嵯峨山 大覚寺
(さがざん だいかくじ)
京都市右京区嵯峨大沢町4
神仏霊場京都 楽土の道・第9番札所
真言宗十八本山霊場・第5番札所
近畿三十六不動尊霊場・第13番札所
慎ましやかな山門は、寺院というより嵯峨院の頃の佇まいを今に残しています。
〔宗派〕
真言宗大覚寺派 大本山
〔御本尊〕
五大明王像
(不動明王・降三世明王・軍荼利明王・大威徳明王・金剛夜叉明王)
もともと風光明媚な嵯峨野の地は「葛野」と呼ばれていましたが、弘法大師空海・橘逸勢卿と並んで「三筆」と称される書の達人でもあった嵯峨天皇がこの地をこよなく愛し、憧れだった唐文化の中心地である都・長安の北方にある風光明媚な景勝地・嵯峨山に思いを馳せて「嵯峨」と名付けたといわれています。嵯峨天皇はお気に入りの嵯峨の地に、皇后と暮らす新居として嵯峨院を建立されました。書道を通じて嵯峨天皇と親しく交流を深め、東寺を下賜されるなど厚い信頼を寄せられていた空海は、811(弘仁2)年に勅願によってここに五大堂を建立し、五大明王の秘法を修法したといわれています。
菊の御紋の幕が下がる式台玄関(左)と、宸殿の回廊の狭間にある庭園(右)。
嵯峨院が寺院となったのは、清和天皇の御世の876(貞観18)年のことです。嵯峨天皇の皇女・正子内親王は、嵯峨院を寺院に改めて亡き父と夫・淳和天皇の遺徳を偲びたいと発願し、勅許を受けて「大覚寺」という寺号を賜りました。ちなみに、この時の寺院建立の奏請文を書いたのは菅原道真公だといわれています。初代門主に就いたのは、夫・淳和天皇の間に生まれた第2皇子である恒寂法親王で、それ以降代々の住持を法親王が務める門跡寺院として栄えました。時代が進むにつれて徐々に寺勢は衰微していきましたが、鎌倉時代に入ってからは亀山法皇や後宇多法皇がここで院政を行ったために「嵯峨御所」とも呼ばれて行政の中心地となり、特に1307(徳治2)年に後宇多天皇が第22代門跡として入山してからは大々的に堂宇の整備が進められ、往年の姿に勝る隆盛を取り戻しました。
後水尾天皇の女御御所が下賜されて移設された宸殿(左)と、その奥の霊明殿(右)。
承久の乱によって3人の上皇が流罪に処され、室町幕府の後押しを受けて皇位に就いた後嵯峨天皇は4年の在任期間の後も後深草天皇と亀山天皇を抑えて「治天の君」として30年近く実権を握り続けましたが、崩御に際して後継者を定めていなかったために皇位を巡る争いが起き、結局亀山天皇の第2皇子が後宇多天皇として皇位に就く結果となりました。2つの勢力の対立を利用し、双方に皇位を争わせることで朝廷の勢力を削ごうとした室町幕府はこの混乱に乗じて介入。後宇多天皇の後任には後深草上皇の皇子である後の伏見天皇を就け、以後は両統の皇子を10年ごとに皇位に就けるという調停を行いました。これよりそれぞれが本拠とした場所にちなんで「大覚寺統」と「持明院統」と呼ばれて対立を深めていくことになりました。この対立は1392(元中9)年に南朝のラストエンペラー・後亀山天皇から北朝の後小松天皇に三種の神器が引き継がれて南北朝の和解である「明徳の和談」が成立したことで終止符が打たれますが、その舞台となったのがまさにこの大覚寺でした。
御影堂(左)と、その右脇に立つ御霊殿(右)。
南北朝争乱の兵火によって1336(延元元・建武3)年に炎上、半分の規模で再興された大覚寺は、1467(応仁元)年に応仁の乱の兵火によってまたも伽藍焼失の憂き目に遭い、さらには1528(享禄元)年にも戦国時代の兵火に巻き込まれて焼失するなど受難の歴史は続きましたが、ようやく江戸時代に入って後水尾天皇から女御御所を下賜されて宸殿とするなど再建が進み、現在の威容がほぼ整うこととなりました。
ここは嵯峨天皇が大沢池で舟遊びをしている時に、大沢池に浮かぶ菊が島に咲いていた野菊の花を手折られて生け花を愉しまれたのが発祥といわれる「嵯峨御流」発祥の地でもあります。江戸時代の末期には、華道の大家である未生斎広甫が大覚寺の華務職に就いたのをきっかけに全国へと普及していきました。11月には嵯峨菊展が行われるなど、四季折々に境内を美しい花で飾ってくれています。
大正時代に再建された心経殿(左)と、五大明王像を安置する本堂・五大堂(右)。
湖面に映る衣笠山が美しい大沢池。中国の洞庭湖を模した日本最古の人造湖です。
アクセス
・京福電鉄嵐山本線「嵐電嵯峨駅駅」下車、北東へ徒歩20分。
・JR嵯峨野線「嵯峨嵐山駅」下車、北東へ徒歩20分。
・京都市営バス・京都バス「大覚寺」バス停下車、北へ徒歩2分
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拝観料
・大人:500円、小中高校生:300円 ※大覚寺・祇王寺の共通拝観券は600円。
拝観時間
・9時~17時(受付は16時30分まで)
公式サイト