平成三十年一月二十三日、午前六時二十八分、医師が母の死亡を確認した
おかん、もしかして死んでもたんか、死んどるんか
なんや、気持ちよさそうに寝とるやんか
息してるで、ほら、少し動いとうやん、動いとおよう見えるやん
「これは心肺停止っちゅうことですか」
分かり切ったことを、必死に感情を殺しながら仕事をするナースに問う
いつもはニコニコして感じの良い美人ナースだが
この時ばかりは悲しさと真剣さの厳しい顔だ
「そうです、先生が確認次第、死亡ということになります」
ちゃうわいな、寝とるんやで・・ぜったいそうや・・
そやけど、さっきから心電図モニターから、ピー！って煩いんや
そこへ息を切らせて走ってきた若い医師
聴診器を当て、瞳孔を見て、母の額に手を当てて
「六時二十八分、ご臨終です」と言って頭を下げはった
おかん、ゆうべ、ワシがここで晩飯食わせたやんか
おかん、そのとき、なんでか起きとるのに鼾掻きながら
息をするのが少しえらそうやったけど、ペースト状の晩飯全部食ったやんか
おかん、脚が痛いゆうさかい、ワシが脚を揉んだやろ
気持ちええって、ほとんど出えへん声でゆうたやないか
んで、めっちゃ眠そうやったさかい、美空ひばりのＣＤセットして
おかんの耳にイヤフォン差し込んで「東京ブギウギ」が流れたの確認して
「これでええか」ゆうて訊いたら満足そうに頷いたやんか
おかん、おでこの熱が下がっていくんや、おでこが冷えていくんや
おかん、ちょっと急やろが、もうちょい待たんかいな
昭和十二年五月十二日、満州国奉天で国際航路の上級船員の娘として生まれ
戦争のきな臭さを感じた両親によって神戸に連れてこられ
それでもまだ裕福な家の一人娘だった母
神戸の空襲で親族のあらかたが死に絶え
唯一残った実母と貧乏のどん底を味わうようになり
そして散髪屋の住み込みをしているときに
大阪から修行に来ていた父と出会い同棲を始めたという
そこからは驚くほどに多産で、十人の子を身ごもり八人を生み
六人が生き残り、それが我らが兄弟姉妹だ
父は酒がもとで母と六人の子を残して早世し
以後はほとんど苦しみの連続だったかもしれない母の
それでも、生来の良家の子らしく、物事に動じず
淡々として受け止めていくその強さとある意味の剽軽さが
母を助けたのかもしれない
おかん、二十八年前、脳内出血で死んだかと思ったのに
お医者もびっくりする回復で、見事に蘇ったよな
おかん、十年前、腎臓がもうだめで、いくらも生きられないといわれたときも
透析を受けることでワシらの前に居ってくれたな
おかん、三年前、もうホンマにアカン・・そない思わせといてまた蘇ったな
おかん、今度はなんで蘇らへんのや
また二三ケ月したら、ベッドの上から立ち上がるんちゃうんか
・・・おかん
額はますます冷たく、母は帰らぬ人となった
実父の面影を大きな客船に見ていた母にとって
明石海峡がよく見える病院が最後の住まいとなったのは
これは偶然ではないのだろう
（銀河詩手帖287号掲載作品）
当面の間こちらのページにて大変お世話になりますね・・・
２０２２年１１月２６日（土）早朝時に
うちの母ｍ急死・急逝・死去・逝去・他界・永眠・・・
自分自身がこの世に生を受けてから人生の中で誰よりも一番長く
そして一番近くの側で見守ってきて一緒に歩んでくれた
母への感謝の気持ち等文章・手紙へと筆記してみます・・・
親子共に一緒に生きてきた期間は
おそらく日本人の平均寿命の半分ちょいくらいかな・・・
・・・多分自分自身が寿命を迎えるまでの期間のね・・・
でもできれば自分自身の寿命の２／３くらいの程度
（５０歳か６０歳になるくらいまで）は
正直生きてて欲しかったかな・・・
幾等何でも生きる力が弱かった・低かったとはいえ生きる力が無さすぎなんだよ・・・
少し早死にですよ！
あーあ・・・
でもこれで結局自分自身は多かれ少なかれ親離れが遅れて
中途半端にしか自立ができなかった生半可なマザコンだと認めざるを得ませんね・・・
これでは他の多くの見ず知らずの人達から馬鹿にされたり
後ろ指指されてしまいそうですね・・・
でも今後は前向きに一刻も早く気持ちの整理を付けなければね・・・
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・・・正直書きたいことはまだまだ沢山あるのですが・・・
僭越ながらまた徐々に全てを記載させてもらえればな・・・
と一方的に・勝手に願望している有様です・・・
・・・まあこういうような内容は正直他にどこも書くところが無い・
気持ちの整理が未だに付かずに
どこでも良いから憂さ晴らしがしたい・八つ当たりをしたい・・・
