くまえもんのネタ帳2

放置してたのをこちらに引っ越ししてみました。

クルピェ地方の歌

2005-10-08 11:21:18 | ノンジャンル

東京混声合唱団 第201回定期演奏会に行ってきたのだ。
コンサートのあと、招待してくれた友達と一緒に久しぶりにMATAGIによって、楽譜を見せてもらったりしました。

カロル・シマノフスキの’クルピェ地方の歌’は、コンサート会場で聞いたとき、すっきりしたプランの上に組み立てられているのはわかったんですが、その響きの複雑さたるや、豊饒を通り越して悪魔的。しばしば多調性になって響きの迷路を造り出したかと思うと、次の瞬間には、思わぬやり方で透き通った響きに立ち戻っている。小品ながらシマノフスキの魔力に満ちた作品で、繰り返し聞いてみたい魅力に溢れていた。
CD探さなくっちゃだわさ。
楽譜を見せてもらったら、やっぱり簡単そうに見えてしまうんだよね。
すごくすっきりと書かれてるの。
実際の響きは、男性パートなんか時として打楽器群みたいに響いたり、ただごとでない効果を引っ張り出してるって言うのにね。

曲は次の6曲で成り立っている。
ねえ、私の雄牛たちよ
ノックをしているのは誰?
イエス・キリストを称えたまえ
馬に、鞭打ち走らせろ
着飾りなさい、恋人よ
楽士さん、ワルツを演奏してください

僕がすっかりやられちゃったのは、2曲目の「ノックをしているのは誰?」。
「ノックをしているのは誰?」と言うフレーズが何度も繰り返される上に曲がどんどん変容を遂げていく。
「馬に、鞭打ち走らせろ」の最後から「着飾りなさい、恋人よ」への展開の持って行き方もすごかったなぁ。

ラウタヴィーラ「柳の木陰で」は、ゆったりと大きなうねりのある旋律で、時には器楽的な明快さを見せながら引っ張っていってくれるおかげで、複雑きわまりない和声進行でも、心地よく聞いてしまえる不思議な作品。

曲は次の3曲で成り立っている。
哀愁
リスの歌
我が心の歌

お気に入りは、器楽的な明快さを持った「リスの歌」。
弦楽合奏にアレンジして演奏してみたい衝動に駆られる。

ヴァヒの「芭蕉の俳句による新作」は、ぼくたちの芭蕉に対する思い入れを忘れて聞けば、なかなか素敵な響きを持った明快な曲。

ほととぎす 鳴く鳴く飛ぶぞ 忙はし

と言う句につけられた曲は、なにやらブラジル音楽のような軽快さ。
篠笛と合唱なんだけど、弦楽とケーナに編曲してみたくなったりしたなんて書くと怒られちゃうかも。
エストニアから見たら、日本って確かに南国なんだよなぁって、そんな感慨を楽しませてくれる。
芭蕉の句を忘れて聞けば、末吉って感じ。
きっと芭蕉の句をエストニアの言葉に翻訳して歌ってくれたりなんかすれば、全く違和感なく聞けるんだと思うんだけどなぁ。

他の曲の個性が強烈で、霞んでしまったのが冒頭で歌われたクーラの3つの歌。

こだま
舟の歌
メロディー

5拍子の「こだま」は、フィンランドっぽくて(カレワラの響きを思い起こさせるのよね)素敵な響き。
さっきからこればっかりだけど、「舟の歌」も弦楽合奏かなんかにして弾いてみたい曲でした。

最後に歌われた、間宮芳生の「北国の二つの歌」は、1曲目の中盤までは居心地が悪かった。2つの異なった音楽組織が併置されている感じがして、ちょっと苦手。後半からはえらくカッコイイ響きで、これはまぁ好きだったんですけどね。
曲の演奏のあと、会場にいた間宮芳生本人が呼び出されてご挨拶という一コマもありました。
すてき!


クルピェ地方の歌の解説を見つけたんで、ちょっと抜粋しておきますね。
http://www015.upp.so-net.ne.jp/kobe-chuo2005/66kyokumokukaisetu1.htm

◆Szesc piesni ludowych(Kurpiowskie)
Karol Szymanowski 作曲
6つのクルピエ地方の歌
 
連作合唱曲’6つのクルピエ地方の歌’は、カロル・シマノフスキによって1928年末から1929年始めにかけて作られた民俗音楽曲である。ポーランドの独立10周年を祝うために1929年5月にポズナィンで開かれた全スラブ・シンガーズ大集会を記念して出版された

シマノフスキは、当時のクルピェ民謡の性格を反映したスキェルコフスキの「クルピェの森の詩」に興味を持ち、その撰集の中から編曲のための歌詞と旋律を取った。この合唱曲はその種類について言うならば、婚礼歌である。彼は非常にたくさんの素材の中から6つの歌を選び出し、クルピェ地方の全般的な性格、とりわけその雰囲気を出そうとした。

最初の歌『ねえ、私の雄牛たちよ』は、私たちを’緑の森’の風景へといざない、2曲目『ノックをしているのは誰?』では、先祖の死後の世界を深く信じているクルピェ人の精神生活を垣間見せてくれる。クルピェ人の人々の信心深さは、次の曲『イエス・キリストを称えたまえ』の中にも、意図的に映し出されている。一方、4曲目『馬に、鞭打ち走らせろ』には、彼らの陽気な気質が表れており、『着飾りなさい、恋人よ』では、クルピェ人の家庭に対する愛情・忠誠心がはっきりと出ている。そして最後に、活力あふれる舞踊歌『楽士さん、ワルツを演奏してください』の中で、人生を肯定している。

カロル・シマノフスキの’クルピェ地方の歌’はポーランドの音楽史上新たな一章を開き、また、ヨーロッパの歌の発展においてもかなり重要な地位を占めている。この作品は、創作インスピレーションのきわめて重要な源泉が民謡という貴重な財産にあることを示しているが、何よりも、シマノフスキ個人が20世紀前半の芸術的な合唱様式の発展に大きく貢献したことを表すものである。