1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

6月

2011-06-02 20:37:26 | 
ほんとうに偶然なんだけれど、机の上に置いてある茨木のり子の「おんなのことば」という詩集を開いたら、「6月」という詩が出てきました。

六月

どこかに美しい村はないか
一日の仕事の終わりには一杯の黒麦酒
鍬を立てかけ 籠を置き
男も女も大きなジョッキをかたむける


どこかに美しい街はないか
食べられる実をつけた街路樹が
どこまでも続き すみれいろした夕暮は
若者のやさしいさざめきで満ち満ちる


どこかに美しい人と人との力はないか
同じ時代をともに生きる
したしさとおかしさとそうして怒りが
鋭い力となって たちあらわれる


この詩を読んで、もう6月なのかとあらためて認識。あっという間に、時は過ぎていきます。

最後のパラグラフ。「美しい人と人との力はないか、同時代をともに生きる、したしさとおかしさとそうして怒りが、鋭い力となって、たちあらわれる」を読みながら、チェジュで海軍基地建設に反対して闘う住民の皆さんのことを考えていました。



「赤の他人の瓜二つ」(磯崎 憲一郎)

2011-06-01 20:13:48 | 
昭和のはじめから60年ぐらいまで。チョコレート工場に勤める労働者と、その妻、親、子どもたちの人生が、たんたんと語られていきます。読み進むにつれて、本の題名の「瓜二つの赤の他人」とは、この本を読んでいる僕自身ではないのかという思いが、じんわりと広がっていきます。

この世に生まれて、大きくなって、恋をする。就職、結婚、子どもができて親となる。中年期の危機を経て、退職、そして老年期をむかえて死んでいく。

この本を読みながら、詳細なインタビューによって40人の個人史を綴り、職業・家庭・精神生活の各局面で、年代ごとに克服していかなければならない固有の課題があることを明らかにした、ダニエル レビンソンの名著「ライフサイクルの心理学」を思い出していました。

日常生活を生きる「瓜二つの赤の他人」の存在が、とても貴重に思えた一冊でした。