くまえもんのネタ帳2

放置してたのをこちらに引っ越ししてみました。

水は門外不出

2005-10-03 04:11:26 | ノンジャンル

水に気品を求めたことはあるだろうか?
水の味に。

8月に飲んだ北岳の沢水の味は、鮮烈な岩の味、森の味、風の味だった。
それはまさに生まれたばかりの生き生きと暴れる味。
喉をくぐり抜けるとき、生命がのたうつ味がする。

ところが、これらの水には、深い滋味と無限の沈黙の味がある。とてつもない時間を地層の堆積のどこかで暮らしてきたのだろうか?実に端正な、品位のある味わいだった。しかも、どれ一つとして同じ味のものはない。
ゆるやかな音楽の合間の束の間の沈黙のような、この沈黙の上に日本酒の精妙なオーケストレーションが施される。極上の酒の気品とは、こんなところから紡ぎ出されるものかと、心底納得させられる。

水のこんな微妙と絶妙を味わい分ける力があるからこそ、純正率に調律された日本酒の風合いを引き出せるのだろう。酒造の底知れない奥深さを垣間見た気がした。

ペットボトルに詰められ、どこぞの「美味しい水」などと売られている水の下品さなど想像してはならない。
まして、開高健が「荒涼とした」味と評した東京の水道水に至っては、あれは暴力である。

もうおわかりですよね。
ひょんな事で、きき酒に招待されてね。
蔵本の持ち寄った150種類の日本酒のいくつかを味わってきたんですよ。
とは言っても、そんなに飲める口でもなく、執着が深いわけでもなく、精妙な味覚も持ち合わせていないので、大吟醸に絞って味わってみることにした。


うまいつまみとうまい酒。
日本人に生まれた幸せってのは、こんな時にかみしめないでど~するって感じ。
うひひ。
鯛のお造り、紫蘇の花、はじかみ、蓼の芽、時ならぬ独活(うど)、松茸、甘塩のしおから。
つまみはまだまだあるけれど、これだけで十分。
白身の刺身ってのは、どうしてまたこんなに大吟醸と響き合うんだろうねぇ。
たまりません。
言葉は無力だと、あっさり認めましょう。

飲み放題食べ放題だからこそ、本当に気に入った物を少しだけ味わいたい。

ぶ厚いフォアグラは、シャリアピンソース風の仕立てで、ちょっと主張しすぎるけど、これはまぁご愛敬。
食べないでおくこともあるまいと、小市民ぶりを発揮してしまいました。
やれやれ。


こんなのとか、


こんなのは、高くて普段飲むような代物じゃないし、第一手に入らない。
小さなグラスに半分ほどついでもらって、つまみと交互にちびりちびりと。
出来るだけ酔いたくない。
一点の曇りもない感覚で受け止めたい。
とはいえ、相手は日本酒。
審査をするわけではないので、喉を滑り抜け胃壁にふれる感触まで楽しみ尽くすことが出来る代わりに、細部の感覚は曖昧になっていく。


宴もたけなわ。
審査結果が発表される。
吟醸部門の二位は男山 雷神、三位は飛露喜、四位は開運。


純米吟醸部門の二位はくどき上手 雄町44、三位は赤野 吟の夢、四位は醸し人九平次 火と月の間に。
男山とかくどき上手ぐらいしか聞いたことがない。
とほほ。
向学のために一位と二位は味わってきました。
いやぁ~、なるほどねぇ。


さて、日本酒は一休みして、ちょいとミーハー。
山ねこは芋焼酎、山翡翠は米焼酎。
両方もらってみました。
どちらもおいしい。
えぇ、言葉を尽くすなんて無駄なこと。
まぁ、飲んでごらんあれ。
黙るしかないから。


帰りしな、好きなのを持って帰って良いと言われて、佐渡の酒、真稜をもらってきました。
はぁ~ん、しあわせ。

さてと、腹も減ってきたことだし、インスタントラーメンでも食べましょうかね。
それが身の程というもの。
ぶはははは