とでも解釈されてしまいましたらそれまでなんですが・・・
・・・まあ今回ばかりは特別・特例としましておおめに・
穏便に見守ってもらえましたらこれ以上ない大変有り難い限りであります・・・
うちの家一家親族では昨年春の次女から始まり
本年春の次男の嫁に続いて
夏には次男が
そして最近秋には長男の妻がそれぞれ順番に相次いで逝去しました・・・
（長男は１０年くらい以前に他界済み・次女は生涯独身）
あと残っているのは長女とその夫だけですが
毎年毎年他界者が相次いで出ております・・・
このドミノ的な他界者の連鎖の悪循環は一体いつまで続くのでしょうか・・・
・母親の存在について：
・・・やっぱり自分の母親の存在はとても大きくて偉大なのものなのですね！
これに勝るものはありません・・・
例えどんだけ仲が悪かろうが・お互いの距離がどんだけ離れていようが
長期間話をしていなくても
ただ生きているだけでもそれだけで精神的な支え・
精神安定剤的な目に見えない力・パワーへと変えてくれるのですね！
今更遅すぎですがそれに気が付きましたよ・・・
父親の場合ですと特別に悲しくも無く懲りずに
比較的平然と構えてたのでどっちでも良かったのですが
母親の死はそれとは完全に異なりとても堪えますね・・・
それを失念してしまいますともうどうしょうにもありません・・・
これはもう太刀打ちできませんわ・・・
・・・良く良く考えてもみましたら
自分自身の今までの人生の中で
異性（＝女性）とまともに好きな時にいつでも好き放題自由に話しができる間柄の人は
うちの母親とおばあちゃんのたった二人しかいなかったね・・・
もうどちらも他界していないしこれは残念無念・・・
今後一体どうしよう・・・
たまには誰か異性（＝女性）と相談話しや雑談の一つでもしたいね・・・
普段担当主治医も看護師長も相談員も全て男どもだしｗ
※追記：うちの一家親族の内誰か一人が永眠して逝きましたら
皆さんまるで後を追うかのように次から次へと順番に数珠繋ぎ状態で逝ってしまいましたね・・・
私自身が今までの間一人でずーっとこの実家へと住み続けて拘ってきた理由の一つには・・・
つい最近まで入院や老人ホームへと入居中の母親が
いつでも好きな時に・自由にいつ戻ってきてもおかしくなく手都合の良いように
その快適な空間を提供すべく居場所を護り抜きたかったからなのであります・・・
即ちこの家や敷地内を絶対に死守したかったからなのであります・・・
しかし母親亡き今現在その目的も護り抜く理由ももはや達成・成就されることも無くて
その価値ももはや微塵も完全に無い完全な空白虚無地獄状態・・・
もはや私自身がこの実家へと留まる理由や意義は完全に喪失してしまったのであります・・・
ちなみに納骨・入骨予定日は１００日法要でも済んだあとにでも入れようかと検討しております・・・
（大体春先の３－４月頃辺りが白羽の矢かな・・・）
その後一定期間経過後（時期は相手さん任せなので不詳）に
墓終まいや合同墓への移設をしまして無縁仏にでも移行するのかな・・・
・・・多分うちの亡き母的には生前の希望的には
早く夫の元へと旅立って行って会いたいみたいな感じの様子でしたので・・・（当人の意思）
＊＊様
平素よりお世話になっております。
ご質問いただきました件につきまして、医師より回答を頂きましたのでご返信させていただきます。
ご査収の程宜しくお願い致します。
なお、質問内容は、元メールから文章そのまま記載しております。（誤字脱字など含む）
〇11/24（木）朝９時20分のメール
Ｑ：うちの母とはもう死ぬまで・もう二度と・決して直接話しをことは（電話等含む）不可能・絶対に許されない・許可できないのでしょうか？
▽
回答：11/24の時点では、意識はもうろうとしていて、会話はできない状態でした
Ｑ：もしもそれ等が本当に不可能でありましたら・・・せめて執談（こちらからの文章筆記）等で本人宛てへと伝言・メッセージをお願いすることだけくらいならば許諾できませんでしょうか？
せめて最後に１回くらいだけならば認可できませんでしょうか？
お互いやその他の皆さんにとりまして後々尾を引かずに少しでも後悔や悔いを残さないためにも・・・
その連絡手段・方法はどなたか職員さん経由・伝いの手段・方法で全然構いませんので・・・
▽
回答：会話もほぼできない状態の意識もうろう状態なので、筆談は不可能で、メッセージを伝える事は不可能な状態でした。
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〇12/1（木）朝11時58分のメール
Ｑ：これは今でも心残りな点だったので最後にもう１回だけ質問しておきたかったから・・・
