水についての教えは既に№102に「一刀湛水」と、№103に笹川良一先生の「水六訓」を書いておきましたが、今回は水そのものを述べたいと思います。
日本の国は世界でも有数の水の恵まれた国であります。そこで、この水とは一体どんなものなのか解明してゆきたいと思いますが、一寸その前に申し上げておきたいのは、私達が生きてゆくためには酸素だけではなく、空気であるということです。即ち空気には酸素以外のものが澤山あり、無機物だけではなく、浮遊している微生物も沢山おります。これ等をすべて含んだ空気であるということであります。ただ地下深く沈んでおったはずの重金属が空気中に浮遊し、その異常物を排除するために酸素だけをやかましく言っているだけなのです。この酸素に関係ある水を主体に申しあげたいと思います。
近年、大阪の水道の水が臭くて飲めたものではありません。又、地下水の汚染もひどくなっております。水はご承知のようにH2Oで表します。これはH=水素。2とO=酸素との化合物ですが、ことのついでに申し上げますと酸素は空気中の1/5ぐらい占めていると言われています。さてその水道の水に、薬を入れておりますが、これは飲むためよりも腐らないように入れているのです。ですから、投下された塩素CI=殺菌用。や、化合力の強い弗素=N。を抜けば美味しい水が出来ると簡単に考えて、今浄水器が、いろいろと出廻っておりますが、然し、薬品を除くと即刻腐ってゆくのです。だから今度は逆に腐った水は飲めなくなります。
水はH2OというからH2Oが一番よい水だと思ってH2Oだけで水の代りをすると到底生きてゆけないのであります。それは水の中にも、空気と同じように、色んな成分、色んな微生物を含んでいるから、これで始めて水の味が出てくるので、どこそこの水が美味しいのと、よく言われますが、本当のところ、よく判らないものです。その証拠に、水割り用のミネラルウォーターを水道の水にかえて、黙って、ミネラルウォーターだと言って出して実験してみても、相手は、やはり、美味しいと言って飲んでいるようなもので、本当は、水の味なんて、はっきり判らないものであります。ただ水が甘いと、美味しいような気がするんですが、これは沢山ある有機物の腐敗過程において、そうなるので、成るべく飲まないようにとは友人の藤井技師の話です。それではどの水が美味しくて飲めるかということを昔の人はよく知っているのです。
それは、地下水の浄化を一番効率よくやるのが、イタドリ(スカンポ)です。スカンポの根は、地下水を最もよく浄化するので、その傍に、井戸を掘って飲んだのです。又、野生のしぶ柿は根が浅いので、綺麗な水でなければ育たないから、昔の井戸を見ると近くに柿の木があるのに気がつくでしょう。ちなみに、スカンポと柿は共存共栄するし、共貪もしますので、お互いにそれなりに牽制しあって、育ってゆくのです。以上、水の基本的なものを申し上げましたが、われわれがよく考えなければならないのは、水は無限の資源ではないということです。
大阪で言いますと、びわ湖の水質が汚濁しており、われわれの飲み水の水質の悪化が進んでいるのです。これは工業化による汚染と、人間の出す雑排物や各種の洗剤等による汚濁で問題になっています。これ等はすべて人間が水の自然を破壊しているのであります。われわれは水に対する罪を反省しなければなりません。アフリカあたりの水不足に比べ、われわれは余りにも水を粗末にしすぎているのではないかと、大いに反省しなければなりません。又、水害を見ても、天災よりも人災の方が多いことを思い知らされるのであります。
われわれの先祖は水によって育ち、村や町が発展してきたのであります。川あるところ、湖のほとり、海に面した河口のほとりには人が集まり、住まいし、水の恩恵をうけて来ておるのであります。このような意味で、われわれはもっともっと水を大切にしなければなりません。水は実に人間だけでなく万物を育む源であります。次に小野派一刀流組太刀の高上極意五点の独妙剣=水。について申し上げます。