ごっとさんのブログ

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『認知症の薬』はやはり作れないのか

2017-09-16 10:40:57 | 
このブログでも2か月ほど前に「認知症の根本治療薬」ということで、その難しさについて書きました。

最近認知症の薬で大手製薬メーカーの撤退のいきさつが出ていました。非常に多くの企業が認知症の進行を遅らせるだけでなく、根本的に治療しようという薬の開発を行っていますが、残念ながら未だに治験の成功例は出ていないようです。

今回の例はアメリカ大手のリリー社についての記事でしたが、アルツハイマー病の原因の一つであるアミロイドβ(以下アミロイド)を除去する抗体医薬であるソラネズマブの治験を行いました。リリー社はこの開発に3,300億円かけたといいますが、承認申請することはできず株価も大幅に下げてしまいました。

最近ではシンガポールの会社やアメリカメルク社も認知症治療薬の実験に失敗したことを発表しています。なぜここまでアルツハイマー病の治療薬の開発が難しいのかは、薬を使うタイミングと関係しているようです。

前回も触れましたが、アルツハイマーの患者の脳にはアミロイドという物質、タウタンパク質という物質がたまり、これが神経細胞を破壊すると考えられています。

治験が進められている治療薬の多くは、アミロイドを標的としアミロイドを生成する酵素の阻害薬、アミロイドに対する抗体医薬に分けられ、先のソラネズマブは後者となっています。

これらの薬が効果を発揮できないのは、アミロイドは実は非常に早い段階で溜まりはじめ、しかもある程度たまり神経細胞が破壊され始めても脳の代替能力により症状が出ないようです。つまり症状が出てから大本の原因であるアミロイドに対する治療を始めても遅きに失しているのです。

このたまり始めてから20~30年経って進行していくと考えると、治験において健康な人も対象に含める必要が出て、治験機関も数年から十数年という長い時間が必要となります。こういった治験に協力してもらうことは非常に難しいこととなります。

また別な困難さが認知症の症状の評価です。現在ある評価法は、医師や介護者が患者と対面してコミュニケーションの中でスコアを付けていきますので、厳密に数値化することがしにくく薬が効いているかの判断が難しくなっています。

また動物実験でもモデルマウスは遺伝子組み換えで作るのですが、家族性アルツハイマーしか作れず、人間の95%を占める孤発性アルツハイマーとは厳密に言うと異なっているようです。

またアミロイドが原因であるとするアミロイドセオリーに反対する声もあり、根本が間違っている可能性も出てきているようです。このように認知症とは、脳の老化が早期に進行してしまう病気とすると、老化を阻止するという人間の限界を超えたことに挑戦しているのかもしれません。