story・・小さな物語              那覇新一

小説・散文・詩などです。
那覇新一として故東淵修師主宰、近藤摩耶氏発行の「銀河詩手帖」に投稿することもあります。

詩小説・セブンスター

2012年07月25日 20時57分37秒 | 詩・散文

貴女が吸い込んだセブンスターの煙が

部屋に広がる

香りが僕を心地よくさせてくれるが

僕は煙草を吸わない

貴女が吸い込んだセブンスターの煙が

揺らめき上っていく

煙を追う貴女の屈託のない表情が僕を癒してくれるが

僕は煙草を吸わない

貴女が吸い終えた煙草の抜け殻を

ステンレスの灰皿に押し付ける

貴女の濃い口紅の色がついた吸殻は

僕を誘うかのようにみえる

次の煙草を銜えた貴女はマッチをこすり

目を瞑って煙草に火をつける

貴女の煙草を求めるその表情があまりにも美しく

僕はその横顔をずっと見ていたい

細く白い指で挟まれた煙草から蒼い煙が立ち昇り

それは貴女という女性の生き様を

そこに立ち上らせて消えさせていく儚さか

それとも何かを誘う狼煙のようなものか

セブンスターを二本吸い終えた貴女は

思い切ったかのように僕を促す

僕は無言で貴女に抱きついていく

セブンスターの香りが残る唇に覆いかぶさりながら

明かりの消えた部屋

かすかに残るセブンスターの香り

貴女と僕の汗の香り

蒼暗い部屋の中で

時折柔らかく白い肌がうごめいている

僕は必死に貴女の姿を追い求め

時として貴女に置いてきぼりを食う

貴女は僕などに構わず

自由自在に海の中を泳ぎまわる

コメント
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