それとこれで一番最後に自分自身の気持ちの整理をつけたいからであります・・・
この点どうかご理解・ご配慮・ご容認・・ご容赦・気を遣っていただけましたら大変に幸いで御座います
それではその本題の質問事項なのですが・・・
・危篤状態・容態は概ねいつからそう陥ったのか？
それともそれすらの余地すら全く無かったのか？
▽
回答：
危篤状態（まったく反応がない状態）となったのは、11/25の午後に入ったくらいです。
・先日張本人鼻酸素チューブは付けておりましたが
では人工呼吸器の装着はその危篤状態当時にはあったのか？無かったのか？
▽
回答：
疾患が進行性の悪性疾患であろう経過であり、そのような疾患が悪化して亡くなる経過であった場合には、一般的は前もって本人が辛い思いをする人工呼吸器をつける事もほとんどありませんし、急変時は心臓マッサージはせず、安らかに死亡確認をします。生前に、本人様にも人工呼吸器をつけるかどうかは確認しており、辛い処置は希望されない、との返事をいただいたおりました。よって、今回は本人が苦しむ様なこの様な処置は実施しませんでした。
なので、質問に対する返事としては、危篤状態の時には装着しておりませんでした、です。
ご親族様
母様、ご入居中は施設運営に多大なるご理解と、ご協力を賜り厚く御礼申す上げます。
また、頂いたメールへのご返信が遅くなり、申し訳御座いません。
頂戴しましたメールの内容で、エリクシールとしてご回答できる内容は下記となります。
息子様が救急搬送となった際、簡潔に申しますと著しく呼吸が苦しいご状態であったと思われます。
以前にも母様には受診の促しをさせていただいていたのですが、『これくらいなら施設にいたい・・・』というご意向がございまして、入院当日を迎えました。
しかし救急搬送させていただいた日は、ご本人も受診がしたい、と望まれておられましたので、病院受診のご希望が強くなるようなお体状態であったと思われます。
息子様と保証人様とのやり取りは、私どもは関与しておらず、ご本人のご意思により進められたお話でございます。
最後にご契約中の108号室に関しては、居室使用のご契約が２０２２年１２月１５日までとなっております。
居室に残しておられるお荷物などは、１２月１５日までに引き上げて頂く必要があり、その旨を保証人様もご承知されておられます。
もちろん、ご親族として遺品や思い出の品など、ご確認いただき廃棄ではなく、お持ち帰りなることも可能でございます。
是非、１２月１０日にご来館いただき、そのあたりをご確認くださいませ。
※事務所営業時間は17時迄となっております。
日に日に寒さが増しておりますので、お体ご自愛ください。
介護施設・老人ホーム
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・母親から息子への形式上のデジタル化した遺言書
【付言事項】
将来、私の相続手続が円滑におこなえるように、この遺言書を作成しました。
息子へ
息子と一緒に過ごすことができ、とても感謝しています。
長い間、本当にありがとう。
これからも体を大切に、元気で暮らしてください。
そして、いつまでも幸せな人生を送るよう願っています。
遺言者 母親
・医療行為への宣言書
この宣言書は、良好な心身の状態の下で真意に基づき作成したものであり、これが残存している限り有効であります。
１．私は、私の傷病が現在の医学では不治の状態にあり、すでに死期が迫っていると診断された場合、ただ死期を引き延ばすための延命措置は一切お断り致します。
２．ただしこの場合においても疾病を和らげる措置は最大限に実施してください。
そのため薬物の副作用等により私の死期が早まったとしても、いっこう差し支えありません。
３．私月１ヶ月に及んでいわゆる植物状態に陥ったときは、一切の生命維持措置を取り外してください。
４．胃ろうはしないで下さい。
以上の宣言に従い私に対する医療行為が行われるよう、心からお願い致します。
平成○年○月○日
（住所）
（氏名・押印）
（生年月日）
お辛いお話、ここでしていただき感謝いたします。
わたしは仏教を辛抱しているゆえか、生死いずれも命の形として認識しています。
もちろん、身内の死ほど哀しいことはありませんね。
さらにそれが続くというのはこれは、不幸と言って良いのかもしれません。
今、暫くは亡くなられた方々に供養のお気持ちを持たれ、それは宗教である必要もないかと思いますし、宗教をお持ちであるならそれも良いかと思いますが、まず供養のお気持ちを天に祈ることがご自身の気持ちを整理するうえでよいことではないかなとは思います。