story・・小さな物語              那覇新一

小説・散文・詩などです。
那覇新一として故東淵修師主宰、近藤摩耶氏発行の「銀河詩手帖」に投稿することもあります。

本気で抱きしめて

2021年09月22日 21時17分47秒 | 詩・散文

 

ねえ、あなたの理想なんてホントはどうでもいいの
ただ、抱きしめてほしい
あなたがいろんなややこしいものを持っているのは知っているつもり
だけど、そんなことの言い訳より抱いてほしい

ね、どうして、わたしが行くといつも決まってキラキラした目をして
夢を語ってくれるの?
あなたの夢なんてどうでもいいのよ
ただ、わたしをぐっと抱きしめて好きなようにしてほしいの
ホントはわたし、あなたの夢なんて聞いてもちっとも嬉しくないの
ただ、力強く抱きしめてくれる方がどれだけ嬉しいか

胸を吸いながら「今度の店はね」なんてないわよ
もうだめ、感じてるふりをするけど
ただ、上に乗って要らぬことをほざく馬鹿に見えるのよ
わかる?
屁理屈で女は抱けないわ

あなたの家族がどうたらなんて
わたしには興味ないわよ
あなたの奥さまがどんな人で、どんな趣味を持ってるかなんて
わたし、悪いけどどうでもいいの
わたし、あなたを奥様から奪おうなんて考えていないから

ただ、わたしと肌を合わせているときって
それだけ、それだけの時なの
わかってよ
めったにないチャンスだもの、本気になってよ

なんで、ここぞというときに
変な屁理屈、しゃべりだすかな
それで、もう、萎えてる女の気持ちなんてわかりっこないわ
萎えていながら感じているふりをするなんて結構つらいし
自分で自分を見たら馬鹿にしか見えないの

ね、抱いて
何も言わないで
一生懸命に抱いて
わたしが欲しいのはそれだけなの

もっといえば、あなたに求めているのはそこだけなの
だから、ね、お願い
ちゃんと抱いて
もっとちゃんと抱いて
もっと力を入れてよ
もっとあなたのわたしへの想いを
もっとぶちまけてよ
もっと力を入れてよ

わたし、苛ついているの
わかる??
やっとこの時が来たのに
屁理屈ばかり言うあなたにさ
わたし、がっかりしているの
肝心な時に、本気を出さないあなたにさ

どうでもいいの
本気で抱いてくれたら
本気で抱きしめてくれたら
もっと強く抱きしめて
もっと強く吸って
もっと強くあなたの汗をください

ね、わかって
わかってほしい
今日だけは分かってほしい

お願い、わたしを鎮めて
お願い、わたしを助けて 
お願い、わたしを強く抱きしめて

 

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