1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「コルトレーン ジャズの殉教者」(藤岡靖洋)

2011-06-08 20:28:37 | 
この本の裏表紙に、筆者はコルトレーン研究家であると紹介されています。この本を書くのに、筆者は、全米の資料館、図書館での調査、実地検証、親類縁者、関係者へのインタビューを、すべて自分の足で行こなったそうです。

コルトレーンの生涯、マイルスやモンクらとの出会い、彼の残した作品、「シーツ・オブ・サウンド」と言われる独特の演奏スタイル、人種差別に反対する想いなどが、丁寧に語られていきます。

コルトレーンは、1965年に発売した名作「至上の愛」のジャケット内側に自筆の解説文を書いています。

「何があろうと、すべては神と共にあり、神は寛大で慈悲深いこと・・・、神のなさることはすべて『愛』からであり、我々すべては『神の愛』に包まれているということを、それこそが『A LOVE SUPREME:至上の愛』であると。」

これ以降、コルトレーンは「神」に傾倒していき、演奏もスピリッチュアルになっていきます。なぜコルトレーンがそうなっていったのか、筆者は、コルトレーンがつきあった4人の女性を紹介しながら、その理由を明らかにしています。

そして筆者は、次の文章でこの本を締めくくります。

「『私は聖者になりたい』と来日記者会見で語った言葉は、その信念から発せられた言葉である。平和を求め、混沌とするこの世界に、自らの言葉で『神の愛』を伝える、その決意を胸にコルトレーンは、己の身を捧げ、使命に殉じていった。『平和と愛』を希求する、その純真さ、ひたむきさは、未来永劫語り継がれるべきものであると、筆者は信じる。」

筆者のいう通りなんだろう。しかし、この文章を読んで、これからコルトレーンを聴くのが、とてもしんどい気持ちになりました。これが率直な感想です。しばらくは、聴かないだろうな・・・。