ごっとさんのブログ

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ジカウイルスで悪性脳腫瘍に対抗

2017-09-13 10:30:32 | 健康・医療
一時話題になったジカウイルスを使って、成人の難治性脳腫瘍と闘うために利用できる可能性があるという論文が発表されました。

蚊が媒介するジカウイルスは、最も一般的な脳腫瘍の神経膠腫(グリオーマ)に関与する細胞を破壊する能力を持つことが、先行研究で明らかになっていました。

ジカウイルス感染症については、2015年ごろから中南米を中心に感染が広がっていました。これはジカ熱と呼ばれましたが、通常は若干の発熱などがあるだけで、それほどひどい症状にはならないものの、妊婦が感染すると赤ちゃんが小頭症で生まれてくると問題になっていました。

このジカウイルスは、神経前駆細胞を攻撃する傾向があり、この細胞は胎児の脳内には多く存在するものの、成人の脳にはほとんど見られないようです。

さてグリオーマは、米国で年間1万2000人が発症しており、標準的な治療法は化学療法と放射線療法ですが、大半の患者の生存期間は発症後2年程度とされる恐ろしい病気です。この時化学療法でも生き残り拡散する脳腫瘍幹細胞は、神経前駆細胞と類似しており、これをジカウイルスが攻撃するというものです。

研究グループによると、現行の治療法に対して抵抗性を示し、患者に死をもたらすグリオーマを、ジカウイルスが殺傷する可能性があることが今回の研究で示されたとしています。

研究グループは、ジカウイルスまたはプラセボ(偽薬)の溶液を、マウス33匹の脳腫瘍内に直接注入しました。2週間後ジカウイルスを注入したマウスは、腫瘍が有意に小さくなり、さらに生存期間もプラセボを与えたマウスより有意に長かったようです。

ただしこの治療法をヒトに対して安全に試みることが可能になるまで、さらに研究を積み重ねる必要があるとしています。このジカウイルスは原発腫瘍の切除手術中に脳内に直接注入される可能性が高いと考えられているようです。

またジカウイルスがてんかん患者の脳組織に及ぼす影響に関する別な研究では、非ガン性の脳細胞はウイルスに感染しないことが示されているようです。このようにジカウイルスは脳腫瘍の細胞のみに感染し、他の正常な脳細胞には全く影響を与えないと考えられています。

しかし対象が脳細胞ですので、何か予期せぬ副作用(後遺症)が残る可能性もあり、慎重な研究が必要なようです。ワシントン大学の脳腫瘍の専門家は、腫瘍全体を消滅させるために、ジカウイルスを現行の治療法と組み合わせて利用する可能性は高いと述べています。

この研究は本当に初期段階ですので、ウイルスの遺伝子変異などを組み合わせれば面白い治療法になるような気がします。