本の筋が。
いやぁ~派手ですねぇ。
こう言うのを見ると、あぁ~ここは亜熱帯なんだねぇって、ホントに思います。
これは
リュウキュウムラサキのオスかな。
メスは変異幅が大きくて、色んなタイプがあるんだそうです。
ちょっと
ここから引用してみましょう。
「リュウキュウムラサキは甘藷(サツマイモ)などのほか、ツルノケイトウ・ゼニアオイなど広範囲の植物を食草としているが、タイプによってはスベリヒユなどのような未知の食草もあり、今後の課題も山積している」
クロタテハモドキ。
羽を閉じると枯葉みたいでした。
タテハチョウ科の仲間はこれぐらい。
続いてはマダラチョウ科の
コモンマダラ。
貫禄の
オオゴマダラ。
この子はいったんミツを吸い始めると、ちょっとばかし指で触れても全く動じませんでした。
お次は毒蝶の
スジグロカバマダラ。
これによく似たカバマダラも毒蝶で、この頃北上を続けているツマグロヒョウモンのメスがこの子たちに
擬態していますね。
飛んでるときはブルーが綺麗な
ツマムラサキマダラ。
なかなか羽を開いてくれません。
やっと開いたと思ったのに、光の加減であの神秘的なブルーが写ってなぁ~い!
涙。
さて、続いてアゲハチョウ科。
またまた毒蝶の
ベニモンアゲハです。
この蝶に擬態しているのが
シロオビアゲハ。
この子です。
シロオビアゲハのメスには、この写真のような白い帯のタイプとベニモンアゲハによく似た白くて丸い斑紋のあるのが居るんだそうです。
ここに面白い研究が紹介されていたので、ちょっとご紹介。
「ベニモンアゲハとシロオビアゲハのメスのII型はよく似ています。シロオビアゲハは毒はまったく持ちません。毒を持たないものが毒を持ったものに似せることで、自分が食べられないようにする、という擬態は「ベーツ型擬態」と呼ばれます。琉球大学の上杉兼司さんは、過去の記録などから、それぞれの島でのシロオビアゲハのメスのII型の割合を調べ、ベニモンアゲハが八重山諸島、宮古諸島に定着する前と、定着後のシロオビアゲハのメスのI型とII型の比率を比べていきました。すると、ベニモンアゲハが定着した後、その地域のシロオビアゲハのメスのII型の率が明らかに増加し、それもベニモンアゲハの個体数が増えるほどシロオビアゲハのII型の個体数も増えることを発見したのです(といってもII型の比率が50%を越えることはありません)。
それぞれの島の鳥たちは、ベニモンアゲハが増えるとそれを餌として襲う確率が上がります、しかしその毒のために二度と襲わないと決め、よく似たシロオビアゲハのメスのII型も襲わないということが起こっていたのです。
上杉さんの研究は、ベーツ型擬態が捕食者に対して効果があることを証明し、それが沖縄県の島々で実際に展開していることを証明した例として世界的に有名になりました。」
これは、
ナガサキアゲハのオス。
メスの方は、やっぱり白くて丸い紋がありベニモンアゲハに擬態しているんですね。
これはシロチョウ科の
タイワンスジグロチョウかな?
シロチョウの仲間もモンキチョウの仲間もいろいろ居たんだけど、つい後回しにしていたら撮りそびれたのがイッパイ。
普通のシロチョウだと思ってたのが、よく見るとでっかい目玉模様だったり。で、あわてて撮ろうとするとパッと飛んで行ってしまう。
ツマベニチョウなんかは、高いところをせわしなく通過するヤツばっかりだし。
やっぱりたっぷり時間がないとなかなか撮れないね。
最後はセセリチョウ科。
これは日本のキマダラセセリそっくりだけど、
タイワンキマダラセセリなのかな?
ビックリだったのがこの子。
道端にやたらたくさん飛んでたんだけど、なぜか僕は昼行性のガなんだとばっかり思いこんでたんですよ。
そしたら、セセリチョウ科の
コウトウシロシタセセリって言うヤツなんですねぇ。
まぁ、よく見れば、れっきとした蝶なんですがね、早とちり。
A(^_^;
と、まぁ、今回の蝶はここまでに。
たまたま
台湾産蝶類目録なんてサイトを見つけたから何とかなりましたが、残りの昆虫はいつになったらわかる事やら。
例えばこの子とそっくりなのを、数年前に松本の県公園で撮ってるんですけど、なんて言う名前なんでしょうねぇ。
この子は
ゾウムシやオトシブミの仲間?それともハムシか何か?
素人の僕には見当も付きません。
このコオロギは、このあたりでは特徴的な種類らしいんですが、現地の名前で教えてくれたけど、う~ん困った。
あとは、こんなトゲだらけで、素手で捕まえる気にはとうていなれなかったバッタとか。
クワズイモの上で休んでいたフキバッタみたいな子などなど。
ほんの4km足らずの平坦な山間の散策コースをほんの4時間ほど歩いただけで、蝶だけでも優に40種類以上観察することができました。
ただ、ちょっと気になることが。
それは、入山者の制限もしているくらい、生物相の保護には気を遣っているはずのこのエリアで一番沢山のチョウを呼び寄せていたのは、
タチアワユキセンダングサ。
何と北米の帰化植物なんですねぇ。
帰化植物が花粉を運ぶ虫たちを横取りしてしまうと、このエリアに残っている台湾の元々の野生植物の実を結ぶ率が減り、だんだん帰化植物に置き換わっていってしまう危険が大きいんです。
早いとこ、対策をとって欲しいとは思うんですけどね。