稽古なる人生

人生は稽古、そのひとり言的な空間

浮木(うっき)について(昭和62年10月29日)1/2

2018年01月05日 | 長井長正範士の遺文
先ず構えた自分の竹刀をを浮木と思って以下申し上げることを理解して頂きたいのです。
水に浮かぶ丸太の原木を棒で突くとします。
この場合、丸太の中心より右に突くと丸太は右回りにくるくると廻ります。
きつく突くと廻りながら水中に沈み、廻りながらポカッと浮いてきます。

これと同様に左に突くと左に廻りながら水中に沈み、廻りながらポカッと浮いてきます。
両方とも突く力の度合いに応じて廻る速度、深さがはっきり変わると判ります。
こんなことを何遍くり返しても同じことで、
遂には突くのに疲れ果てて相手は根負けしてしまいます。

この浮木が自分の竹刀でありまして、相手が自分の竹刀を左右に叩いても、
くるりとその力を利用して相手の中心(咽喉とか胸に)剣先をつけ、
あるいは一拍子で突き、何のこだわることなく外しては上に乗り、
争わずして勝つ技であります。

わが心を水とし、竹刀を浮木として乗ずるところが
一刀流の秘伝とも言うべき大事な技であります。
これを「争わずして勝つ上乗の太刀技である」と言われているのであります。
浮木は真の真剣の理が篭っているのであります。

(続く)


(長井長正範士八段、長正館道場にて)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 今朝の猫ども(1月4日) | トップ | 浮木(うっき)について(昭... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

長井長正範士の遺文」カテゴリの最新記事