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脳脊髄神経系の疾病にかかりやすい体質の方のために。。。。加味温胆湯の続き

2009-02-09 14:50:05 | 東洋医学全般
少し前に、疲れすぎて眠れない時のために、温胆湯(うんたんとう)をご紹介しました。これは、半夏(はんげ)、竹茹(ちくじょ)、枳実(きじつ)、陳皮(ちんぴ)、生姜(しょうきょう)、甘草(かんぞう)、茯苓(ぶくりょう)、酸棗仁(さんぞうにん)という漢方薬で構成されています。

これに、大棗(たいそう)、遠志(おんじ)、玄参(げんじん)、人参(にんじん)、地黄(じおう)が加えられたものが加味温胆湯(かみうんたんとう)です。

温胆湯のときは疲れすぎて、体の中の液体が使われてしまい、痰飲というさらさらでない液体が多くなった状態となり、そこで発生した熱が上半身にこもり、発散で
きなくなっている状態です。泥のように疲れているのに寝れない状態です。

この熱がこもって、体液がさらさらでない状態が長く続いて、脳や精髄の居心地を悪くしていると、ボケや意識障害が起こる原因のひとつとなるといわれています。症状が軽ければ、温胆湯を長く飲むことで解決できる場合が多いです。

脳や脊髄は頭蓋骨(ズガイコツではなく、解剖学用語ではトウガイコツとよみます。)や脊椎骨の連なりで作られた髄鞘(ズイショウ)と呼ばれる鞘の中にあります。その鞘の中には髄液と呼ばれるさらさらの液体が満たされていて、その中に脳や脊髄が浸されている状態です。弁当箱に四角い豆腐が入っていて、それにきれいな水が満たされたイメージです。

温胆湯が適応する生活が長い間続くと、この痰飲という状態が長く続くこととなります。これはいつもオーバーワークで、自分にも厳格で怒りっぽい人、或はそういう生活環境に長くいらっしゃった方のなかに意外と早くボケが始まったり、パーキンソンのような運動障害が起きたりする方がいらっしゃいます。

「あんなに厳格で働き者だったおじいちゃんがすっかりぼけてしまって。。。。」
これは温胆湯が適応する生活が長かったので、先ほど申し上げました豆腐が入った弁当箱に満たされたさらさらの液体が、こもった熱で乾いてしまった状態が、脳や中枢神経に当たるところの障害を生み出すことがあるという漢方医学理論から来るのです。

おおらかな性格で、仕事をやめてストレスが何にもなくなったら急にぼけ始めた。。。というのはまた異なる漢方病理学のお話となる場合が多いので、また別の機会に譲ります。

加味温胆湯は本来の痰飲が起こった体質に働きかけ、それを緩和します。そこで上記の大棗(たいそう)と地黄(じおう)で痛んだ組織を整え再生し、遠志(おんじ)で意識や記憶力をはっきりとさせ、玄参(げんじん)で消炎、人参(にんじん)で体力を向上させます。もちろん単品一つ一つの効能だけではなく、それらが合わさって起こる組み合わせの妙もてつだって、加味温胆湯となっているのです。

この方剤が後になって、北里漢方医学研究所と東北大学医学部の共同研究で大騒ぎになった、アルツハイマー症とパーキンソン症にきく漢方薬として発表されるに至ったのです。

続きはまた後日といたします。

日本伝統鍼灸漢方

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