神戸の空の下で。~街角の歴史発見~

足かけ8年、150万PV突破。「近畿の史跡めぐり」のサブタイトルも、範囲が広がったために少し変更しました。

京都・千本ゑんま堂(引接寺)。

2008年04月25日 | ◇京都府 -洛中


光明山 歓喜院 引接寺

(こうみょうざん かんきいん いんじょうじ)
京都市上京区千本通芦山寺上ル閻魔前町34

通 称
千本ゑんま堂



千本通沿いにさりげなく建つ千本ゑんま堂。古刹然としたところのない、親しみやすい寺院。


〔宗派〕
古義真言宗

〔御本尊〕
閻魔大王坐像



 平安時代、華やかな洛中とは対照的に洛外には亡くなった人々を葬る葬送地が設けられ、霊界へ繋がるとして怖れられていました。「冥界への入口」といわれた通称「六道の辻」より続く東山・鳥辺野葬場、霊峰・愛宕山の麓に広がる化野葬場、そして死者への引導を渡す閻魔大王の法廷が置かれたとされる蓮台野葬場京都三大葬場と呼ばれ、冥界に近い場所として畏怖の念を持って見られていた場所です。その冥界の入口を自在に行き来する神通力を持ち、「昼は朝廷に、夜は閻魔庁に務める」といわれた平安時代の貴族・小野篁卿が閻魔大王より「船岡山の麓に吾を祀る祠を作れ」との直々の命を受け、自ら彫り上げた閻魔大王坐像を安置する祠を建てたのが千本ゑんま堂だと言われています。







 その後、『往生要集』を著したことで知られる恵心僧都・源信の弟子である定覚上人が1004(長保6)年にこの祠を引継いで境内を整備し、人々を導くという意味の「引接寺」という名をつけた寺院を開きました。祠が建てられた時期ではなく、定覚上人の開山をもって創建とする説もあります。

 本堂に安置されている御本尊の閻魔大王座像は高さ2.4mで、左右に書記役を務める司録尊像と検事役の司命尊像を従えており、閻魔庁の裁判所をイメージした配置になっています。小野篁卿が自ら彫ったといわれるものは残念ながら応仁の乱で焼失してしまいましたが、1488(長享2)年に収められた2代目の閻魔大王坐像が現在まで残され、迫力ある表情を湛えて人々を厳しく、そして愛情深く見守り続けてくれています。年月が経って不鮮明になってしまいましたが、本堂の前縁の板壁には閻魔大王のいる地獄絵図が描かれ、天井には極楽絵図が描かれています。



 
本堂内(左)とその奥に安置される閻魔大王像(右)。隙間からわずかに覗く御顔は迫力満点。



 境内の北西の隅には、国の重要文化財に指定されている紫式部供養塔があります。幼少期に生母と死別し、結婚後もわずか3年で夫と死別するなどプライベートでは悲しみの多い生涯を送った紫式部の供養のために1386年(至徳3年)に建立されたもので、もともとは紫野の白毫院にありました。その供養塔がなぜここに移されたかについては、紫式部小野篁卿が親戚関係にあったのではないかという説や、人々の情欲を奔放に描いた源氏物語が原因で地獄へと送られた紫式部の罪を赦すよう小野篁卿が閻魔大王を説得したためなど、様々な伝説が残されています。



 
本堂の裏手にある石仏群(左)と境内の西北隅に立つ紫式部供養塔(右)。



 千本ゑんま堂には、花の中心から出た双葉の形が普賢菩薩が乗られている象の鼻に似ていることからその名が付いたという普賢象桜があります。後小松天皇の薦めを受けてここを訪れ、普賢象桜の美しさに感嘆した室町幕府3代将軍・足利義満公は、「この桜の盛りに狂言を催すべし」と命じたといわれています。ここでいう「狂言」とは、布教のために定覚上人が始めたといわれる念仏狂言のことです。

 壬生寺壬生念仏狂言清涼寺嵯峨念仏狂言と並んで「京都三大念仏」の一つに数えられる千本ゑんま堂念仏狂言は、他の念仏狂言が無言で行われるのに対し、ほとんど台詞入りで行われる有声劇であるのが特徴です。長く続けられてきた千本ゑんま堂念仏狂言も後継者不足などから1964(昭和39)年に途絶え、さらには1974(昭和49)年に狂言舞台や衣装が失火で焼失するなど存続の危機に立たされましたが、翌年「千本えんま堂狂言保存会」が結成されて狂言舞台の再建やメンバーの充実が図られて見事に復活されました。今も5月1日から4日にかけて境内で演じられ、人々を楽しませてくれています。




8月の六斎念仏・盂蘭盆会では精霊をお迎えするために終日「迎え鐘」が鳴らされます。



アクセス
京都市バス6・46・59・92・206系統「千本鞍馬口」下車、南へ徒歩2分
千本ゑんま堂地図 Copyright (C) 2000-2006 ZENRIN DataCom CO.,LTD. All Rights Reserved.

拝観料
無料(本殿昇殿参拝は志納)

拝観時間
9時~17時

公式サイト
  千本ゑんま堂公式ホームページ



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