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iPS移植、最大3割で拒絶反応

2017-09-01 10:39:57 | 健康・医療
京都大学iPS細胞研究所(CiRA)が再生医療用にストックしているiPS細胞(人工多能性幹細胞)の移植で、遺伝子型を一定適合させた場合でも最大3割で拒絶反応が生じる可能性があることを発表しました。

iPS細胞の移植は、本来患者自身の細胞を使用することが望ましいのですが、そのためには多額の費用と期間がかかることが問題で、拒絶反応を起こしにくいタイプを集めておくストック計画が実施されています。

このストックされた細胞を使うことで、費用が数百万単位まで抑えることが可能とされています。それでも拒絶反応が起こってしまうことは、移植時の処置を検討する重要性が示されたといえます。

ここで拒絶反応のメカニズムについて簡単に記載します。移植を受けた患者の免疫細胞は、組織を提供したドナーの細胞にあるタンパク質「HLA」を認識し、自身と異なるHLAを標的に攻撃します。この細胞にあるHLAのタイプは膨大であり、他人同士が一致する可能性はほとんどありません。

HLAの型は、両親から受け継いだ一対の遺伝子で決まり、異なる遺伝子を受けた人はヘテロ型と言われます。ところがまれに同じ遺伝子型を受け取る場合があり、これをホモ型と呼びますが、このタイプのHLAは数が少なく合致する遺伝子型を見つけやすいという利点を持ちます。

CiRAもこのホモ型の細胞のストックを進めています。しかし一方で、ヘテロ型の患者と合致したホモ型のドナーの細胞を使っても拒絶反応が起こる可能性は指摘されていました。

研究グループはホモ型のiPS細胞からリンパ球と血管内皮細胞を作成し、遺伝子型を適合させたヘテロ型の免疫細胞であるナチュラルキラー細胞を試験管内で混ぜたところ、これらの細胞の攻撃が見られました。特定のHALがないためNK細胞が異物と認識しためのようです。色々なNK細胞で試したところ、約30%でこういった攻撃が起きたようです。

研究グループは、ストック事業の意義は揺るがないものの、移植前に患者の遺伝子を調べて免疫反応が起きないかを確認する上で、より詳細な検査が必要になるとしています。こういった拒絶反応に関しては、京都大学の別なグループが、iPS細胞に特定なタンパク質を発現させることで、免疫の攻撃を受けなくなるといったことも発表しているようです(まだ詳細はわかりません)。

現在iPS細胞を使ったいろいろな病気に対する再生医療が試みられていますが、いかに安全で簡便に行うかが重要な課題のようです。